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2009年7月10日 (金)

(速報版)日本システム技術事件について最高裁逆転判決

おそらく商事法務さんのメールマガジン等でも紹介されると思われますが、上場会社の代表者に内部統制構築義務違反(過失)を認めた判例として注目されておりました日本システム技術事件につきまして、昨日(7月9日)最高裁(第一小法廷)は、原審および第一審の判決を覆して、代表者について不法行為は成立しないとする判断を出しております。(すでに最高裁のWEBより判決全文がご覧になれます)

日本システム技術事件は、すでに何度も本ブログにおいてとりあげておりましたが(たとえばこちら)、代表者のリスク管理体制の構築義務の有無を真正面からとりあげた最高裁判決は、これが初めてではないでしょうか。ちなみに、代表者個人の法的責任を追及しておられた株主の方は本人訴訟として訴訟を遂行されていたようですが、最高裁の弁論も同様だったのでしょうか?会社の取締役の方にとりましては、ちょっと胸をなでおろしたくなる判決内容ですし、企業経営の現実を客観的に見据えたものだと思われます。また、監査役は財務報告に係る内部統制の整備運用について、(取締役の職務執行の)適法性を判断することになりますが、監査役の職務にも影響を与えるものであります。また監査法人による適正意見への信頼が法的に保護されるか?といった問題も出てくるように思われます。(この最高裁判決により、会社法上の内部統制に関する理論的な深化がはかられそうであります)

今後いろいろな法律雑誌等でまた本判例が検討されると思われますので、とりいそぎ速報版としてご紹介しておきたいと思います。

(追記)えらそうに「速報版!」などとタイトルに書いてしまいましたが、今朝の日経新聞でも報じられていたんですね。(社会面はあまり熱心に読んでいなかったので・・・。しかし社会面で採り上げるほど、この判決は影響力があるんでしょうか?)

7月 10, 2009 内部統制義務と取締役の第三者責任 |

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コメント

判決理由を読む限り、この程度の管理体制の認定で本当にOKなのか??
と思ってしまいます。残高確認等のルーティンをリスク管理体制の根拠
に挙げるるあたり、裁判官がいかに世間を知らないかを露呈する判断だ
と思います。これではほとんどの会社ではリスク管理体制は十分という
ことになりませんか?

普通なら、「部門を分離し…監査契約を締結し…残高確認の手続を実践し
…といった体制は上告人のような企業ではごく当たり前に実施されている
基本的措置にすぎない。しかし、本件ではこれにとどまらず、… … 
…といった体制が採られており、リスク管理体制は十分であった。」
というような判示になると思います。
故意による巧妙な犯罪が介在したとはいえ、簡単に印鑑を偽造できる環
境、販社とのゆるゆるの関係、文書チェックの甘さ等々が結果を惹き起
したとみるべきではないでしょうか。
不正行為というのはバレないようにやるのが当たり前であって、バレない
ように実行できるという客観的状況の存在を前提に、それへの対処如何を
問題とすべきです。

具体的事案における判断だと言ってしまえばそれまでですが、責任を否定
する結論を取るならば、この判決理由は薄すぎます。あるいは、判決理由
に掲げるべき事実の採否を(非常識により)誤っていると思います。

投稿: JFK | 2009年7月11日 (土) 00時36分

以前,東京高裁に問い合わせたら,最高裁に上告受理の申立がされていると聞いていたので,どういう判断が出るのかなと思っておりました。
私も,JFKさんの意見に同意します。
判決理由程度の体制が整備されていれば「不正行為を防止するためのリスク管理体制を構築すべき義務に違反した過失があるということはできない」と判断してくれるのであれば,おそらく,マスコミをにぎわしている一連の企業不祥事については,どの会社の取締役も責任を問われることはないでしょう。
外見上の職務分掌や売掛金残高確認をもって,内部統制システムが有効に構築されていたと判断するような判決は,明らかに,金融商品取引法に規定する内部統制報告制度の趣旨から逆行するものだと考えてしまいますが,いかがでしょうか。

投稿: Tenpoint | 2009年7月14日 (火) 11時20分

内部統制は、PDCAの動的プロセスとして捉えなければなりませんから、職務分離の体制をもってリスク管理体制として十分であるとの認識は、一時代前のものといわざろう得ないでしょう。

会社はソフトの販売という業態から、収益の認識である検収にリスクがあると考えたからこそ、ユーザーの稼動状況を実地に確認するCR部を設けたわけですから、検収書が偽造されたということは、CR部が職責を全うしていないことになり、内部統制の運用に重大な過失があると判断するのが妥当ではないでしょうか。

投稿: 迷える会計士 | 2009年7月15日 (水) 22時50分

皆様方のたいへん有益なご意見を拝読して、あまり返す言葉もございません。まだ十分に最高裁判決を熟読しておりませんので、皆様方のコメントに対するお答えも、別エントリーのなかで書かせていただきます。なお、ご指摘のとおりだと思いますが、本文でも書いたとおり、この裁判では元株主側に代理人は就任されていなかったのではないでしょうか?もし代理人が就任していれば、皆様方のようなご意見が弁論において展開されていたのかもしれません。(あくまで法律論としてですが)

なお、金融商事判例の最新号(1320号)におきまして、第一審判決に対する解説論文が、早稲田の川島教授によって出稿されておりますので、またご関心のある方はご一読ください。

投稿: toshi | 2009年7月16日 (木) 01時18分

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