来年の株主総会は準備がたいへんかも・・・?
とくに株主総会対策を論じることができるほどの者ではありませんが、いろいろと考えてみると来年の株主総会は準備がたいへんそうですね。当ブログでは、それほど株主総会対応のエントリーを書く機会も少ないのですが、社外役員という立場で来年の総会を展望してみますと、ちょっと現時点では「どのように準備したらいいのかわからない」と感じています。法律雑誌などでみかける「総会対応」に関する論稿などを拝見して気がつきましたが、総会対策準備事項については、総会担当者向けのものと役員向けのものに分類・整理することができますよね。そこで、勝手ながら「リスクマップ」のように、総会担当者の関心度を横軸に、そして会社役員の関心度を縦軸として、以下のとおり重要事項を整理してみました。右上にいくほど、事前準備のレベルが高くなることになります。また、ここで表現している「株主総会」とは、実際に株主が集まる「株主総会」だけではなく、招集通知を発送してから実際の総会が終了するまでの一連の流れ(広義の株主総会)を示しています。(なお、分類項目は私の勝手な推測に基づくものでありますので、あまり気になさらないでください。ただし、こういった分類整理が来年の総会準備には必要になってくるのではないでしょうか。)
役員の関心度を分類する判断基準は情報開示、説明義務、善管注意義務など、株価変動や企業のレピュテーションに影響を及ぼす事象や、自身の法的責任に関わる問題などを重視しています。また、総会担当者の関心度を分類する判断基準は、法的瑕疵なく、シャンシャンと総会が終了するために、手続瑕疵の重大性やマニュアル依存度、そして準備に要する人的・物的資源(前倒し準備の必要性)などを重視しています。もちろん、想定問答集の作成や、総会準備のためのリハーサルなど、例年重要視されている項目もありますが、とくに来年の総会対策として、これは十分に議論されるだろうなぁと予想されるところを中心に項目として挙げています。右下の会社法関連の政省令改正対応問題などは、ここだけでもおそらくいろんな項目が出てくると思いますが、とりあえず株懇モデルや経団連ひな型などで対応されるケースも多いでしょうし、そこではたいへん著名な法律家の方々が議論のうえ策定されるものですので、詳細は省いています。
さて、何が一番たいへんか?といいますと、経営環境がどうなるのかわからないところに、「公開会社法」問題とか、金商法(内閣府令)の改正、東証自主ルールの改正など、今後企業開示に関する法制に変化が生じる兆しがあって、株主総会の運営にも大きな影響が出てくる可能性がある、ということだと思います。たとえば3月決算(6月総会)の上場会社の場合には、12月ころまでには役員人事なども決まるところが多いと思いますので、そのあたりまでにはおおよその流れは判明すると思いますが、情報開示によるガバナンス規制などは、次回の株主総会におけるひとつの特色ではないでしょうか。そもそも株主総会は会社法上の(組織法上の)意思決定ルールのひとつであって、一つの事業年度における企業活動を承認し、その承認のもとに将来の経営を委託する者を決定することが原則だと思いますが、「情報を開示する」ことが(株主の監視を可能として)そもそも会社役員の行動を規律するのであれば、有価証券報告書前倒し提出など、総会直前までの事実をもとに経営活動を株主が承認する必要性も認められるわけでして、そのあたりの流れが総会準備にも多大な影響を及ぼすように思います。
私的には、総会決議の意味を大きく変えるものとしての「議決権行使結果の開示」、そして法的にも未解決な論点が多く、またたとえ裁判にならなくても、大きな話題になる株主提案権問題を最重要課題として挙げました。今年の総会では、アデランスHD以外はあまり大きな事例はなかったのかもしれませんが、レナウンとネオラインキャピタルとの役員選任に関する交渉経過などをみると、これからも大株主と経営陣との交渉道具としての株主提案権行使は(委任状勧誘事例に発展するか否かは別として)経営陣にとっても、また総会担当者にとっても重要な課題でしょうね。
| 固定リンク
コメント
あのー、出来ますれば
あんまり大袈裟に騒ぎ立てないでくださいな(苦笑)。
もちろんすべき準備はしなくてはいけませんが、
大変だ-大変だーと云われることに
どれだけ末端の企業の人間が迷惑してるか。
まあ内部統制報告制度の際に「コンサルとかに乗せられたー。
それ以前に御用学者に騙されたー」ということを少なからず
学んでしまいましたから、国際財務報告基準導入問題への対応では
あまり焦らずに進めていけるという免役みたいなものが
各社に生まれているのもまた事実ですけどね(笑)。
投稿: 機野 | 2009年8月16日 (日) 19時52分
後半部分は笑えました。
まあ、総会指導の法律専門家の意見というよりも、社外役員という立場からの妄想とお考えいただければ結構です。また、とくに大げさに話をして、それで儲けよう・・・といった気持は毛頭ございません。
ただし現在、内部統制スリム化作業というものをご指導申し上げておりますが、これもやっぱり「騙された」と言われないように気をつけたいと思っております。(やってる本人は結構真剣なんですが・・・)
投稿: toshi | 2009年8月19日 (水) 02時02分