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2009年6月22日 (月)

内部統制報告書「重要な欠陥」と監査役監査報告書での開示

6月18日に会計士協会さんの研修で、浜田康先生が「会計不正の議論」と題するご講演をされたそうであります。(土曜日に、ある会計士の方から資料を見せていただきました)このブログでもとりあげました某上場企業における会計不正事件に係る裁判(判決書)と、社外調査委員会報告書における「事実認定」と「不正認定に至る判断過程」を比較して、「粉飾」にはふたつの意味があるのではないか?との疑問を呈しておられます。まさに法律家と会計専門家との間における問題の捉え方の差異に着目しておられ、共感するところも多く、示唆に富む講演内容のようであります。また企業会計7月号(中央経済社)では、「日本の会計法規の体系とIFRS」なる座談会が開催され、ここでも主に会計専門家の方々より、会社法とIFRSとの関係について議論がなされておりますが、今後こういった論点を、法律家と会計専門家の間で意見交換をする機会が増えればいいのになぁ・・・と痛感する次第です。(これはまた、別の機会に是非、私見を述べさせていただきたいところであります)

さて、金曜日のエントリーには、辰のお年ごさん、機野さん、迷える会計士さんなど、常連の皆様方よりコメントいただき、ありがとうございました。金融庁自身が「ベターレギュレーションの一環」として、内部統制報告制度を「プリンシプルベースによる規制のひとつ」と捉えている以上、この制度における各企業の取り組みは、監査法人との協働によって、一般に公正妥当と認められる経営者評価の基準をどのように自社に組み込んだのか、という点を中心にとても関心を抱くところであります。今週は内部統制報告書が大量にリリースされるでしょうから、フォローするのも限界がありますが、気がついた点はまたエントリーの中で触れていきたいと思っております。ところで、日経新聞(土曜日朝刊)でも記事になっておりましたBB太田昭和さんの「内部統制に重要な欠陥」表明第一号について、感想めいたものを二点ほど述べさせていただきます。

ひとつめは、BB太田昭和さんの株主総会招集通知に添付された事業報告「対処すべき課題」において、「決算財務報告プロセスでの繰延税金資産の計算において、重要な欠陥があり、内部統制が有効に機能しておりませんでした。」と表示されていることであります。つまり、一般の株主の方々には、(WEB開示がなされていれば一般の投資家の方々にも)すでに6月2日の時点において「BB太田昭和社の内部統制は有効ではないようだ」ということが認識できたようであります。また、5月20日付けの監査役会作成に係る「監査報告書」においても、「事業報告等の監査結果」のなかで、「事業報告に記載のとおり、財務報告に係る内部統制について重要な欠陥があり、有効に機能していない部分がありましたが、取締役はその改善に取り組んでおり、また当期の計算書類及びその附属明細書ならびに連結計算書類の適正性に影響は生じておらず、取締役の善管注意義務に違反する重大な事実は認められません」と報告されておりまして、有価証券報告書の提出に先立って、株主総会報告事項のひとつとして、「財務報告に係る内部統制評価」および「財務報告内部統制に係る監査役監査の結果」を株主に説明されています。監査役にとって、この財務報告内部統制に関する監査結果の表明をいつ行うか?という点については少し議論になっていたと思いますが、このBB太田昭和さんのケースは、今後のモデルケースになるのかもしれません。

そしてもうひとつは、(金曜日のエントリーでも少し触れましたが)内部統制監査人による意見不表明だけが適時開示の対象となり、企業自身が「有効に機能していない」と報告する場合には適時開示の対象にならないことは、実務上問題がないか?という点であります。内部統制の有効性を評価する日(期末日)に「重要な欠陥」が残っていたことは同じであっても、監査人による指摘に忠実に従って「内部統制は有効とはいえない」と報告した企業は(BB太田昭和さんのように、内部統制監査においては適正意見が出ますので)適時開示をする必要がなく、監査人と意見を異にして「内部統制は有効」と報告した企業については適時開示の必要がある、ということになりますが、投資家からみて、これは果たして適切な開示といえるのでしょうか?むしろ内部統制が有効とはいえないと評価した場合も適時開示の対象とするか、もしくはいずれの場合も適時開示の対象としないとするか、整合性を確保したほうが投資家の視点からは妥当ではないかと思いますが、いかがなものでしょうか。(まあ諸々の事情があって、現時点での開示ルールに収まっていることは認識しているのでありますが・・・)

PS 世の中「1Q84」ブームでありますが、先日ご紹介した「兜町コンフィデンシャル」、ホンマにおもろいですよ。。。ひょっとすると、私がこのようなブログの管理人で、いろんなブログのネタが、この高橋篤史氏の著書によってパズルの穴が埋められていくような感覚を覚えるからかもしれませんが。(初版なんでやむをえませんが、中盤以降、誤字脱字や乱丁が散見されますので、若干気になりますね。なお、プロフィールを拝見しておりますと、現在はフリージャーナリスト、と表記されておりますので、前エントリーの記載も「高橋記者」→「高橋氏」と改めました。)

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コメント

TOSHI先生

すばやく監査報告書まで入手されたのはさすがですね。私はBB太田昭和さんの事業報告書のPDFを見たのですが、監査報告書までついていなかったので、監査役はどのように監査役に報告したのか気になっておりました。

詳しくは日曜日の私のブログにアップした記事をお読みいただければと思いますが、監査報告書まで取締役の善管注意義務について記載できたのは、子会社の繰延税金資産の問題が比較的はやく会計監査人に指摘されており、5月中旬の監査報告書提出のタイミングまで監査役が意見形成できる時間的ゆとりがあったものと思います。

しかし、常にそうではない場合もあり、監査役の監査報告書提出のぎりぎりのタイミングまで、会計監査人との協議が決着がつかず、監査人が取締役の善管注意義務についての判断に苦しむことも実務上あり得ると思っております。監査役って大変です!

投稿: とも | 2009年6月22日 (月) 21時59分

22日は、ダイオーズも重要な欠陥を表明しましたね。

(237社中3社で、1.27%)

しかしながら、一般投資家にとっては、内容が理解できない点が問題かと

思います。

各社のホームページには、IR資料の掲示はあっても、重要な欠陥につい

ての説明は一切ありません。

投稿: YAMAYA | 2009年6月23日 (火) 02時40分

別のエントリーでTETUさんも述べておられますが、内部統制が有効だ無効だといっても、ホント一般投資家の方からすると、なんのことだかわからないでしょうね。こうやって現実に報告書が出てみると、そのあたりを指摘されますと、ドキっとしてしまいます。今後の内部統制報告制度を運営するにあたって、大きな課題(改良点?)になってくるでしょうね。内部統制研究学会などでも、議論すべきですね。

投稿: toshi | 2009年6月24日 (水) 02時48分

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