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2009年7月23日 (木)

わかりやすいパワーハラスメント裁判例集(21世紀職業財団)

Pawaharhon 先週は、内部通報窓口からみたパワハラ事件のむずかしさ についてエントリーを書きましたが、7月16日の朝日新聞で大きく紹介されていたパワハラに関する判例集が、ようやく手元に届きましたので、さっそく興味のあるところから読み始めております。この分野に精通された弁護士の方が裁判例の整理を担当され、一般企業の社員や役員の方々にもわかりやすいように判決文をまとめてありますので、お勧めの一冊です。もうすでに改訂版も出ているのかもしれませんが、 わかりやすいパワーハラスメント裁判例集(財団法人21世紀職業財団 編2100円) 。  セクハラにつきましては法令上の定義がありますが、パワハラには定義がないために、裁判におきましても、原告側(パワハラ被害者側)主張にどのように対応すべきか、手探りの状況にあることが認識できます。(名誉毀損や人格権侵害など、既存の枠組みが活用できるのであれば、パワハラの有無に関する判断よりも、そちらで優先的に解決したい、といった裁判所の苦悩も読み取れます)また過失相殺がなされている判例がいくつか掲載されておりますが、相殺の原因となった被害者(労働者)側の過失の捉え方によっては、この過失相殺の割合認定が今後も大きな争点になるケースもあるかもしれません。

実際には却下されておりますが、裁判所がパワハラ事例におきまして、人格権侵害の妨害排除請求権(物権的排他請求)を被保全権利として、集団いじめ行為の差止仮処分命令を求めうる余地があることを述べている(東京地裁決定)ことは初めて知りました。最近のパワハラ事例につきましては、何がパワハラなのか、といった判断だけでなく、精神疾患などといじめ行為との相当因果関係の有無、企業の安全配慮義務違反の判断などが争点となるケースが多いようですが、パワハラに仮処分が認容されるようになりますと、精神疾患などの実被害が発生する前からでも裁判所の判断を仰ぐことができますので、けっこう多くの事案において活用されることになるのかもしれませんね。ただ、(たしか機野さんがコメントされていたと思いますが)「パワハラ」なる用語が独り歩きしてしまって、なんとなくアプリオリに人格権として認知されているかのような風潮があるかもしれませんが、そのあたりはこの30ほどの裁判例をみていただければおわかりのとおり、なかなか裁判所は慎重な態度を崩してはいないように思われます。

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コメント

さっそく読んでみたいと思います。
ところで、ビジネス法務の最新号にもパワハラの特集が組まれていますね。最近パワハラの話題がホットなのでしょうか?

投稿: JFK | 2009年7月23日 (木) 17時42分

いま、WEB上で「ビジネス法務9月号」の目次を見ましたが、本当ですね。(第一特集ですね)いや、ビックリしました。
ただ内部通報窓口をやっていて、最近従業員側(パート社員、派遣従業員含め)から、とても通報が増えておりまして、その増えた分がほとんど「パワハラ」に関連するものなんですよ。また、最近そういったパワハラ事件を支援する代理人弁護士の方も増えているわけでして、おそらく今後急速に裁判例は増えるのではないか・・・と思っております。労働事件専門弁護士だけの問題ではない、というのが私のパワハラ問題に対する印象です。

投稿: toshi | 2009年7月23日 (木) 19時42分

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