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2009年4月 6日 (月)

シャルレ株主損害賠償請求訴訟がガバナンス論議に与える影響

4月3日は東京の海運会館で開催された日本内部統制研究学会主催の第一回公開セミナーに参加させていただきました。400名以上の会員や上場企業の関係者の皆様がお越しになられたようですが、ちょうど前日の午後7時に金融庁から「追加Q&A」が公表されたこともありまして、(まぁ、ご異論もあるかもしれませんが)タイミングの良いセミナーだったように思います。もちろん、この追加Q&Aに関連する内容の解説が中心となりました。このセミナーの件では、何点が興味深い論点解説がございましたので、また追って感想を書かせていただきます。

さて、前回エントリーで4月3日は、某所より重要なリリースが出るかも・・・と触れておりましたが、日本監査役協会のHPから「コーポレート・ガバナンスに関する有識者懇談会報告書」が公表されました。(ちなみに、監査役協会の理事会で一括して承認されたのでしょうか、ほかにも内部統制報告制度最終アンケート調査結果報告や、会計監査人との連携に関する実務指針、内部統制報告制度下における監査報告書作成の留意点など、監査役の方々には実務上極めて重要な報告が併せてリリースされております。全部目を通すだけでもかなりの時間を要しますね。)今後とりまとめが予想されます経産省企業統治研究会や金融庁スタディグループでの議論と同様、コーポレート・ガバナンスの在り方を検討するうえでは貴重な報告内容になっておりますので、(たいへん長いものですが)週末はこれをきちんと拝読させていただきました。

さらにもうひとつ、今後のコーポレート・ガバナンス論議に影響を与えそうなニュースが4月4日の日経新聞朝刊に掲載されておりました。もうすでにネット上でも報道されているようですが、シャルレの個人株主の方々が、MBOに失敗した同社の元社長と、(おそらく)社外取締役3名を相手として、TOB賛同表明直後の株価800円(TOB価格は800円)と、TOB結果報告直後の価格300円の差額について、損害を被った責任を追及する(損害賠償請求訴訟を提起する)方針を固めた、とのことであります。一般的にはMBO事案の場合には、少数株主による裁判として、MBO手続きを差し止めるか、MBO価格の不当性を主張して価格決定申立て(株式買取請求権行使)というのが連想されますが、今回はMBOの失敗の原因については、社外取締役を含む全取締役に違法行為があったとして失敗責任を追及する、というものですから、少数株主というよりも一般株主の被害に関する事件、と認識しております。

平成20年12月2日付けシャルレ社のリリース「当社株式に対する公開買付けに関する最終的な意見について」を読みますと、社外取締役3名の方々が「TOB賛同の意見表明」から「賛同できない、との意見表明」へと転じた経緯が詳細に述べられており、社内調査の結果を(新たに)斟酌したことや、意見訂正について法律実務家による支援を受けたことなど掲載されておりますので、それなりに社外取締役の方々の言い分もあるかとは思いますが、一方におきまして、原則として撤回ができないTOB(金融商品取引法27条の11第1項 もちろん、買付け予定数に満たない買付け希望数の場合には買付けを行わない条件はついておりますが)について、会社側がTOB賛同の意思表明を行った場合には、プレミアム価格あたりまで株価が上昇することは当然のことでありますので、TOBの成否を握る会社側の意見が急変するとなりますと、TOBが不成立となり、多額の損害を被る株主が出てくるのは当然に予想されるところであります。おそらくMBOという「構造的に利益相反状況にある」なかでの社外取締役の行動の適法性について、今後の裁判で争点になるものと思われますが、価格決定について、自身の利益相反が問題となる社内取締役の行動(これはレックスホールディングス事件の高裁判断が参考となりますが)ではなく、「委員会設置会社における社外取締役」というまさに株主の利益保護を純粋に検討することが期待される立場の方々の行動の是非(善管注意義務違反、忠実義務違反)が裁判上で問題とされる、というのは、おそらく初めてではないでしょうか。

裁判の予想などは、ちょっと差し控えさせていただきますが、このシャルレ株主損害賠償事件(5月上旬提訴予定)に関する報道を読んで、さきほどの有識者懇談会報告書で期待されている監査役の職務(妥当性監査への期待)を考えますと、「はたして、監査役はシャルレ型の損害賠償請求に耐えるだけの覚悟はあるか」といった感想を抱いてしましました。案件のシャルレ社の場合は委員会設置会社(なお、今度の定時総会で機関設計については変更される予定だそうですが)ですので監査役は存在しませんが、もし監査役設定会社であったとすると、同様の事案においては監査役がどのように行動すべきであったかが、問題になっていたかもしれません。上記「有識者懇談会報告書」におきましても、大規模第三者割当増資や買収防衛策の導入や発動への意見表明、会計監査人の選任や報酬決定、内部統制評価(財務報告に限られない)に関する監査役の積極的関与など、業務執行(経営判断)に関する意思形成過程への関与が前向きに提言されておりますが、翻って考えますと、監査役の職務が「妥当性監査」にも踏み込んでいくことになりますと、さきほどのシャルレ社の社外取締役同様、公正中立な立場で株主の利益のために行動することが期待されるがゆえに、一般株主に損害が発生したような場合には、その行動の是非が裁判において問われる可能性も高くなるのではないでしょうか。これは、粉飾決算が発覚した場合に監査役に問われるような「本来型の監査責任」とは、また違った意味で重大な問題ではないかと思います。監査役の方々の意識改革だけでなく、執行側の意識も変わっていかなければ、なかなか監査役の職務権限の積極的な行使というこが浸透していくことはないかもしれませんが、監査役のリーガルリスクが高まるのであれば、シャルレ社の社外取締役さん方のように、法律事務所等、リーガルサポートを要する場面も(とりわけ有事においては)不可欠になるのではないか、といった印象を(上記有識者懇談会報告書を読んで)強く感じたような次第であります。

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コメント

全く意味が不明です。
例えば、粉飾を見抜けなかった、とか、部下の使い込みに気づかなかったという事例なら、役員のリーガルリスクを懸念するのも分からなくなくはないですすが、今回は、完全に故意犯・確信犯です。
株主の利益を著しく害することを知りながら、やっているのに、何がリスクなのか?と思います。「人を殺すと無期懲役になるリスクがある」と言っているのとなんら変らないですね。
今回は、明らかな犯罪的行為ですから、単に反対すればよいだけです。
「自分が反対した旨を取締役会議事録に残せ」と一言言えば良いのですよ。何も考える必要はありません。
リーガルサポートの下りも理解できません。常識に照らして、明らかに「悪いこと」ですね。株主から不当に安く株式を取り上げることが「悪いことである」ということは、弁護士に聞かないと分からないことなのでしょうか?(この点はむしろ、弁護士の方がわかっていないのでは?)
もし、そうであるならば、小学校の道徳の授業をもう一回聞いてから、役員に就任されてはいかがでしょうか?役員というより、社会人として、失格ですね。

投稿: 山口三尊 | 2009年4月 9日 (木) 11時18分

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