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2009年9月 7日 (月)

明治安田生命集団パワハラ訴訟

明治安田生命さんのコンプライアンス問題には、ことのほか思い入れがございまして、これまで「かっこいい」部分と「かっこ悪い」部分に触れてきた会社であります。当ブログにおきましても、2005年に「明治安田のコンプライアンス委員会」なるエントリーを4回にわたりリリースいたしまして、「契約金不払い」事件をテーマに「社風は10年程度経過しないと変わらないけど、期待しております」と申し上げておりました。

ちょうど土曜日に社外取締役ネットワークの関西勉強会で「企業からみたセクハラ・パワハラ問題の現状と課題」を報告させていただいたところでしたので、日曜日の毎日新聞社会面で大きく報道されていたこのパワハラ集団訴訟(予定)の記事が目を引きました。(注-「パワハラ」とは、一般には職場におけるいじめ、と定義されています)記事の内容は(おそらく)原告側当事者の方から取材されたものだと思いますので、現時点では公平な見方かどうかは不明でありますが、もしこの報道内容が事実だとすれば、第一次パワハラ、第二次パワハラ、そして第三次パワハラと、対象者にとってはかなり厳しい現実がそこに横たわっていたものと想像できます。今回は集団パワハラ訴訟ということでありますが、なるほど記事にもありますように、立証方法の強化という点からしますと、たしかに集団訴訟という方法をとることは原告側にとりましては有利かもしれませんね。またこういった訴訟を続けているのには相当の精神的疲労もあるでしょうから、集団で訴訟を続けることが、そういった疲労を和らげる意味があるのかもしれません。記事では、こういった訴訟は異例ということですが、先日のエントリーでも書きましたように、パワハラ通報は急増しており、労働審判事件まで含めれば紛争が現実化しているケースはかなり増えているのではないでしょうか。

セクハラ問題も難しい面がありますが、企業側からみたパワハラ問題の難しさについては独特のものがあります。先日もご紹介したとおり、パワハラのグレーゾーンを曖昧なままにしておくことは許されず(グレーならばとりあえず禁止・・・では、上司の適切な指揮命令権を過度に委縮させてしまって、業務に支障を生じさせる)、上司を知る社員の間で意見が分かれることがあり(熱意のある指導と受け取る社員もいれば、パワハラと断定する社員もいる)、さらにそもそもパワハラを行った者に対する懲戒処分の根拠が明らかではないケースがある、ということであります。(したがいまして、企業側からすれば、加害者と被害者をとりあえず離す、つまり配置転換等によって、あいまいなままで終わらせたい・・・という気持になってしまう場合があります。なお、これは一般論でありまして、本事例がそうだ・・・という意味ではございません)このあたりが通報窓口から事実認定を行う調査上の課題ではないかと思います。さらに、本件を例に考えるならば、パワハラに該当するか否かは(これも以前書いたところですが)行為要件と属性要件の総合的判断をもって検討すべきでしょうから、たとえば属性が「生命保険会社の営業所長と保険営業員の関係」とすれば、そこには営業所長の指揮監督につき比較的広い裁量権が存在することが認められます。そこで、このような裁量権が広く認められる(つまり上司の恣意的な判断の余地が入りやすい)上下関係では、パワハラを推認させる行為もかなり広く(緩やかに)認められる可能性があり、誰がみても常識を逸した奇異な命令ではなくても、パワハラと認定される場合もあるのではないでしょうか。

なお、パワハラ認定につき、(人格権侵害を理由に)被害者の主観的要素を重視する立場もあるかもしれませんが、企業側から見た場合には、加害者への懲戒処分の正当な理由をたてなければならないことや、あいまいな理由で加害者とされる社員に対して調査活動を継続することにより、かえって加害者側から会社が損害賠償請求訴訟を提起される可能性もあることから(現にそのような裁判で会社側が敗訴した事件もあります)、やはり客観的な根拠を重視してパワハラの該当性を判断すべきではないかと思います。

しかし、本社コンプライアンス室での対応につきまして、会社側としてはどう反論されるのかが興味深いところであります。大きな会社ですから、当然内部通報ガイドラインは規定されているでしょうから、事務手続きに反するような対応はしていないのではないか、と推測いたします。つまり、口止めにしても、所長へ通報者の存在を告げたことも、対応に時間を要したことも、おそらくガイドラインに沿った手続き遂行上のものとして、何らかの合理的な反論が考えられます。しかしながら、もしそういったガイドラインに沿うことなく、恣意的に内規に反した行動が採られていたとすれば、それは間違いなく「二次パワハラ」に該当することになるでしょうし、また仲間内での通報に対する事実上の制裁(三次パワハラ)を惹起せしめたことに対しては、「社員による内部通報者への制裁禁止」に関する周知徹底がなされていなかったものとしての非難は免れないところではないでしょうか。(しかし通報者はなぜ外部窓口を活用しなかったのでしょうかね?)あの事件から4年、またまた明治安田生命さんのコンプライアンス経営に対する姿勢が問われるような事件となり、今後の訴訟の行方が気になるところであります。

9月 7, 2009 セクハラ・パワハラ問題 |

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コメント

とても楽しいブログですねっ!
これからも頑張って下さい。(応援)

投稿: 保険営業マン | 2009年10月30日 (金) 09時36分

私もパワハラ受けました。大阪の方には頑張っていただきたいです。自分では訴えたい気持ちは強いですが、何をどうすればよくわからないので。

投稿: 元当社の営業員 | 2009年11月19日 (木) 23時58分

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