株主総会の議決結果、賛否票数開示義務化?
(TYさんのコメントを受けて、若干トーンダウンした内容にしております。さすが「BLOGOS」の編集者の方も、そのあたりを意識してか、私のブログのタイトルが修正してある・・・・・笑 いやいや、ホント実名ブログってコワイですね。。。汗)
10月14日の日経朝刊の記事によりますと、東証は株主総会の議決結果について、可決・否決の結果だけでなく、賛否票数まで公表するよう上場会社に要請する方針である、と報じられております。(来年6月の株主総会から実施を求める方針、とのこと)ただし、「要請」とありますが、義務とするのか、努力義務、とするのかはよくわかりません。
今年6月17日にリリースされた金融庁スタディグループ報告(~上場会社等のコーポレート・ガバナンス強化に向けて~)でも「議決権の行使を通じた適切なガバナンスの発揮」の一環として「上場会社等による株主総会議案の議決結果の公表」として賛否票数の開示が速やかに実行されるべき・・・と提言されており、これを受けた東証「上場整備プログラム2009」のなかでも「速やかに実施されるべき事項」として含まれておりました。なお、2009年の株主総会でも、議案への株主の賛否公表企業は31社(2008年は4社 大和総研さんの調査による)と大幅に増えておりますので、議決結果の賛否票数開示の流れは予想通りのところかもしれません。
ただ、この記事では「前日までの議決権の書面行使に関する結果の公表」なのか、「当日の株主総会の場における出席株主の議決権行使結果までの公表」なのかは定かではありません。たしかに投資家(株主)に対して透明性の高い経営を促す、という趣旨からすると、総会当日における議決権行使の結果までを(後日WEB上にて)開示することまでを要請することが妥当ではありますが、前記金融庁スタディグループでも議論されていたところですが、当日出席株主の賛否票数の開示となりますと、その迅速かつ正確な集計は非常にしんどい作業を伴うところであります。(たとえば先に書面で行使したり、ネットで議決権を行使した人が、委任状を渡して代理出席したり、本人自ら出席してきた場合の確認作業や、議案に対する修正動議がなされた場合の議決権行使書面による投票者の賛否の解釈など。まあ、現実には株主提案権が通りそうな株主総会では、実際に当日の集計作業までやっているわけですから、やれないわけではないとは思いますが・・・・・)また、前記スタディグループ報告でも、とりあえず前日までの議決結果の公表だけでも意味がある・・・との記載がなされており、当日の賛否票数まで集計することまで絶対に必要とまでは求められていないニュアンスが感じられます。
いっぽう、以前にも述べました通り、経営者と株主との対話を促進し、株主への説明責任を尽くすための「賛否票数の開示制度」ということであれば、前日までの議決結果の公表ということになりますと、たとえば大株主の議決権(10%)について包括委任状をとりつけている場合(たとえば当日の手続き的動議がなされた場合に備えて)とか、取締役たる創業者が当日出席株主として名を連ねているケースでは、(それらの票数が前日までの行使結果には含まれておりませんので)真実の議決結果の開示とは言えないはずであり、透明性を向上させるために説明責任を尽くした・・・とは言えないことになりそうです。
私が情報に疎いだけかもしれませんが、もし当日出席株主の賛否票数まで開示する・・・ということになりますと、株主総会決議取消事由が発生しないよう、それなりの準備が必要かと思います。私がいつも参考にさせていただいている「株主総会ハンドブック」(商事法務)あたりにも、このへんの対策は記述されていないようですが、三菱UFJ信託に在籍されていた中西先生(現 同志社大学教授)の「株主総会と投票の実務」(商事法務1,600円 税別)は、このあたりの投票実務の事務手続きをかなり詳細に解説しておられますので、参考になろうかと思います。(中西先生は、当然のこととして、当日の賛否票数も開示すべきである・・・との立場で執筆されているようですね。最近活用実績が伸び悩んでいるとされるプラットフォーム制度や、これからの電子株主総会の可能性などにも言及されており、コンパクトな本ですが、株式実務にとっては貴重な一冊であります。)
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コメント
toshi先生、はじめまして
賛否票数の公表ですが、上場整備プログラムを読む限りでは、東証が上場会社に公表を要請するとあることから、公表は義務ではなく任意だと思っていました。
東証の「要請」には様々な意味がありますので、一概には言えませんが…
投稿: TY | 2009年10月15日 (木) 09時24分
はじめまして。コメントありがとうございます。私も実は書いていて、そのあたりをどのようにフォローしておこうかと迷っていたところです。
TYさんのコメントを受けて若干修正をいたしましたが、「義務化」というのもいろいろありますよね。
たとえば「努力義務」というのも義務化だろうし(実施するかどうかは上場会社の判断に委ねる)、モデルを示して、公表しない場合にはその理由を示す・・といった方法もあるでしょうし。
ということで、たとえ公表が任意だとしましても、規制をかける、ということは間違いないものと思います。
投稿: toshi | 2009年10月15日 (木) 15時17分
投票数を公表するのであれば、予め、投票用紙のようなものを配布する必要があると思います。票を数える場合にはほとんどの株主総会でそうしていますね。
あと、努力義務に留まるということになると、株主提案に対して、10%に達している、いないで、公表非公表を恣意的に選択する危険があるのではないでしょうか?
http://blog.livedoor.jp/advantagehigai/archives/65370055.html
投稿: 山口三尊 | 2009年10月22日 (木) 01時57分
「どんな会社でも当日の賛否議決権個数を数えなさい」というのは狂気の沙汰としか思えません。株主総会は一人一票ではありません。頭数を数えて終わりという単純な話ではないのですから。
取締役選任は候補者ごとに投票するのでしょうか。そんなことになると、長時間総会に付き合わされる株主様のほうが先に嫌気がさすのではないでしょうか。ソニーさんのような会社は何時間かかるのでしょう。仮に、ソニーさんの総会で、「反対の人だけ投票してください」という扱いをしたら「手続に瑕疵あり」といったことになるのでしょうか。
逆に、JTさんのような、絶対に大株主が当日出席しているであろう会社はどうなるのでしょうか。前日までの数だと言って開示しても、真実には程遠い、何の意味のない数字でしかありません。
投稿: 実務担当者です | 2009年10月22日 (木) 22時06分
実務担当者の方のおつしゃることはよく分かります。
私も、アデランスの株主総会では、長時間待たされました。正直、苦痛でした。おそらく、現実的には、後日発表という形をとるのだと思います。
実務担当者さんご指摘のように、書面投票のみでは、実際の数値とかけはなれ、意味がないというのも事実ですね。
別件ですが、吉本の差止、訴状を見つけました。興味のある方はどうぞ。
http://blog.livedoor.jp/advantagehigai/archives/65370473.html
投稿: 山口三尊 | 2009年10月23日 (金) 10時58分
実務担当者です さんへ
海外では実際に当日投票分も含めて発表している国が結構あるので、一概に不可能だと決め付けてしまうのはいかがなものかと。現在の総会の運営のやり方の延長線上で考えた場合は難しいのはよくわかりますが。
やり方しだいかと思います。
投稿: TY | 2009年10月28日 (水) 20時29分
TYさん、こんにちは。
コメントをいただいた翌日に東証から上場会社代表者への「株主総会議案の議決結果の公表についてのお願いについて」と題するリリースがあったみたいですね。
賛否が明らかな場合には、前日までに把握した賛否の票数について公表することでも(とりあえずは)意義があること、とみるようですね。また、このあたりはまとめて総会準備に関連するエントリーのなかで採り上げてみたいと思っております。
投稿: toshi | 2009年11月 8日 (日) 00時44分
サッポロの総会に出てきました。
入り口で、投票用紙を配布されたのですが、「前日までの議決権行使書などで、会社側提案が可決され、スティールの提案が否決されることが明らかとなったので、投票用紙による投票は行わず、拍手によって投票する」ことになり、投票用紙は、結局出口で回収されました。
私自身は、過去に純資産割れ+上方修正のMBOに関与した候補者(落選)がいたので出席したのでべつに良いのですが、世間の耳目を集めている案件であり、また入り口で投票用紙まで配布しながらこれを使わないというのは、少し釈然としないものが残りました。
http://blog.livedoor.jp/advantagehigai/archives/65423108.html
投稿: 山口三尊 | 2010年3月31日 (水) 00時59分
三尊さん、こんばんは。ご報告ありがとうございます。
スティールの説明会に行かれたときのご報告を、そちらのブログで拝見しておりました。あの「社長解任劇」のT弁護士さんがスティール側についておられたのですね。
当日分の集計までやって、なにかのミスがあれば決議取消事由になってしまうかもしれませんので、「やめといたほうが無難」というところではないかと。
しかし検査役は選任されていなかったのでしょうか?
投稿: toshi | 2010年3月31日 (水) 01時58分