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2009年6月19日 (金)

兜町コンフィデンシャル(株式市場の裏側で何が起きているのか)

Kabutochokon 当ブログで最初に「粉飾の論理」をご紹介しましたのは、もう2年半以上前のことでありました(カネボウ事件と内部統制構築論)あれから、何度も上記書籍を引用したり、改めて読み直したりしておりますが、著者でいらっしゃる高橋篤史氏の待望の新刊!ということで、やっと読む時間がとれました。ちなみに「粉飾の論理」を出版したことで、高橋記者は出版社とともに二件の民事事件の被告となり(損害賠償請求額は合計6億円とのこと)、そのうち1件につきましては、不本意ながら裁判上の和解による決着をされた、とのことであります。(本書「あとがき」より)

「兜町コンフィデンシャル(株式市場の裏側で何が起きているのか?)」(高橋篤史著 東洋経済新報社)

まだ半分程度しか読めておりませんが、やはり期待どおり、実におもしろい。 (取材および調査の精緻さには感服いたします)高橋氏の作品の面白さは、株式市場の裏側を紹介するための事実調査の正確性、精密性にもありますが、なんといっても裏社会が点と線でつながっている様子をいくつかの事件紹介を通して表現している点であります。目次をご覧になるとおわかりのとおり、10個ほどのテーマ(実は一つのテーマのなかにも、複数の事件が紹介されておりますので、もっと多くの事件数ですが)の項目だけをツラーっと眺めますと、それぞれが別個のストーリーではないか、との印象を持つわけであります。しかしながら、読み進めていきますと、それぞれのテーマに登場する人物が、またどっかでつながってくるのでありまして、この「裏社会のつながり」というものも、この新刊書における重要なテーマのひとつではないかと思います。

しかし前半のクレイフィッシュ社(および親会社たる光通信社)の株券紛失事件の顛末は実に興味深いものであります。親子上場の「おそろしさ」を背筋が凍るほどに堪能することができます。また、こういった華々しくデビューする新興企業にトラブルが発生するなかで、監査役会(弁護士や大学の先生など5名も監査役さんがいらっしゃったのですね)が若き社長や取締役会、そして顧問弁護士との対立を深めていき、社長解任動議が僅差で否決されるや、その場で5名とも辞表を提出する場面などは、いろいろと監査役制度の実効性が言われるなかで、やはり監査役としての有事の対応が水面下では果たされていることを知らされました。(少しうれしくなりました)

春日電機社の先日のリリースでも、経営権交代に絡むグレーな世界が表現されておりましたし、金融庁スタディグループにおける報告書のなかにおきましても、悪質な第三者割当増資への対応が喫緊の課題であることが強調されておりました。この本を読み、「経営者のほんの少しのスキ」から生じるリスクの大きさを考えますと、裏社会とのつながり、というものは、ある特殊な企業だけのリスクではなく、上場企業であればどこの会社でも、「隣り合わせのリスク」であることが認識できるはずであります。高橋氏の言葉を借りれば、「以前、株式市場で暗躍していた人たちは、相場師であり投機家であった。それはまだ市場の潤滑油として許容されていた人たちだった。しかし現在暗躍している人たちは、市場参加者を食いちぎる人たちであり、企業そのものを侵蝕する人たち」であります。企業として「リスクと真正面から向き合う」姿勢は従来にもまして不可欠であることが認識されるところであります。また、6月11日のエントリーでは、金商法157条と課徴金制度との親和性について検討いたしましたが、こういった事例に触れますと、包括条項を適切に運用する必要性というものも、ちょっと前向きに検討したくなりました。(後半部分は、また明日でも読もうかと思っております)

6月 19, 2009 本のご紹介 |

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受信: 2009年6月21日 (日) 21時53分

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