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2009年6月25日 (木)

内部統制報告書の検討(その4-「重要な欠陥」が治癒された事例)

本日(6月25日)は、東証一部のセイコーエプソンさん、JASDAQの日本興業さん、広島ガスさんの内部統制報告書において「重要な欠陥が評価日に認められるため、財務報告に係る内部統制は有効とは認められない」とされております。セイコーエプソンさんのケースでは、海外連結子会社において、今年度も含め、過去数年間にわたって不適切な会計処理がなされていたことが大きな要因のようであります。(事業報告書で「財務報告が有効でない可能性がある」と表記されており、また監査役会監査報告におきましても、「内部統制が有効でない可能性があると取締役が評価しているが、監査役会としては、その後取締役が一生懸命取り組んでいるために、その職務の執行について指摘すべき事項はない」「会計監査人である新日本有限責任監査法人から、内部統制が有効ではない可能性を示している事項があることを踏まえたうえで、会計監査を行った旨の報告を受けている」と記載されております。5月上旬の時点で、会計監査人と監査役間において、財務報告内部統制についての評価につき協議されていたものと思われます。)

また、日本興業さんのケースでは、評価日時点においては「重要な欠陥」が残るものの、付記事項において、提出日現在では内部統制は有効である旨の記載がなされております。重要な欠陥と評価される不備の内容については、売上高計上方法の運用面に問題があったことが示されております。重要な修正を行うことになった、とのこと。ところで、日本興業さんのケースでは、5月18日時点の監査役会監査報告書におきまして「なお、財務報告に係る内部統制については、本監査報告書の作成時点において重要な欠陥は認識していない旨の報告を取締役会及び監査法人トーマツより受けております」と記載されていることから、社内で内部統制の有効性に問題が生じたのは、この5月18日以降、ということになりそうです。わずか1カ月余りの間に、重要な欠陥にあたるかどうかの評価、重要な欠陥と認められる「不備」を是正するための体制の整備、そしてその運用の評価、といった全ての過程が十分に検証されるのか否か、若干疑問が残るところであります。

もう一社気になりましたのが、フォーバルさんの内部統制報告書であります。(会計不正事件が生じていたために、ここの内部統制報告書はひそかに注目しておりました)結果からしますと「有効」と評価されておりますが、内容はとても興味深い。報告書によりますと、複数の社員による不正行為が行われていたことが判明し、全社的統制におけるコンプライアンスに関する認識の欠如および業務プロセスにおける社内牽制体制の不備、特に受注の承認及び確認体制が十分に機能していなかったなどの重要な欠陥が識別された、とのこと。そして、識別された重要な欠陥に対し、新たにコンプライアンスに関する認識を徹底するための再教育の実施及び社内牽制体制の強化、特に受注の承認及び確認体制の強化などの是正措置を行い、これらの期末日における整備状況、運用状況を評価した結果、重要な欠陥は期末日までに治癒されていると判断した、と記載されております。また監査役会報告書では、内部統制報告書における評価見込みについては一切触れておらず、ただし「期中に従業員による不法行為が発覚しましたが、適切な調査を行い、取締役による再発防止策の策定とその徹底を進めていることを確認しております」とだけ記載されております。さて、期中に会計不正事件が発覚した企業において、このフォーバルさんのような記載が求められるとするならば、(会計不正事件を発生させた企業について)そもそも財務報告に係る内部統制に重要な欠陥が認められたけれども治癒されたのか、それとも不正の発生原因たる体制上の「不備」はそもそも重要な欠陥と認められるほどではなかったのか、そのあたりが取締役の職務執行の適法性を判断すべき監査役の立場からみると関心を持つところであります。

PS 昨日、しっかり調査したと思っていましたが、広島ガスさんの内部統制報告書をチェックしておりませんでした(26日の日経朝刊をみて知りましたので、追加しております)

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