内部統制と投資家の視線(報告書は株価材料になるか)
大学の先輩・後輩という間柄で、大手証券会社の社員と会計士さんとが連絡をとりあってインサイダー取引を行っていたこと(疑惑)が発覚したようでして、22日あたりにSESC(証券取引等監視委員会)から課徴金処分の勧告が出るようですね。(刑事告発とは異なりますので、自ら利益を得ていない証券会社社員の方にはなんらの処分勧告もないようですが、証券会社側としたら大問題でしょうね。)しかし200万円程度の利益獲得事例について、しかも2007年の事例ということですから、最近のSESCのインサイダー摘発に対する執念というものを痛感しております。また、ライブドア個人株主損害賠償請求訴訟の判決が下され、今回の訴訟では会計監査を担当していた監査法人さんも損害賠償を命じられた、とのことでして、これもたいへん注目すべき判決であります。また、法と会計の狭間の問題(公正なる会計慣行とは?)の議論が再燃するのではないでしょうか。(詳しくは判決内容を読ませていただいたうえで、またエントリー化したいと思っております)
さて、昨日に引き続いての「内部統制」ネタでありますが、内部統制と企業情報の開示に関する問題につきましては、当ブログにおいても相当以前から検討しておりましたところ、日経新聞「内部統制と規律・罰則(下)~投資家の視線~」を読ませていただきまして、「企業不祥事が株価に与える影響グラフ」には、ちょっと驚きました。日経平均株価の動きとほぼ連動しているものの、会計不祥事を発生させた企業(結果として課徴金処分、刑事告発の対象とされた企業)は、ほぼ20ポイントほど低い数値で推移しているようであります。たとえば印象としましては、こんな感じです。
不祥事を発生させた企業について、そのすべてが内部統制の構築が不十分であることに起因するわけでもないと思いますので(経営者の姿勢自身も「内部統制の重要なポイント」として考えれば、たしかに内部統制の問題ともいえそうですが)、正確なところはわかりかねますが、それでも開示すべき財務情報の信頼性が毀損されると、大きく株価に影響し、しかも信頼性の毀損はすぐには取り戻せないということが判明いたします。こういった現実からしますと、ひょっとすると(まもなく一斉に提出される)内部統制報告書の記載(経営者評価と監査人の監査意見)が株価に与える影響というものも、ちょっと無視できないものになるのかもしれません。
ただ、記事の最後で外資系運用会社の方が指摘しておられますように、すでに会計不祥事を発生させた企業に「内部統制に重要な欠陥あり」とレッテルを貼ってみても、それはすでに株価に織り込み済みであって、それほどの影響はでないのでは・・・とも思いますし、むしろこれまでは会計不正が発覚していないような上場企業において、重要な欠陥ありとする経営者評価や、内部統制の有効性につき、監査意見を表明しないといった事態において、どのような株価変動が生じるのか、ということが重要な課題になってくるのではないでしょうか。
なお、上記記事のなかで、東証の方針として内部統制に欠陥があっても、また監査人の適正意見がもらえなくても上場廃止審査の対象とはしないとされ、また重要な欠陥がある場合でも適時開示の対象とはしない、と紹介されております。たしかに、この記事で書かれていることは正しいものでありますが、内部統制報告書において、監査人から適正意見がもらえない場合には、適時開示の対象となることにご留意ください。東証としても、経営者評価のバラツキについては、投資家の判断を損ねることを理由として開示対象とはしておりませんが、さすがに監査法人さんの意見形成については、それほどのバラツキはないだろう、との理由により適時開示対象になるものと推測されます。
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コメント
http://blog.livedoor.jp/advantagehigai/archives/65310763.html
5月23日日経十四面拝見しました。会社法に詳しい弁護士として紹介されていましたね。「会社法に詳しい弁護士」が、「会社側の事情にのみ配慮する弁護士」にならないようにして頂ければと思います。
私もシャルレ訴訟、原告の1人として、興味を持っていただけるのはあり難い限りです。
さて、このエントリーは興味深く読ませていただきました。
不祥事が株価に影響するとなると、ブランド価値の低下を理由として、
代表訴訟ということも考えられますね。
ちなみに、日経の記事は何日の記事でしょうか?教えていただければ幸いです。
投稿: 山口三尊 | 2009年5月23日 (土) 11時55分
三尊さん、こんにちは。
最近のガバナンス議論の流れのとおり、審議会をもってしても制度が動かないのであれば、アメリカと同様訴訟によって企業社会が動かされなければならないのかもしれません。(先日の上村教授のお話の受け売りですが・・・)ということで、今回の訴訟は、日本における社外取締役の在り方について、かなり影響を与える判決が出るのではないか、とひそかに期待をしております。
このエントリーで掲載しております特集記事は5月21日の日経朝刊をご覧ください。ほぼ同様の図表も掲載されております。
投稿: toshi | 2009年5月25日 (月) 02時12分
中堅企業のJ-SOX担当のtonchanです。
ご無沙汰しております。
当社は5月決算のためいよいよ対応初年度も大詰めを迎えております。
このお話は大変興味を持つところです。これで少しでもやっていない企業
対応についての警鐘となればと考えます。
結局、内部統制評価制度の良し悪しを論議する前に、「対応をしなくても特に
ペナルティが無いのであればそれで良い。初年度から対応すること自体が、
企業にとってのリスクなんだよ。しないことこそ日本流さ。」というような
状況が起きることが不安です。このような状況を作らないことが内部統制
評価制度の直近の最大の要素だと思います。そのためにも今回のような話
は非常に有用なのです。
是非、今後共によろしくお願いします。
投稿: tonchan | 2009年5月25日 (月) 10時19分
ご教授ありがとうございます。早速コピーしました。
投稿: 山口三尊 | 2009年5月26日 (火) 09時29分
すみません。本件とは直接関係はないのですが、以下の解説について、TOSHI先生の見解をお聞かせ下されば幸甚です。(もしかして、既に何らかのコメントされているようでした、ご教示ください) 監査役の監査報告書の記載文例が日本監査に役協会から4月3日に公表され、多くの監査役が、このひな型(文例)に沿って、監査報告書に「財務報告に係る内部統制に関する記述」をしていると風の噂に伝わってきました。一方で、経営財務2918号(5月18日)に掲載された、青学の八田教授と片山教授の「監査役の監査報告書の記載文例についての検討」において、監査役の監査報告書に財務報告に係る内部統制について記載するのは(内部統制監査が終了していないため)リスクがあると解説されています。一般の監査役の対応と、この解説、どちらが正解なんでしょうか?ちなみに、小職は、監査報告書には何も書かないで、株主総会の場で口頭報告する方法を取るのが正解だと思っていますが・・・
投稿: KY | 2009年5月29日 (金) 12時08分