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2009年4月16日 (木)

内部告発者に対する制裁と防止策

内部通報窓口業務は、そんなにキレイな仕事ではないと(私自身の経験も含めて)申し上げたところ、松嶋屋さんからお叱りを受けまして(^^;、ちょっと言葉を選ばなければ・・・と反省をしておりましたが、またまた内部告発者と上場企業とのトラブルに関する事件が報道されております。すき家を展開するゼンショーさんの女性店員の方が、昨年、残業代不払いを(労働基準法違反として)刑事告発したところ、ゼンショーさんの方が今度は女性店員の方(刑事告発をされた方)をゴハン5杯分を無断で食べたとして窃盗罪で刑事告訴していた、とのこと。(朝日新聞ニュースはこちら)店内のビデオ録画が証拠として残っていたそうであります。

最近、内部告発(社内の内部通報窓口への通報を含む)を行ったことをきっかけとして、通報社員が会社側もしくは上司社員等から事実上の嫌がらせ、退職勧告等を受けているとする報道が目立つようになりました。このブログで採り上げた事件だけでも、先日のオリンパス社の事例、横浜市立大医学部の事例、大阪トヨタ自動車の事例等、いくつかの有名な事例がありますが、内部告発者への企業もしくは幹部社員の対応(とくに悪意のある制裁等)のまずさから、さらに大きな不祥事が判明したり、内部窓口があるにもかかわらず外部告発が増加したり、制裁措置による社内トラブルが報道されるなどによって企業の信用を落とす傾向にあるため、「コンプライアンスにおける負のスパイラル」に陥るリスクが生じます。

そこで、企業もしくは社員による内部告発者に対する事実上の制裁(報復)が企業に及ぼすリスクと、そのリスク管理のための防止策について、フィナンシャル・コンプライアンス(銀行研修社)の6月号に「内部告発者に対する制裁と防止策」なる論稿を書かせていただきました。公益通報者保護法や、内部統制システムの一環としての社内規則(ヘルプライン規程)による救済だけでは、内部告発者が保護されない現実を踏まえ、企業として何をなすべきか、匿名通報者の特定発覚リスクなどにも触れながら検討してみました。(主に、自らの業務上の経験などに基づくものです。結構読み応えはあると思います)おそらく4月終わりか5月初旬に全国書店にて発売されることになりますので、ご興味のある方はそちらをご参照いただけましたら幸いです。

4月 16, 2009 内部通報制度 |

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受信: 2009年4月16日 (木) 12時38分

コメント

 内部告発(外部通報)に対する報復には、どんなメリットがあるのでしょうか。
 また、内部通報(社外に漏洩しない)に対する報復は、もっとメリットが少ないと思うのですが。
 山口先生、いかがでしょうか。

 ちなみに、報復については、風評リスク、従業員の士気低下等のデメリットはありそうですが・・・。

投稿: Kazu | 2009年4月16日 (木) 14時25分

 真剣に取り組んでおられる担当者の方々には不快かもしれませんが、どうしてもこの制度には偽善性を感じざるを得ません。ですから、先生がご指摘なった事例(これでも氷山の一角かもしれません)には驚きを感じません。企業内の人事評価の仕組みや“ムラの論理”があるのは自明ですから、通報者保護が守られない場合のペナルティを制度上持たせられなかったところで限界ではないでしょうか。
 残念ながら小さな不祥事(当事者には大きな問題でしょうが)以外は、別の対応策が賢明だと思っています。やはり他人に救済を依頼するのは無理があるように思えます。
 通報にはさまざまな事情が後ろに付いているのが普通だと思いますので、表と裏の社内事情を把握していない外部の方が社会的価値観で落とし所を探るのは至難の業のように感じています。個人的には企業と組合(若しくは社員)が資金を出し合って通報窓口となる第三者機関(会社側と社員代表と公益委員で構成)でも作らなければ担保できないと思いますが、それでは制度の本来の狙いからは外れてしまいますからやはり無理ですね。
 社内の専門担当の方はご苦労ばかりされているのではないかと推察しますが、不快に感じられる方の会社は風通しがいいことが多いと思います。

投稿: TETU | 2009年4月16日 (木) 23時11分

 失礼しました。
 主題を書くのを忘れてしまいました。
 通報者への報復のペナルティが外部告発から発生するレピュテーションリスクかもしれませんが、商品特性によってかなり差があるように思います。コンプラが徹底させられている米国上場企業のように、問題が発生した企業からの仕入れストップでもあれば別ですが、大方の日本企業では一時的に揶揄はされても、それで経営が立ち行かなくなることはまずありません。(おかしくなったところはその後のハンドリングのミスが続いたのだと思います)
 昨年来、公になった通報者報復企業で倒産したところはなかったように思います。内部通報は超えたケースですが、すき家の牛丼が安くて美味しければ客は行くでしょうし、このことでオリンパスのデジカメが売れなくなったとも聞きません。
 結局は秤で、それで倒産する(あるいは刑事罰を受ける)のが普通なら報復することにはかなり躊躇するでしょうが、一時的な風なら社内論理が跋扈し続けるように思います。リスクは相対的なもので、あるものをゼロにしても、その結果100のリスクが顕在化したのでは意味がありません。よく何でもゼロにするような模範解答を言われる方がおられますが、これはどんなものでしょうか。その秤を判断するのが経営判断だと思います。

投稿: TETU | 2009年4月16日 (木) 23時45分

この件で最もたる事例は警察組織ですよね。
愛媛県警しかり宮城県警しかり…
私は未見ですが、愛媛の問題(大問題)を基にした『ポチの告白』と
いう映画が製作されましたが、どこも上映してくれる劇場がなくて
最近ようやく公開されたところだったりします。

役所(行政だけではなく司法も含みます、よね?)が
身内の「裏切り」に対して単に解雇しようとするだけではなく
時には社会的な、場合によっては文字通り生命そのものまで
奪ってしまうというのは表面化することは少なくても
きっと古今東西存在すると。映画のなかだけの話ではなくて。

準役所とでもいうべきガリバー的公共企業でも似たようなものかも
しれませんが。

おっと、私も某野誠氏のように消されてもいけませんので、
この辺にしておきます(笑)。
フツーの民間企業はまあこの点まだマシだと思います。

投稿: 機野 | 2009年4月17日 (金) 03時02分

 この内部通報者制度というのはJ-SOX対応では重要視されていますが、
実際に有効に運用するのは困難だと思います。
実際に統制環境が非常に有効に機能さている企業であれば、この制度自体が
最後の安全弁として有効に機能するのでしょう。しかし、内部通報で大きな
問題が指摘された場合に、その指摘された状況を改善するという方向での
インセンティブは働くのでしょうが、通報者の保護というインセンティブ
はなかなか働かないでしょう。
 例えばこのような事象があった企業については、これを持って金融商品
取引法の「内部統制報告書」の特記事項(少し弱いですね)に記載が必要で
あるとかが「金融庁のQ&A」に記載される。とかが有れば少しは変わる
かもしれません。
 いずれにしても日本が「就職」ではなく「就社」である現状からすると
通報者の保護は困難だと思います。その意味でもアメリカチックな制度だと
思いますね。

投稿: tonchan | 2009年4月17日 (金) 13時12分

漢検の件、お願いします。

投稿: 毒者 | 2009年4月18日 (土) 23時34分

ええと、金融商品取引法(内部統制報告制度を含む)と内部告発は
直接の関連はありません。
いわゆるJ-SOXは基本的に今ある企業の姿を報告する仕組みであり、
その制度そのものは何か新しいことを企業に要求は何らしていません。
また、要求される筋合いのものではないのです。本来は、ですが。

但し、統制環境とコンプライアンス、リスク管理は当然のことながら
重複する面もあるので無縁ではありませんが。

投稿: 機野 | 2009年4月19日 (日) 23時56分

内部通報や内部告発に関するエントリーは、たいへん皆様方の関心も高く、いつも膨大なアクセスをいただきます。このたびも、TETUさんはじめ、有益なコメントありがとうございました。皆様方の内部告発(内部通報制度)に関するトーン(思い)のようなものを、今後のエントリーの参考にさせていただきたいと思っております。
私自身も「内部通報はかくあるべし」といったことまで論じるだけの経験も知識も持ち合わせておりませんので、窓口業務の経験と、通報を端緒とする不正検査業務の経験から、ミクロの視点でしか語っておりません。今後はもう少し、判例実務などにも携わって、大きな視点から語ることができるようになればいいのですが。

なお、ロックンロールさんや毒者さんも指摘されているとおり、このブログでは過去にかんぽの宿事件や、漢検問題にも触れていますので、なんらかのコメントをしたいとは思っております。ただ漢検問題については、調査委員会報告書が出ましたので、あの100ページを超える報告書をとりあえず読まなければコメントできないのかなぁと、ちょっとプレッシャーがありますね。(笑)

投稿: toshi | 2009年4月20日 (月) 01時25分

「ロックンロール」って、私のことでしょうか?
かんぽの宿への、遅ればせのコメントはtoshi様への非難ではありません(確か、ご自分のご意見は明言しておられませんでしたし)。
お気持ちを害されたのでしたら、お詫び申し上げます。
あれは、まあ八つ当たりです。ネット上で影響力をもちながら、生半可な知見で、政府サイド擁護の論陣をはったこちらの読者の方々(××先生とか、リングさんとか)に向けた悪口です。
場を弁えない発言だったと(少し)反省しております。
それに、かんぽ問題はまだ全貌がわかりませんし、妙な風に政治利用されてしまったようでもありますし・・・

投稿: ロックンロール会計士 | 2009年4月20日 (月) 18時02分

いえいえ、せっかくブログで「かんぽの宿」問題に触れたにもかかわらず、そのまま放置していましたので、私にも問題提起責任があるのかと・・・笑。(すいません、お名前を間違えまして)

かんぽの宿事件以上に、私自身が関心を持っているのが漢検問題です。本日も鬼追元日弁会長が記者会見されていましたが、公益財団法人なるもののガバナンスって、いったい誰が構築するのでしょうね。これ、きちんと問題整理しておかないと、誰も公益法人の評議員にも理事にもなれないですよ、こわくて。何が違法行為なのかはっきりしないままに漢検問題が終了してしまったら、漢検に近い公益団体の不祥事が発覚した場合に、どこまで民事責任が問われるのか、もしくは取引が無効とされてしまうのか、ちょっと恐ろしい気がします。おそらく一般社団法人や公益法人の問題だけでブログが成り立ってしまうのではないか、と思うほどに話題性に富んだ論点だと思います。

投稿: toshi | 2009年4月22日 (水) 01時23分

法律家の方々にはかなわないなと思うのが、抽象的な思考です。
私などは、痴漢冤罪事件では犯人の同一性、特定性が(実際には)問題、漢検では関連会社との取引(≒経営者の公私混同)があやしいなどと短絡的に考えてしまいますので。

投稿: ロックンロール会計士 | 2009年4月22日 (水) 23時38分

私が大阪トヨタを内部告発した者です。在職期間中の不正の数々を今年度中に暴露本として出版します。 *不正についての会社側とのやりとりを録音した内容は必見?いやいや必聴ですよ。

投稿: 内部告発者 | 2010年9月 8日 (水) 11時52分

内部告発者さん、コメントありがとうございます。

↑上記コメントは、内部告発者さんについてご本人さんの確認、および内容公開に関するご意思を再度確認のうえ掲載させていただきました。

大阪トヨタ事件は、事件の内容と共に、我々弁護士の業務のあり方にも警鐘を鳴らした事件であり、私の新刊書でもかなり大きくとりあげております。興味本位というよりも、内部通報窓口を担当している者として、ご著書、読ませていただきます。m(__)m

投稿: toshi | 2010年9月 8日 (水) 13時59分

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