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2009年4月20日 (月)

経団連のコーポレート・ガバナンス提言(中間整理)の立ち位置

4月初めに日本監査役協会は、有識者懇談会報告書を公表し、また4月15日の日経・読売新聞報道によりますと、もうすぐ(4月中でしょうか)東証「上場制度整備懇談会」が株式上場制度見直し案等を公表するとのこと、さらに金融庁SG(我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ)の議論も白熱してきており(3月18日の第20回議事録も公開されていますが、非常におもしろい)、経産省企業統治研究会のとりまとめも注目されるところであります。

そのような中におきまして、経団連も4月14日「提言・より良いコーポレート・ガバナンスをめざして(主要論点の中間整理)」を公表されておりますので、内容を拝見いたしました。内部統制を勉強している立場からしますと、以下のような印象を持ちました。つまり、より良いコーポレート・ガバナンスを構築するということは、企業の不正行為の防止ならびに競争力・収益力の向上という二つの視点を総合的に捉えて、長期的な企業価値の増大に向けた企業経営の仕組みをいかに構築するかという問題でありますが、いま多くの有識者による会議で議論されていることは、ガバナンスの構築を整備と運用に分けるとすれば「整備」(いわゆるガバナンスの仕組み)に関わる問題でありますが、そもそもこれまで整備してきたものの「運用」についての評価をしなければ、今後の実効性ある整備についても議論ができないのではないか、といった問題提起をされているように思われます。たとえば社外監査役制度の導入問題や独立性要件強化に関する問題については、監査役制度の運用に関する検討が先ではないかとか、インセンティブのねじれ問題についても、会社法の改正よりも現実の企業社会において、監査役が期待されている権利を期待どおりに行使するためにはどうすべきか、ということを考えることが先決ではないか、といった問題の捉え方であります。

要するに、こんなご時勢なのだから、ガバナンスにコストをかけることを正当化するような議論は勘弁してよ、アメリカ型ガバナンスが優れているといったことは自信をもって言えないでしょう・・・という姿勢と受け取るのが正しいのかもしれませんが、内部統制的な視点からすれば、たしかにこういったご主張も当然に出てくるところではないかなぁといった印象を持ちました。ただそうなりますと、これまでに整備されてきたガバナンスが、期待どおりに運用されるに至ったのかどうか、という点について、(つまり運用の有効性について)誰が評価をするのか、ということが議論されるはずであります。株主を含む市場関係者や多様なステークホルダーによって判断されるべきである(最終的には市場による判断にゆだねるべきである)という考え方もあるかもしれませんが、①いまガバナンスが議論されているのは、各企業におけるより良いガバナンスの構築の議論を超えて、日本の資本市場が魅力あるものとなるために、上場企業全体としての「より良いガバナンスの構築の在り方」が求められているのではないか、②不正防止や競争力強化のためのガバナンスの仕組みと現実の企業価値の向上との因果関係について、どのような情報を株主ほかステークホルダーに開示すれば評価ができるのか、という点についての合意はできるのか、といった問題を乗り越えなければ説得的な意見が生まれてこないのではないか、と思われます。

たしかに東証一部の企業と、大証ヘラクレス上場企業に同じガバナンス規制をかける、ということになりますと、最近の内部統制報告制度への負担(費用対効果)などに鑑みましても、ちょっと現実的ではないと思われるところもありますが、エンフォースメントの在り方を考慮したうえで、「全上場企業を対象として、できるところから少しずつ変えていく」ことは必要なのではないでしょうか。そういった観点から、先日の日経・読売新聞で報道されておりました「第三者割当増資への上場ルールによる規制」については、その一歩になるものと思われます。この第三者割当増資のルール規制につきましては、有識者懇談会報告書においては「株主と経営執行との利害調整」の重要問題として、新たに大規模第三者割当増資問題への対応が提言されておりますが、先の経団連中間整理には、ほとんど具体的な問題提起はなされておりません。しかし、ガバナンスに関する議論を「最終的には市場の判断にゆだねるべきである」とするのであれば、社外取締役導入や独立性要件の強化、監査役と取締役との関係や議決権行使の方法等、ガバナンスのもっとも根幹に関わる議論を行うにあたっては「うるさい株主には退場してもらう」といった恣意が経営執行において働かないシステムが保障されることが当然の前提でありますので、この「株主と経営執行との利害調整」問題は(経団連中間整理の立場であっても)回避できない論点であるはずです。「できるところから少しずつ変えていく」ことが適切であるならば、やはり買収防衛策、大規模第三者割当増資、MBO等の取締役の利益相反行為規制、会社法上の内部統制問題などについて、開示、行動規範(上場廃止)、金商法ルール、訴訟を含めた会社法ルールなど、その実効性確保の在り方も含めてガバナンスの改正を進めていくべきではないかと思いますが、いかがなものでしょうか。

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