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2009年6月24日 (水)

内部統制報告書の検討(その3-重要な欠陥ありとする適時開示事例)

総会集中日が近づくにつれ、特色のある内部統制報告書も出てくるようになりました。本日(6月24日)は、JASDAQの細谷火工さん、遠州トラックさんの内部統制報告書において、「評価日において重要な欠陥があり、当社の内部統制は有効とは認められない」との評価結果が出ております。とくに遠州トラックさんのケースでは、「統制環境に問題があった」とするもので、今後の同種事例の参考になるものと思われます。

また、東証1部の岩崎通信機さんが、「財務報告に係る内部統制の一部に不備があり、当社としては、重要な欠陥があるものとして報告書に記載することを(取締役会で)決議しました」とするリリース(適時開示情報)をされております。いったん内部統制報告書を提出した翌日に内部統制を有効ではないとした理由を開示した例(BB太田昭和さん)はありましたが、財務報告に係る内部統制が有効ではない、とする評価結果を適時開示としてリリースする上場企業は初めてではないでしょうか。詳細については、また夜にでも検討してみたいと思います。

当ブログのコメント欄で話題になっておりましたダイオーズさんの「内部統制監査報告書」ですが、やはり予想どおり訂正報告書が出ましたね。付記事項の追記も出ております。なお、これは内部統制が有効ではない、とする事例ではございませんが、名証の三谷産業さんの内部統制報告書は個人的には好みですね。おそらくご異論もあろうかとは思いますが、こういった報告書がもっと出てきてもいいのではないでしょうかね。(お時間がございましたら、一度閲覧してみてください。とりいそぎ、備忘録程度で失礼いたします)

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コメント

いつも拝見しております。
三谷産業の内部統制報告書は、財務報告に係わる内部統制報告制度としての信頼性を基本的枠組みに従って外部に報告するというスタンスで、好感は持てるのですが、他社の報告書とはずいぶん色合いが違う印象を受けました。
内部統制報告書は財務報告の信頼性にフォーカスした内容でもいいような気がいたしますが、ご意見を伺いたいと思います。内部統制への取り組みについてはほかにも事業報告など開示媒体はあると思うのですが。。

投稿: Tony | 2009年6月25日 (木) 16時06分

これまで内部統制を巡る論議は、「重要な欠陥」に集中していたように思いますが、大木のように会社の内部統制評価が未了で、監査人が財務諸表の監査意見として適正意見が表明されたケースの議論はなかったですね。
このような場合、監査人が適正意見を表明したからといって、必ずしも有価証券報告書に不実記載がないとは判断できないのではないかと思います。何故ならば、会社の行う内部統制評価の範囲である財務報告と監査人が行う財務諸表監査の範囲には差異があり、会社の評価対象となる財務報告の範囲の方が広く規定されています。
日本の制度導入が、鉄道会社の有価証券報告書の不実記載が契機となったことから、財務報告の範囲が広く規定されたわけで、会社の内部統制評価が未了であれば、財務諸表以外の部分の信頼性は何ら担保されないこととなります。
その意味で、会社の内部統制評価未了は、重大な問題と認識する必要があるのではないでしょうか。 

投稿: 迷える会計士 | 2009年6月25日 (木) 22時19分

三谷産業さんの報告書は一見詳しく書いてあるようで、
よく読むと実はさほど意味のない内容だったりします(笑)。

つまり拘りを持つのならもっと具体的に書かないといけないのですが、
これ以上はリアルに書けない(内容的にも分量的にも秘匿的にも)。

虚しいですなあ…

投稿: 機野 | 2009年6月26日 (金) 00時37分

皆様、ご意見ありがとうございます。

私は機野さんとは意見が違いまして、三谷産業さんの内部統制報告書はたいへん好みですね。
たしかにいままで内部統制に関わってきた人間にとってみれば「内容が薄い」と感じられるかもしれませんが、やはり開示制度のひとつですから、あまり内部統制になじみのない方にもわかりやすい、という意味では有意義ですよ。私は「これが正解」とは申しませんが、「こういうのがあってもいいんじゃない」というまさにプリンシプルの世界だと思います。大いに歓迎いたします。

そしてもうひとつの理由は、今後いろいろな場面で出てくるであろう「内部統制リスク」対応ですね。取締役や会計監査人の法的責任が問われる場面で、横並びの内部統制報告書だけですと、日本システム技術開発事件やナナボシ事件のように「後だしじゃんけん」的な判決を受けるリスクにさらされてしまうと思います。(これはまた別のエントリーで書きますが)
単純にワンマン経営だから監査リスクは高めに設定しなければならないとか、高度の内部統制の構築義務が取締役会に課せられているといった具合ですね。不正が発生して事件になってから、あれこれと裁判所に勝手な判断をされるまでに、自社で対応している証拠を残しておくべきだと思いますね。

投稿: toshi | 2009年6月26日 (金) 01時26分

TOSHI先生、機野さんともいい感じですね。            
当社の内部統制報告書も、三谷産業さんに負けない(?)ほどに詳細な記載内容を検討しましたが、結局、表の内部統制報告書は一般的な横並び表現になりました。でも、本当の内部統制報告書(監査役や監査人への報告、取締役会での決議用に提示したドラフト)は、内部統制整備への取組み経緯や運用評価方法など、かなり詳細な評価手続を記載したものを作成しました。これは、監査役会や取締役会の議事録としても記録されております。本当は、この裏(?)の内部統制報告書を開示したかったのですが、整備や評価の経緯はいいとしても、不備事項の発見やその後の是正経過なども記載されており、あまりにリアル過ぎて開示はちょっと難しいですね・・・

投稿: KY | 2009年6月26日 (金) 09時08分

遠州トラックさんの件は、ソフト会社と企業の担当者がグルになって業務上横領を企てた例ですね。まさに、ここまでくると遠州トラックさんにとって内部統制とは何だったのか聞いてみたいです。

投稿: hiro | 2009年6月26日 (金) 20時30分

hiroさん、コメントありがとうございます。

たしかにhiroさんの情報をもとに、遠州トラックさんのHPを閲覧したところ、すでに6月22日の時点で、不正事件を理由に内部統制は有効とはいえない、との会社判断が掲載されていますね。(私はこの事件は全く存じ上げませんでした)すんなりと会計不正問題を重要な欠陥と結びつけた事案だと認識いたしました。

投稿: toshi | 2009年6月27日 (土) 03時03分

遠州トラックさんの「重要な欠陥」が統制環境に関するものとの開示だったんで、どのような内容かと思っていましたが、不正に関係していたんですね。

不正の手口は古典的なものですが、外部監査では発見が難しいタイプですから、内部統制が十分機能しなければなりませんね。

投稿: 迷える会計士 | 2009年6月27日 (土) 08時52分

KYさまの書かれているような、取締役・経営層及び会計士に
説明するための資料としての「報告書」は当然各社作成している筈です。
具体的に記述されていないと、経営層だって承認するしないの判断が
出来ないわけですから。

しかしこんなもんを一般に公開するわけにはいかないわけで(笑)。

三谷さんの提出されたものは一見詳しいようでいて社内説明資料から
肝の部分を除去し整えたシロモノにすぎません。
これが株主や一般に対して丁寧な資料だと見えるのであれば、
とんだ目くらましではありませんでしょうか。

投稿: 機野 | 2009年6月28日 (日) 01時29分

「重要な欠陥」についての開示は、各社とも十分かどうかは別にして、そこそこ記載されています。しかし、『有効である』と判断した会社の「何をもって内部統制の有効性を判断したのか」については、各社の有効性の判断基準が異なることもあって、かなり記載が難しいと思いますが、投資家の立場であれば表明してほしいものです。内部統制の評価は及第点である60点~100点まで幅があるため、内部統制報告書及び内部統制監査報告書で「有効である」と評価結果を表明しても、どの程度(何点?)有効であるのかがわからないので、いっそのこと○○ランキングにするか、「有効でない」と評価した会社以外については、例えば学校の成績表じゃないけど「優」「良」「可」程度の区分にしてくれないと、各社のレベル感がわからない一般投資家にとっては判断に困りますよね。内部統制の有効性については毎年判断結果を表明するものですから、今年は「可」でも、来年以降に「優」とか「良」になるように整備を継続し、経営品質を維持・向上させることが肝要だと思うのですが・・・

投稿: KY | 2009年6月30日 (火) 13時00分

本当に投資家にとって必要な情報なんですかね?
一通り調べたところでは、「重要な欠陥」もしくは「意見不表明」が
原因で株価が下がったと思われる銘柄はありませんが・・・
米国の初年度と比べても一桁少ない「選りすぐり」の銘柄がほとんど
株価に相関しないというのは、投資家にとって「意味のない情報」と
いうより「意味が分からない情報」ということではないでしょうか。

監査報告書なんてもっと難解ですね。会社側の「重要な欠陥」表明に
対して「無限定適正」の監査意見というのは改めて発表を見て「何の
意味があるのか」説明するのって難しいです。

投稿: nightwalker | 2009年7月 2日 (木) 00時45分

各社のレベル感…
そんなもんこっちが知りたいですよ(大苦笑)。

だいたい「優」にするために会社の利益が減ることを喜ぶ株主がいたら、それはちょっとおかしいですな。

投稿: 機野 | 2009年7月 2日 (木) 08時52分

う~ん。そうなんかなぁ~?(ちょっと違うような・・・)      少なくとも私は金商法に基づく内部統制整備をやっている訳ではないし、何の付加価値も生まない法規制対応だけの内部統制なんて意味がないと思っています。しかし、相変わらず内部統制に対してネガティブな意見が多いですね。まぁ、制度というか枠組みがイマイチだから仕方ないんでしょうが、内部統制ファンの私としては、少し哀しい気持ちです。             

投稿: KY | 2009年7月 2日 (木) 10時36分

2009/7/2付日経新聞の「「重要な欠陥」識者の見方」に「重要な欠陥があっても報告書提出までは分からないため、米国のように判明した時点で適時開示することが必要ではないか」(プロティビティジャパン社長氏のコメント)との記述がありました。
米国では、重要な欠陥が判明した時点で適時開示するとのルールがあるのでしょうか。また、そのようなルールがあるとして、実際にはどの程度機能しているのでしょうか(例えば年間の開示件数、具体的な開示内容等)。日本には今のところそのようなルールはないようですが、何らかの検討が行われているのでしょうか。
誠に不勉強で申し訳ありませんが、どなたかご存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示いただけると幸甚です。どうぞよろしくお願いいたします。

投稿: 漉餡大福 | 2009年7月 2日 (木) 18時17分

蛇足ながら申し添えますと、
私は何も「内部統制に意味はない」と言っているのではありません。
「適切な」内部統制は、株主・経営者・従業員いずれにとっても必要な
ことですし、実際に今回の対応でも「やって良かったこと」はいろいろ
あったことは事実です(実感です)。
ただ、今の日本の制度で意味があるとはどうも思えません。
金融庁および発案者は、今回の結果をどう総括してくれるのか注目して
います。町田教授は早々に「重要な欠陥はもっと出て良かったのでは」
と言っているようですが、さて責任者はどう受け止めているのか。

投稿: nightwalker | 2009年7月 2日 (木) 23時12分

あまり内部統制制度自体についてコメントしたつもりではなかったのですが・・・                             もとより、不正や誤謬のない適正な財務報告に係る内部統制を構築するためとはいえ、当初より「多大なコストと時間を要して、何のための内部統制整備・評価か?」という意見が大半でした。確かに内部統制を法規制対応とだけとらまえればそうだと思います。しかし、一方で評価を実施した社員からは「内部統制整備をやって良かった」という少数(?)意見も頂いています。現実に、今まで属人化していた決算業務等の標準化やみえる化によって、透明性だけでなく効率化や改善・改革が進み、今までやっていなかった不正や誤謬リスクを防止又は軽減するための対策(是正)も実施することができました。これって十分に「意味のある内部統制整備活動」であったと思うし、ステークホルダーにとってもマイナスではなかったのでは・・・? そういう意味では、TOSHI先生も言われているように、本当に意味での総括評価はもう少し後の方がよいかも知れませんね。

投稿: YK | 2009年7月 3日 (金) 12時10分

内部統制のナの字もない、かもしれない(と表現を緩めておきます(笑))
官僚組織や大学の先生がたが勝手に作ったいい加減な法律・政令なのに、
そのわりによくまあ我々民間会社はへこたれることもなく、
実に真摯に対応し見事に初年度をクリアしたなあ、
と、まずは自分たちを褒めてあげたいと思います。

総括というのなら、まずはそこからで(笑)。

直属の上司でもない行政府によって強要されて始めるものではなく、
そもそも自分たちの意志と責任で、経営は高めていくものでしょう。
ダメなら潰れるだけの話です。

結果的に「内部統制報告制度」が役に立った、というのは
(それは確かに事実ですが)
役に立つようにしていかないと余りにも職務が虚しいから
そうなるように各社努力したわけですよね。

投稿: 機野 | 2009年7月 4日 (土) 01時57分

機野さんのおしゃられる通りです。私も、内部統制の意義については多くの疑念を持っています。こんなんで本当に不正や誤謬が防止できるのかと・・・結局は形式的に対応している会社が大半で、仮に不正や誤謬が発生しても「内部統制の限界」ということになるんでしょうね。(本当は、内部統制に欠陥があったのに、評価段階で発見できていなかっただけだと思いますが・・・)                        しかし、法規制対応(外圧)で強制しても多くの社員は動いてくれないし、それではやっている自分自身が虚しいだけですから、社員の皆さんが「理解」「納得」して取り組むように、途中からマネジメント活動の中に内部統制を取り込んで、経営にとっても役に立つ「業務改善」に軸足を移したというのが実情です。(そんな風に考えないと、やってられないし・・・)

投稿: KY | 2009年7月 6日 (月) 11時40分

KYさま、ご不快な思いをさせてしまったのでしょうか。
申し訳ございません。
実際に行ってきていることは私のところもほぼ同じです。

私が申し上げたいのは、金融庁や学者らが今
「たいした混乱もなく内部統制報告制度がスタートできた。
 よかった、よかった。これも我々の努力の賜物だ」
などと自己評価自己満足しているのではないかと。

そんなこと勝手に思われて、
そんなこと勝手に書かれて、
たまりますかいな!!(笑)

どこのどなたさまであっても自分(たち)自身のことを棚に上げないと
監査だの評価だの出来るはずもないわけですから
あんまり申し上げたくもありませんが、
役所だけではなく大学だってろくな内部統制、経営がなされてなくて
現在どれだけ欠損を抱えているか。

彼らに大猛省を促したい。

投稿: 機野 | 2009年7月 7日 (火) 00時28分

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