« セクハラ事件と企業の内部統制構築義務(その2-判例編) | トップページ | 証券取引所ルール変更への上場企業の対応は万全ですか? »

2009年11月 6日 (金)

「内部統制報告制度ラウンド・テーブル」に参加しました。

Cimg2662_640 11月4日は東京の全国社外取締役ネットワーク本部で「監査役の有事対応」に関するお話をさせていただき、その後はとも先生に夕食をごちそうになりました。(どうもありがとうございました。といいますか、ユニゾンキャピタル社のリリースみますと、とも先生はたいへんお忙しい立場だったようです。ご迷惑にならなかったのかと、ちょっと心配しております。)研究会では、ブログでは書けないような内容のお話なども(こちらからご教示を受ける目的で)お話させていただきましたが、大いに盛り上がりまして、とても勉強になりました。とくに現役の社外取締役、社外監査役の方々の(思いもかけず?)「熱い意見」に接することで、なんだかとてもうれしい気分になりました♪

そして本日(11月5日)は、市ヶ谷にあります公認会計士協会本部にて開催されました第1回内部統制報告制度ラウンドテーブルに個別報告者として参加させていただきました。真ん中に討論者(個別報告者)とオブザーバーが円卓を囲み、その周囲に90名、地下1階のホールに240名の方々が公開討論と個別報告を傍聴する・・・という、日本では珍しい会議でして、アメリカのSECの円卓会議に近いものとして開催されたものであります。(主催は日本内部統制研究学会と公認会計士協会、協賛が日本監査役協会、日本内部監査協会です)プログラムは以下のとおりです。

第1 回内部統制報告制度ラウンドテーブル

2009 年11 月5 日(木)
公認会計士会館
開会の挨拶 13:30~13:35

日本内部統制研究学会会長 川北 博

個別報告 13:35~14:45

企業関係者
高原 宏 武田薬品工業株式会社
仲田 正史 野村ホールディングス株式会社
吉田 稔 旭化成株式会社
原田 健 株式会社ミクシィ

監査法人関係者
小野 行雄 有限責任監査法人トーマツ
牧野 隆一 あずさ監査法人
新村 実 太陽ASG 有限責任監査法人
持永 勇一 新日本有限責任監査法人

その他市場関係者他
静 正樹 株式会社東京証券取引所
引頭 麻実 株式会社大和総研
山口 利昭 山口利昭法律事務所
町田 祥弘 青山学院大学大学院

オブザーバーからのコメント 14:45~15:30

三井 秀範 金融庁 総務企画局企業開示課
野村 昭文 金融庁 総務企画局企業開示課
平塚 敦之 経済産業省 経済産業政策局企業行動課
森 公高 日本公認会計士協会
松浦 洋 日本監査役協会 財務報告内部統制委員会
神田 幸尚 日本内部監査協会
藤沼 亜起 日本内部統制研究学会

休 憩 15:30~15:50

全体ディスカッションとまとめ 15:50~17:25
閉会の挨拶 17:25~17:30

日本公認会計士協会会長増田 宏一
公認会計士会館

ご覧のとおり、私は「市場関係者他」の「他」に属する者でありまして(笑)、企業会計審議会の委員でもなければ、実務責任者たる地位にある者でもございませんので、当然のことながら「はみだしっこ」であります。ただ、この制度につきましては、法律家も注目しているものでありまして、2年目に向けてなんとか法律家の関心をつなぎとめたい・・・という思いから出席させていただいた次第でありまして、それなりに私が出席した意味はあったのではないか、と自分で納得しているところであります。

傍聴された方はお聴きになったところだと思いますが、当ブログでお約束したとおり、私の個別報告の内容は、(登壇された方々にご異論もあったかとは思いますし、司会の八田教授からも「冷たい意見」と揶揄されましたが)経営者不正には(いまのところ)あまり機能する制度ではない、ということと、まだまだ経営者評価といいながらも経営者が参加されているケースは少ないので、(ややとんがった意見であることは承知のうえで)経営者参加に向けてのインセンティブ作りに関する提言、というところでありました。

中身につきましては、また本日の議論は文書として公開されますし、速報版はおそらく旬刊経理情報さんや経営財務さんなどで伝えられるところに譲りますが、この制度を日本で作ろう・・・と考えていた時期に立ち帰って、平成16年ころの会計不信が世間で大いに問題とされていた頃の気持ちを再確認したことには意味があったと思います。また、現実に準備段階からこれまでの企業実務における効用や課題などを真摯に語っていただけたことも有益でありました。ただ、「費用対効果」の検証というときの「効果」というのは、いったいどんな「効果」なのか(株主の利益?投資家の利益?)というところの議論の整理が必要ではないか、と思いますし、また「ルールとレベル感」に関する意見の相違には(関係者間において)まだまだ深い溝(意見の対立)があるなぁ・・・ということを実感いたしました。また「重要な欠陥」なる言葉が独り歩きして「重要な欠陥」を表明した企業が「欠陥企業」などと新聞で報じられることへの拒絶反応の強さから、どうしても用語を変更してほしい、との意見も強かったようであります。

とりわけ印象深かったのが、IFRS強制適用の時代を前にして、原則主義(プリンシプルベース)と内部統制報告制度の運用との関連性に関する議論であります。金融庁の三井課長が「内部統制報告制度とIFRSの任意適用条件」との関連性については上手に整理されておられましたが、そもそもこれからの内部統制報告制度の運用として、さらなるルールの細則化を求めるのか、レベル感の統一を求めるのか、というあたりの問題は、原則主義を採用するIFRSにおける会計基準の適用や解釈についても問題となるのではないでしょうか?やはり企業としては「重要な欠陥」を残してはいけない・・・という意識が強く働くために、「これを遵守すれば大丈夫」「これくらいのレベルが有効性のミニマムスタンダード」という意識で運用していきたい・・・という考え方が強いところであります。しかしながら、そこから脱却しなければ、そもそもディスクロージャー制度としてのコーポレートガバナンスを実践していく道が閉ざされてしまうのではないか・・・という一抹の不安をぬぐいきれないところであります。いずれにしましても、本日の円卓会議の議論をもとに、当局サイドで見直しが図られるものと思いますので、どのあたりの議論が集約されるのか、楽しみであります。

あと、これは東証の適時開示に関するルールでありますが、今後は内部統制報告書におきまして、経営者が「内部統制に重要な欠陥が存在」又は「内部統制の評価結果を表明できない」とする場合に、当該内容の開示が義務付けられることになりますのでご注意ください。(上場制度整備の実行計画2009ー東京証券取引所)実際に、内部統制報告書に重要な欠陥を表明した会社さんにおきまして、説明不足のために投資家に財務報告そのものに欠陥があるものと誤解され、株価がかなり乱高下した例があったそうですね。

私的には、初めてお会いする方々と、いろんなお話をさせていただいたことは貴重でした。金融庁の方々とは過年度の内部統制報告書を訂正する場合における金商法上の法的責任に関する議論をさせていただきましたし、東証の静さんとは、いま商事法務で連載中の東証ルール改正の実務について、かなり突っ込んだ実務取扱などについてご説明いただきましたし、引頭さんにもいろいろと勉強させていただきました。また、持永先生にも少々無理な「お願い」をさせていただきました(笑)。ちなみに、冒頭の写真は討論者に授与されたトロフィー(クリスタルガラス)であります。(謝礼は一切ございませんので、謝礼に代わるものだそうです。これもアメリカの円卓会議と同様とのこと。また誤解のないよう申し上げますが、傍聴された方々にも、内部統制報告書関係資料完全版が配布されまして、これ一冊で傍聴券以上の費用がかかっております。したがいまして、傍聴された方々のチケット代金が、このクリスタルトロフィーの製作費に代わった、というものでは決してございません。)今後もまた円卓会議が続けられそうでありますが、法律関係者も、やはりどなたか内部統制報告制度に関心のある方が、これからも最低1名は出席していただきたい、と願っております。とりあえず今回出席させていただいたことは、日弁連(法務財団)において還元させていただくつもりです。栄誉ある第1回の円卓会議に(図々しくも)登壇させていただいたことにつきまして、関係者の皆様に厚く感謝申し上げる次第であります。

|

« セクハラ事件と企業の内部統制構築義務(その2-判例編) | トップページ | 証券取引所ルール変更への上場企業の対応は万全ですか? »

コメント

仕事の関係で参加できず、先生の勇姿を拝見できず残念です。(笑)
次回、東京へおいでになるのは、18日でしょうか。こちらのほうは、アナリストのはしくれとして、拝聴させていただきます。

投稿: 迷える会計士 | 2009年11月 7日 (土) 13時31分

迷える会計士さん、こんばんは。
「勇姿」どころか「幽姿」の有様でした(笑)

ご指摘のとおり、18日にアナリスト協会で講演をさせていただきます。今回のラウンド・テーブルよりも、こっちのほうがよく皆様方から「出るんですね」と声をかけていただいております。レジメの締め切りがまた迫っておりますので、ちょっと準備がたいへんですが・・・(^^;

役不足ですんません・・・・・笑

投稿: toshi | 2009年11月 8日 (日) 00時48分

地下の会場からスクリーンを通して横顔を拝見させていただきましたが、
toshi先生のご意見は、なかなか立派なものでした。

問題点を整理して多少なりとも見直してもらいたいというのが、
私の希望ではありますが、どうなんでしょうか。

先生のご著書「ビジネス法務の部屋」41頁にあるように、
経営者にとってインセンティブが働く制度設計が大切であり、
経営者自らが進んで行う内部統制評価でないといけないかなと思います。

コンプライアンスと同様に、経営者が口で重要と言いながら、
実際はアリバイ作りとならないことも必要かと思います。

投稿: YAMAYA | 2009年11月 8日 (日) 23時26分

コンピュータ屋です。
ご無沙汰しております。
私は先生の雄姿を拝見しました。
直接ではなかったのすこし残念でした。

今回のラウンドテーブルは
私の今までの思いのひとつがすこしマッチしました。
ICMS(統合的内部統制マネジメントシステム)につながる話が数人の方のコメントにありました。

「本制度を通じて「内部統制」が財務報告の信頼性のみにフォーカスされたきらいがあるが、事業運営、コンプライアンスおよび資産の保全を含む幅広い概念であることの理解を定着してゆく必要がある。」
とか
「一方、財務目的以外の内部統制も、企業にとっては重要な課題であり、現状の制度は企業の内部統制全体の整備の観点では障害となっている。」
など

私も
「制度対応とは言え、「財務報告の信頼性確保」のみを目的にした内部統制では、企業活動そのものにたいして役にも立つわけではないし、内部統制としてのバランスも悪い。」
等勝手なことを言っていました。

これからもこの辺のところを議論していただけることを期待しています。


投稿: コンピュータ屋 | 2009年11月 9日 (月) 13時01分

今回のラウンドテーブルはSECに倣ったのでしょうが、内部統制報告制度の関係者が一同に会し「総括と提言」を議論したこと自体大変有意義なものでした。山口先生を始めとして初年度の実施状況を踏まえた率直で前向きな意見も多く出されたことは有益でした。(報告要旨集にある経済産業省の作成資料は企業の率直な声を非常に要領よくまとめており必見)ただ参加者に聞いたところでは、監査法人の一部には当たり障りのない一般論に終始し、真摯な「反省と総括」の姿勢が全く見られず失笑を買ったところもあったようで、誠に残念です。代表社員クラスの幹部がいかに現場と遊離しているかを露呈したとも言えます。いずれにしろ今後制度見直しに向け提言がどう具体化されるか厳しく注視したいと思います。

ラウンドテーブルに関連して、ある会計士の方のブログに次のような意見が述べられていました。「近年、財務諸表監査では『職業的懐疑心』が強調され、厳格監査が求められているのに対し、財務諸表監査と一体で行われる内部統制監査では、『職業的懐疑心』をできるだけ発揮しない、保守的でない対応が求められているようです。こうしたねじれ現象は、いずれ財務諸表監査の方にもよくない影響を与えるのではないでしょうか。」(会計ニュース・コレクター)
会計士の方々の懸念される気持ちは理解できますし、現場ベースでは戸惑いも大きいはずです。これはかなり本質的な問題を孕んだ問い掛けのように思えます。裏返せばプロフェッショナルとして真面目に熱心に取り組んだ会計士ほど「悪者」扱いされかねないということを示しています。これは「厳格」監査という場合の基準は何かという問題と繋がっているのではないかと思います。本制度での内部統制評価及び監査の基準は、企業会計審議会の「意見書」(及び補足としての金融庁のQ&A)であり、それは財務諸表監査の諸基準とは相当異なったものであり、共通する部分はあるものの一致しない場合は当然前者が優先されるべきものです。初年度の現場では、自法人マニュアルや財務諸表監査の一般的な基準をベースに「過度に保守的な」=「厳格」な対応を要求する監査法人に対して、会社側が「意見書」&「Q&A」を楯にして反論を展開する場面がしばしば見られました。会社側が監査法人に対して、「意見書」の「厳格」な適用を要求して闘ったというわけです。とは言え二つの監査が一体で実施され、かつ同じ「監査」レベルが要求される中でのこの食い違いは現場に混乱をもたらし、結果的に形式的な手続きだけは整え実質は見ないという制度の形骸化を引き起こしかねません。元々財務諸表監査の対象となる財務数値と内部統制監査の対象の非定型的なプロセスたる内部統制は監査対象として本質的な違いがあり、その評価手法や保証レベルは格段の差があってしかるべきものと私は考えています。それを同じ「監査」レベルとするところに無理が生ずる大きな原因があるのではないでしょうか。(なお「意見書」もまた財務諸表監査の考え方や手法を必要以上に取り込んでいる部分があり、混乱に拍車をかけており見直しが必要ですが)従って内部統制評価は各社の状況に応じて会社の主体性を出来るだけ尊重して裁量度を広く持たせる一方で、外部監査人の監査は「監査」でなく、「レビュー」レベルとすることが、こうした「ねじれ」をなくす方途ではないかと思っています。その枠の中では当然「職業的懐疑心」は最大限発揮されねばならないということではないでしょうか。一部には「レビュー」にすると責任意識が低くなり監査の突っ込みが甘くなってしまうとの意見があります。少なくとも本制度に関する限りは逆で、「監査」だからこそ形式的な手続きによる検証作業に拘泥せざるを得なくなる一方、明らかな欠陥(典型は誤謬や不正発生の事実からの跡付け)以外はプロセス自体の問題点には簡単に踏み込めないというのが現実の姿です。商売を抜きにすれば会計士の方々もそちらを望むのではないでしょうか。「レビュー」の件はラウンドテーブルの報告要旨集を拝見すると企業側出席者のお一人が主張されていますが、あまり反応が無いようなのが大変残念です。 

投稿: いたさん | 2009年11月14日 (土) 01時31分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「内部統制報告制度ラウンド・テーブル」に参加しました。:

« セクハラ事件と企業の内部統制構築義務(その2-判例編) | トップページ | 証券取引所ルール変更への上場企業の対応は万全ですか? »