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2009年10月27日 (火)

内部統制報告制度ラウンドテーブル(11月5日)

ある事情により、先週金曜日から本日(月曜日)まで休みもとらず、ひたすら「不適切な会計処理の発覚」に伴う社外調査委員会報告書を約50本ほど、読みふけっておりました。(正確には、すべてが純粋な「社外調査委員会報告」ではなく、取引所提出用の「改善報告書」や弁護士が支援している「社内調査委員会報告」も含まれております)時期的には証券取引所の改善報告書縦覧期間分ですから、だいたい平成17年から最近までの分ということになります。もともとこういった報告書を読むのは好きなほうですが、さすがに一日平均12~13本となりますと、ヘロヘロになってきます。

この50本は、いわゆる経営者主導(経営者関与)型の会計不正(粉飾、違法配当)事案は含まれておらず、経理担当職員や営業社員等による資金流用事件を選択しております。つまり内部統制の限界事例ではなく、いわゆる典型的な内部統制欠乏型事例というものです。(したがいまして、社外委員の再発防止策として、ほとんどに内部統制システムの充実・・・と出てきます)取引所による指導などもあってか、平成17,18年当時よりも最近の報告書は格段に内容が充実しております。以前はインダイレクトレポーティング型(社内調査委員会報告書に対する検証を主たる目的とするもの)が多かったのでありますが、最近は社内調査とは別に社外調査委員が何度となくヒアリングを行って、独自に事実調査などを詳細に行うもの(ダイレクトレポーティング型)が増えているのが事実であります。内部統制というと、いわゆる「日本システム技術事件」が有名でありますが、こうやって日本システム技術社の改善報告書を改めて読んでおりますと、多くの会社が日本システム技術社と同等の内部統制レベルであることが理解できます。(たまたま株主から損害賠償請求訴訟を提起されなかっただけ、ということですね)

また平成17年ころからの報告書を読みながら「どっかで聞いたことがある会社だな」と考えておりましたところ、今年の内部統制報告書におきまして「重要な欠陥あり」と公表している会社が(やっぱり)多いんですね。この1年に会計不祥事が発覚した会社だけでなく、過去数年内にそういった会計不祥事が発覚した会社も、やはり開示体制に不十分なところを残しつつ事業を継続していることがよくわかります。(そう簡単には財務報告の信頼性が確保される体制にはならない、ということなんでしょうか。)先日ご紹介した日経シンポでもこの第三者委員会の在り方が話題になっておりましたが、なるほどこうやっていろんな報告書に接しますと、プリンシプルベースによる市場規制のなかでの第三者委員会の在り方のようなものも、おぼろげながら理解できるところであります。

さて、すでに何度かこのブログでもご紹介いたしました「内部統制ラウンドテーブル」でありますが、いよいよ来週(11月5日)となりました。予想以上の反響でありまして、ラウンドテーブルの傍聴券200枚のところ、すでに300名以上の申し込みがあるため抽選で傍聴券が配布されるそうであります。以前ブログでご紹介した際には、まだ報告者やオブザーバーの名前が決定しておりませんでしたが、(どういうわけか)私自身も法律家代表(いや、ブロガー代表?)として、このテーブルに参加させていただくことになっております。皆様方を高揚させるような意見なのか、それとも落胆させてしまう意見なのかはわかりませんが、私なりに2年目に向けた内部統制報告制度の課題について考えていることをそのまま素直に述べるつもりであります。コメントをいただいた「答えは風の中」さんや「いたさん」「tonchanさん」のご意見、そして「とも先生(池永朝昭弁護士)」から示唆いただいた見解なども参考にさせていただくつもりであります。

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コメント

山口先生
 はじめてお便りします。
いつも興味深く読ませていただき、多くのことを学ばせていただいております。
小生は、現在内部統制報告制度を担当しており、来週はラウンドテーブルを傍聴する予定です。
 さて、内部統制については、自助精神が重要であると考え、日々自主的な改善に努めております。
その観点から、2点考えていることがあります。
①インダイレクトレポーティングの推進
②重要な欠陥の用語変更は不要
 内部統制報告制度は、経営者が立ち止まって、自ら現状をSOX文書や評価結果を通して見つめなおす作業であると考えております。そのため、監査人がその行為をある程度尊重するという姿勢がある方がよいと考えます。
 用語については、現在の厳しい言葉の方が判断に迷いがなく、開示の有無を気にせず、軽微な不備の改善に没頭できると思います。
 稚拙な意見を申し上げ申し訳ありません。
 今後の益々のご活躍をお祈りしております。


投稿: tsukushi | 2009年10月28日 (水) 16時38分

tsukushiさん、ご意見どうもありがとうございました。このエントリーにはレスはつかないと思っておりましたが、かなり持論に近いところでのご意見をいただき、少しだけ勇気が湧いてきました。来週の参考にさせていただきます。
用語の変更に関してはどうでしょうかね?立案された方々は用語の変更は不要とされる方が多いようですが、企業実務家の方々は変更賛成派が多いように聞いております。他の報告者の皆様のご意見なども楽しみですね。

投稿: toshi | 2009年10月29日 (木) 01時40分

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