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2009年11月19日 (木)

株式買取請求権に関するつぶやき・・・・・

(本日は、単なる「つぶやき」にすぎませんので、BLOGOSに転載されるほどの内容ではございません・・・笑)

17日の日経「投資・財務」面にもありましたが、ここのところ株式の買取請求権行使が相次いでいますね。また、旬刊商事法務の論文も、レックスHD決定の検討、葉玉先生の「略式株式交換における株式買取請求権」、東大の大先生の「株式買取請求権制度の構造」そして、サンスター大阪高裁決定の検討といった具合に、毎号、著名な法律家の方々のレベルの高い論文が目白押しです。

今後も事業再編やMBO事案が増えるにしたがって、当然のことながら少数株主権行使の機会も増えてくるとは思うのですが、よくよく考えますと先に上げたレックスやサンスターの事件は(とても一般株主とは言えない)名高いY氏が申立てておられる事件(とくにサンスターは本人申立て)ですし、葉玉先生の事例も、たまたま葉玉先生が原告株主側で代理人を務められたことで浮かび上がった論点に関するものと思われます。

実際のところ、一般株主の方々にとって、やはり会社法の少数株主保護にからむ事件を本人申立てでやりぬくことはたいへんであって、訴訟要件の不備によって申立てが却下(つまり、本案のところまで行き着くことなく撃沈)されてしまうケースが多いのではないでしょうか。とりわけ株券電子化後の「個別株主通知」の対抗要件と株式価格決定申立て事件における訴訟要件(手続き要件?)との関係あたりはいまだ裁判上も確立されたものがないような気がしております。たしかに本案までこぎつけても、価格鑑定など費用のかかる問題点もあるかもしれませんが、とりあえず裁判所の後見的機能が発揮されるかもしれませんし、それなりに価格決定申立てをする意味があるかもしれませんから、なんとか一般株主の申立てが「まな板の上に乗る」ところまでは「やさしい司法」であってほしいものです。

ということで、少数株主権の行使とまでは広げずに、たとえば「やさしい株式買取請求権の行使」といった一般株主の方々のための本とか出版したら、(法人、機関投資家の方も含めて)それなりに売れそうな気がしますが、いかがなものでしょうか?あくまでも、本案審理を裁判所で展開できるところまでの「入口突破のための」本ですが、けっこう意義があるような気がするのですけど。。。大阪弁護士会は法律事務所向けに「法律事務の手引き」という本を(2年に1回程度の更新頻度で)出しておりまして、これが実に素晴らしいのです。書類の書き方から、裁判所に提出すべき書類や提出期間など、刑事、民事、家事事件を扱う弁護士に弁護過誤が起きないように、それはそれは丁寧に法律事務を解説してくれております。こういった手引き書のような本が一般株主による株式買取請求権行使にもあったら、ずいぶんとガバナンス向上に役立つのではないか、と思うのですが・・・。いかがなもんでしょうかね?(ぎゃくに本案のところで敗訴する事例が増えれば、マズイ結果になってしまいますかね?)

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コメント

価格決定がされると、仮に会社が何らかの事情により買取を拒否した場合、買取要件を満たす株式は買取代金請求訴訟で、買取要件を満たさない株式も株式を取得されてしまう以上、不当利得返還請求訴訟で回収することができるのではないかと思います。ある株式は100円、ある株式は1000円といったことはやはりおかしいですよね。

最終的には株主平等原則に帰着する問題だと思いますが。

価格決定は非訟事件なので、価格決定がなされただけでは株主側で債務名義を取ることが出来ません。価格決定後も個別株主通知云々で会社は依然として支払いを拒否できるのではないでしょうか?(そんなことをやってくる会社は悪意がありますが)

スクイーズアウトの場面では適切な株主の保護を考えてきちんと法令を整備すべきだと思います。今一般に行われているスキームはどうも脱法的な感じがします。

今の会社法は株主側に負担を求めすぎて数単位程度の株主では申立を行っても費用倒れになってしまいます。現実には訴訟費用を賄って余りあるほど株を持ってる人しか裁判まで起こせませんよ。

投稿: ターナー | 2009年11月19日 (木) 08時06分

そんな企画があれば、作成に参加させていただきたいです!
非上場ですが、一般株主が申し立てた株価算定事件を途中から代理人についた経験もありますし、今は東京ですが、近々大阪に鞍替えいたしますので。

投稿: Mic (一弁護士) | 2009年11月19日 (木) 11時23分

ターナーさん、ご意見ありがとうございます。なるほど前段は参考にさせていただきます。某会社が賛同表明したTOBに応じた方々の損害賠償請求訴訟が提起されていることはお伝えしましたが、このあたりも今後の検討課題なんでしょうね。
おそらく「脱法的な」イメージはかなりの人が持っているのかもしれませんね。実務上の要請のようなものもありますし。
訴訟費用を賄ってあまりあるほどの株を持っている人しか裁判を起こさないかというと、実はそうでもないようです。現実におひとりで申し立てを行い、あえなく却下・・という実例は(私が知っている限りでも)東京地裁8部でも散見されますし、相談事例も相当にあります。まあ、そもそも余裕のある方なら訴訟代理人を立てて申し立てをされる、ということなんだと思いますが。

投稿: toshi | 2009年11月19日 (木) 11時34分

時間的にコメントがかぶってしまいました。

大阪の法律事務所の東京事務所(東京支所)の方でしょうか?(笑)

情報をお持ちでしたら、是非守秘義務に反しない範囲でお教えください。

関西でも、会社法実務研究会とか金融法務研究会など、(私なんかよりもずいぶんと実務に精通された先生方による)立派な会合がありますので、そういったところで検討されるのもいいですよね。(大手の法律事務所さんはあまり熱心ではないかもしれませんが)

投稿: toshi→Micさんへ | 2009年11月19日 (木) 11時43分

すみません、「Y氏」との表記ですが、私は犯罪者ではないのですが・それに、私は公益のために活動しているのですけどね。笑。
利昭先生が、「「少数株主」=「被害者」ではない」と書かれてから約三年ですね(皮肉ではありません)。今日のエントリーを見て、一種の感動を覚えました。
こうやって、少しずつ世の中が変ってゆくのだなと思っています。
小さな水滴が、大河になりつつありますね。
先生のご活躍をお祈りします。
追伸・利昭先生の本を買わせて頂きました。大阪に行ったときにサインして下さい。ヨロシク。

投稿: 山口三尊 | 2009年11月20日 (金) 01時07分

>大阪の法律事務所の東京事務所(東京支所)の方でしょうか?(笑)

そうだとすると、かなり限られてしまいますね(笑)
残念ながら(?)そうではないです。

協力させていただけることがあれば、世の発展に尽くしたいと思っています。大阪の勉強会事情には疎いものですので、異動した際には、(もしお許しいただけるのであれば)是非お教えいただいたような研究会に参加させて頂きたいと思います。

投稿: Mic (一弁護士) | 2009年11月20日 (金) 11時05分

私は東京在住で今回「シャルレの訴訟」の原告の1人です。

ちょうど1年ぐらい前に山口先生には電話でご相談に
のってもらいました。その節はありがとうございました。

紆余曲折ありましたが今回なんとかこちらの言い分を
吟味していただけるフィールドに立つことができました。

先生にもこちらの立場をわかっていただけることになり
本当に嬉しいです。

日本という国は「性善説」に基づいている国だと思います。
ですから法律を悪用し悪いことをする「賢い人間」が
後を絶たないのだと思います。

「悪いこと」をしたら「責任」を取るのは日本という
法治国家であれば至極当然だと私は思います。

「正しい事をしている人間が報われる世の中」は「きれいごと
にすぎない」という事にならないように私は頑張るつもりです。

先生も「良心」に基づいてご活躍されることを心から願っています。

投稿: シャルレ株主の会 | 2009年11月21日 (土) 15時08分

株主の会さん、コメントありがとうございます。

シャルレの件はいろんな面で考えさせられるところが多く、いまも神戸新聞などを通じて注目しております。

たいへん申し訳ございませんが、コメントの一部につき、管理人権限にて修正をさせていただきました。最近はこのようなブログではございますが、多方面よりご意見を頂戴することも多く、それなりの配慮が必要となっておりますこと、あしからずご了承ください。

投稿: toshi | 2009年11月22日 (日) 01時51分

価格決定は非訟事件なんだから一応申立権が存在するものとして判断するのが普通じゃないでしょうか?民事第八部は普通じゃないのでやたらと訴訟要件を厳密に判断したがるわけですが。

非訟事件は買取代金を請求する「訴訟」ではなく、単に価格決定を求める非訟事件の申立なのですから、買取代金請求を申立人が本当に行いうるのかどうかの訴訟要件まで厳密に判断することは非訟事件での裁判所の権限を越えます。

公正な価格が決定されない限り株式会社に買取代金を請求することは出来ないので、ひとまず公正な価格だけ裁判所に決めてもらうのが価格決定の意義です。実際には買取要件を満たさない場合にも公正な価格で買取らせることが出来るかどうか、ここは腕の見せ所となるでしょう。

遺産分割審判みたいなものですね。一応遺産相続権があることを前提に分割の審判は行うが、遺産相続権の有無について争いがある場合は民事訴訟で争わないといけません。

投稿: ターナー | 2009年11月22日 (日) 19時52分

シャルレ株主の会さんの発言読みました。
弁護士は、依頼者のために働く職業ですから、訴訟においては、依頼者に「偏った」立場で行動するのは、ある程度やむを得ないと思います(あくまでも程度問題ですが)。
ただ、(1) 論文を書く時や(2)政府委員会の委員として発言する時は、公平・中立に行動してほしいと切に、切に、切に、願っています。

ターナーさんの発言は非常に鋭いですね。決定には執行力もないわけですので、却下するのはどうかと思います。カネボウ事件では、株主数を書き忘れた方が却下されています。
確かに、条文上は、「株主数を示して」ですが、反対の意思があることは明確ですので、株式数を書き忘れた場合は(1)全株買取とみなす。(2)少なくとも所有株中100株(単元株)は買取を認めるという扱いが理論的ではないでしょうか。

投稿: 山口三尊 | 2009年11月23日 (月) 10時27分

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