内部統制報告制度ラウンドテーブルが開催されます
(一部訂正がございます)
8月29日、甲南大学(神戸市)におきまして開催された第2回日本内部統制研究学会に参加してまいりました。内部統制報告制度の効果に関する実態調査と実証研究からはじまり、内部統制報告制度の現状と課題、IFRS時代の内部統制、企業における財務報告内部統制への対応、企業開示課N氏による「一年を振り返って」、その後の統一論題報告など、たいへん盛りだくさんの内容でありました。私自身は、いま最も企業側から要望の多い「内部統制報告制度の効率化と会社法上の内部統制構築義務との関係」に対するヒントを得たい・・・という問題意識を持って当学会に臨みました。今月、日本公認会計士協会出版局より「COSO内部統制システム・モニタリングガイダンス」が出版されましたが、COSO理事会がモニタリングに注目したところも、内部統制報告制度の費用削減とシステムの効率化を図るためには、既存のシステムへのモニタリングの在り方を各企業が理解する必要がある・・・というところに出発点があるわけでして、制度2年目以降は、有効性と効率性の両立のための「運用評価と整備の見直し」こそ重要なポイントだと考えるからであります。
そういった問題意識をもって学会に参加させていただき、当学会の皆様の研究発表を拝聴させていただいて、多くの示唆を得ることができました。とりあえずいったんは、ほとんどすべての上場会社の経営者が「有効と評価」できる内部統制システムを構築した(遅くとも今年3月末時点で)わけです。そこで、この内部統制システムにつきまして、①これを受け身ではなく、企業がどのように能動的に活用することができるのか、また②投資家の判断に影響を与えるほどに重大な会計不正や誤謬に関するリスクの優先度をどのように適切に評価しなおして、キーコントロールを効率化させることができるか(このあたりが、日本技術システム事件の原審や最高裁判決、会計不正事件における第三者委員会報告の結論などの研究成果を参考としなければ企業担当者や監査人の方々が不安になってしまうところでありますが)、また③適切なモニタリングがいかにして「不備」の重要性や発生可能性に影響を及ぼしうるか、といったところを検討することが必要になってまいりますが、私としましては、このあたりを考えるための貴重な情報を当学会にて得ることができました。また、今後少しずつ当ブログにおきましても、2年目以降の課題として、私自身の考えるところを綴っていきたいと思っております。ともかく、内部統制報告制度の効率化を図るための(金商法上での)見直しにおいて発生するであろう、会社法上の財務報告内部統制の構築義務との混乱は極力回避する必要があろうかと思われます。
「過年度決算訂正を余儀なくされる場合の適正意見を出した内部統制監査人の責任」などを始め、いろんな興味深い議論がなされた研究報告でありましたが、また学会での報告内容は追ってご紹介することとして、とりあえず10月28日に11月5日にビックイベントとして「内部統制報告制度ラウンドテーブル」が東京で開催されることが理事会で決定いたしましたので、お知らせいたします。2004年にスタートした米国SOX法上の内部統制報告制度におきましても、費用対効果の問題や、「重大な欠陥」の市場に及ぼす影響、上場企業の規模別導入問題など、多くの課題につきまして、翌2005年にはSECを中心としてラウンドテーブルが開催され、見直しが図られたことはご承知のことと存じます。そこで日本におきましても、会計士、学者、市場関係者、企業実務家等14~15名のメンバーによって「日本版内部統制報告制度ラウンドテーブル」を2009年10月28日11月5日に開催することが理事会によって承認されました。(また、会員総会においても同日承認されました)金融庁、経産省などからもオブザーバーの方が参加される予定、とのことであり、また学会員やマスコミにも公開して討論を行う、というものでして、今後の内部統制報告制度の運用について大きな影響を及ぼす会合になるものと予想されます。ここのところ、新聞報道等におきましても、内部統制報告制度の「費用対効果」問題が批判的に報じられる機会が増えておりますが、今後はシステムの運用も含めて、さまざまな課題を真正面から検討する必要がありそうです。(ちなみに、金融庁のN氏のお話によれば、IFRSを任意に適用するためには4つの要件を満たす必要があり、そのうちの1つは、IFRSによって会計情報を開示できるだけの内部統制が具備されていること、だそうであります。具備されているか否かを、誰がどのように判定するのか・・・は私は存じ上げませんが。。。)
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