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2009年4月 3日 (金)

金融庁「内部統制報告制度Q&A(追加分)」出ましたね

先日の公認会計士協会の研修あたりで、金融庁の方が「そろそろQ&A追加版をリリースしますよ」と予告されておられたそうですが、予告どおり、かなりの分量のQ&A追加分が4月2日にリリースされました。(問68~107;内部統制報告制度Q&Aの再追加について)まだ全部をきちんと読めておりませんが、最初のほうをサラっと読んだ感想だけ少し記しておきます。なお4月3日は、また某所より、たいへん重要なリリースが出るかもしれませんよ・・・(^^;;

今回は「重要な欠陥」の判断基準(有効性評価方法の具体例)、M&Aに関わる子会社異動に関連する課題、(時節柄)親会社・子会社の業績変動に伴う評価範囲や事業拠点変更の要否、付記事項・特記事項に関連する課題、その他内部統制報告書記載上の注意点(参考例を含む)など、かなり内部統制府令における「一般に公正妥当と認められる経営者評価の基準」の解説としては、イメージしやすいものになっているのではないかと思います。

前半部分に何度か「監査人から指摘された誤りが、会社の内部統制によって防止・発見できなかったのかどうか、という観点から検討する必要があるものと考えられる」と出てきますが、要するに、たとえ財務報告に誤りがあったとしても、その誤りを訂正することが会社の自力でできるものであれば重要な欠陥とはされず、誤りの原因がわからなかったり、原因を探すこともしないような体制であれば、その質的、金額的重要性を勘案したうえで重要な欠陥ありと判断する、ということでしょうね。また、そういった判断については監査人と協議をしないと、適正意見はもらえない可能性もある、ということですね。ただ、逆に考えますと、決算情報に誤りが認められた場合(指摘された場合)、はたして当該企業に「財務報告を法令等にしたがって適正に作成されるための体制があるのかどうか」というかなり規範的評価を会社自身でしなければならないため、内部統制報告書には、そのあたりの説得的な合理的理由を付する必要が出てくるでしょうし、文書で述べられたところを監査人は審査することになるので、やっぱりむずかしい判断が要求されるように思います。(金額的重要性・質的重要性の判断や、代替統制、補完統制の有無に関する判断などでなんとかむずかしい判断を回避できるのかもしれませんが)

また、取締役らが善管注意義務を尽くして、その内部統制を構築(整備・運用)したとしても、重要な欠陥が残るかどうかは別問題であり、その開示は必要である・・・ということがかなり明確になったQ&Aだなぁと理解しましたが、いかがでしょうか。なお、後半部分の報告書の参考例なども、なかなか面白いですね。

4月3日、日本内部統制研究学会の公開セミナーに参加させていただきますが、金融庁の方の解説もございますので、ひょっとするとこのQ&A追加分に関する話題も提供されるかもしれません。また情報が入手できましたら、すこし補足させていただこうかと思っております。また、皆様がたのQ&A追加分等に関するご意見、ご感想がございましたら、せっかくの機会ですので、こちらのブログのコメント欄にお書きいただけますと幸いです。(私は回答できるほどの能力はございませんが、ひょっとすると有識者の方の参考意見が聞けるかもしれませんので。。。)

PS

問81におきまして、内部統制報告書提出の際、取締役会の承認が不可欠というわけではない、との回答がなされております。このあたり法律家の立場から、どこまで経営者が関与すれば「経営者が評価した」(善管注意義務を尽くした)といえるのか・・・ということを考えるには、週刊経営財務3月30日号の「経営者評価のスケジュールの再確認および留意点」(あずさ監査法人の代表社員の方が書かれたもの)が非常に参考になると思います。担当者、経営者、監査人間の情報提供の在り方がうまく整理されていて、ひとつのモデルケースをそれぞれの会社で決めるときの参考になるでしょうし、後で経営者が本当に評価したといえるのかどうか、法的な判断基準を定立するためのヒントにもなると思われます。

(4月3日午前 追記)さて、2月12日のこちらのエントリーのPS でも少し触れておりました福島銀行の誤配当の件ですが、やっぱり「地方新聞にちょこっと掲載されただけでは済まない」問題に発展してしまったようですね。(日経ニュースはこちら)「誤配当」という結果からではなく、こういった配当を発生させる内部管理体制に問題がある、とのことのようですが、まさに内部統制報告制度Q&Aの金融庁の考え方に合致しているような・・・・・

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コメント

内容は、この時期に必要なことと思われるので触れませんが、何故、4月に入ってこっそりと出すのだろう?と思います。実務関係者は、いちいち金融庁のホームページのチェックなどしませんし、今の時期、してられる状況にありません。私は、このブログをほぼ毎日見ているので分かったという感じです。追加で出すなら年度の変わる前の3月中に出すべきだと思いませんか?年度が変われば、実務関係者は様々な作業が出てきますから、出してもらうのはありがたくても、見ている余裕がない。実際に同僚は、金融庁のホームページすら見ようともしていませんから…ということで、あいかわらず官僚仕事で後手後手のまま終わったように思われますが、この後、内部統制報告書、監査報告書が出て、世の中どうなるのでしょうね。何か変わるのでしょうか?

投稿: takepon | 2009年4月 3日 (金) 17時27分

小生は金融庁の新着情報サービスに登録しており毎朝チェックしています。他にも官庁等で新着情報サービスを利用していますので、今回のニュースもすぐ目を通しました。3月4月はいろいろなものが切り替わりますから幅広く迅速に目を通さないと話にならないと思いますが。

投稿: 星の王子様 | 2009年4月 5日 (日) 20時04分

4月で切り替え時は分かるけど、本来は3月中に出しておくべきものではないの?って言いたかったのですけど・・・
問い合わせがあまりに多くて出した内容とも言えるかということです。
いつも後手後手で、金融庁の内部統制はしっかりしてるのか、リスクマネジメントがなってないのに、これではどうなっちゃうの?っていうか、結局は振り回されただけで、何も世の中変わらないように思われて仕方がない。監査法人と八田君だけ儲かった気がする~♪あると思います。

投稿: takepon | 2009年4月 7日 (火) 11時45分

金融庁のお役人自身、「自分ところは内部統制できてないのに
皆さんに強要して申し訳ない」と、どうも漏らしたそうで(笑)。

役人に期待なんかしてはいけませんよ。会社潰れますよ。
金融庁こそ民営化したら、Q&Aなんて昨年の早い段階に完全版が
出るようになるんじゃないですか(笑)。

今回のQ&Aは、一部の現場だと信じたいと思いますが
(私がお世話になっている先生は違います)、
無理無茶を言う、図に乗った会計士がやはり存在するという事実を
あからさまにしましたね。

投稿: 機野 | 2009年4月 8日 (水) 00時31分

takeponさん、星の王子様、機野さん、コメントありがとうございます。
機野さんがおっしゃっているのと同じ意見、私も聴いております。(会計士さんの話のほうですよ。金融庁民営化のほうではありません・・・(^^; )ただ、膨大な数の質問のなかからピックアップしたようですから、同様の質問が多数存在していたことは事実だと思いますね。

情報の入手の件ですが、私の場合、やはり金融庁と経済産業省、それから官報は平日かならず巡回しています。それほど時間もかかりませんので、日課になってしまいました。とくに官報は法律情報や国会での審議情報の入手には欠かせないところです。

投稿: toshi | 2009年4月 9日 (木) 01時29分

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