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2009年11月18日 (水)

内部統制(J-SOX)廃止論に対する私見

本日(17日)の日経新聞「大機小機」では、「制度いじりはやめよ」というタイトルで、なかなか刺激的な内容であります。鳩山政権に期待したいのは「誤った企業統治制度を企業に強いたことによる傷の癒し」であり、その一例として「無駄な仕事ばかりをふやし、性悪説的な経営を強いて日本企業の強みを破壊してしまった内部統制制度を速やかに廃止することである」と述べられております。つい先日、某大手監査法人の代表社員クラスの方も、同様の意見を熱く語っておられました。日本企業の強みを破壊してしまうほどの効果が内部統制報告制度にあったのかどうかは定かではありませんが、先日のラウンドテーブルにおきましても、制度上の課題として、過剰な対応が問題視されていたことは事実であります。ただ、私自身はこの制度がそもそも悪いのではなく、制度の運用に問題があるのでは、と考えておりまして、まだPDCAの「PDC」までしか運用されていないのに、どうして廃止論が出るのか疑問であります。(そもそも内部統制制度が「性悪説的」な発想で作られた・・・という認識が広がっていること自体、制度運用において誤っているところがある証拠であります)

先日来お伝えしておりますように、私はここ数週間で約80本ほどの「不適切な会計処理」に係る社内調査委員会、社外調査委員会の報告書を精読いたしましたが、不祥事の原因分析と再発防止策にはほぼ共通した傾向がみられまして、不祥事の原因については①機会の存在(従業員や役員が不祥事に手を染めるチャンスが存在すること、たとえば長期間同じ職場に居座っているとか、ダブルチェック機構がないとか、職務分掌が整備されていないとか)と②独立したモニタリングの不備(たとえば内部監査が機能していないとか、監査役がきちんと監査していないとか、子会社管理ができていないとか)、そして再発防止策も、機会の防止とともに独立的モニタリングの充実があげられております。そして結局のところ、過年度の決算を訂正しなければならないほどの重要な虚偽表示に至ったもっとも大きな要因は、このモニタリングの不全による損害拡大であります。不祥事といえば、不正にせよ誤謬にせよ、この機会の存在のほうに目が向きがちでありまして、内部統制システムの構築にしても、この「穴をふさぐ」ことが注視される傾向があります。しかし(私の見解ですが)、穴はどんなにふさいでみても、人間の組織である以上はまた別の穴ができるわけであります。(組織には人的資源にかぎりがありますから当然ではないでしょうか)むしろ必要なのは穴があいたときに、誰がその穴を発見するのか、その穴を利用して不祥事が発生していれば、それを誰が早く発見するのか、発見した不祥事を隠さずにきちんと社内で対応できるのか、というところの問題対策でありまして、ここはどう考えても「情報監査」を中心とする財務諸表監査だけでは対応は困難であります。したがいまして、内部統制の全社的統制に関する評価に期待されるところであり、ここをどうやって開示規制たる内部統制報告制度の中で運用していくのか、というところにこそ今後の課題があるものと思っております。

たとえば最近の例でいえばユニオンHD社の場合、経営トップの方は重要な業務執行を独断でされており、取締役会は全く開かれていなかったそうであります。(監査役の方々はどうしていたのだろうか・・・との疑問も湧いてきますが・・・)元社長さんは監査法人さんから議事録の開示を求められると、勝手に議事録を作成して、これを監査法人さんに開示していたとのこと。(ニュース報道より)監査法人さんとしては、財務諸表監査においてはこの議事録を形式的にチェックすれば足りるのかもしれません。しかし、不正発見への期待が高まり実態監査まで求められるとするならば、たとえば監査役会と協議をしたり、他の取締役からヒアリングをするなどが必要になってくるわけで、「開示規制」である以上は、そういった実態監査のなかで「怪しい」と感じたその評価結果を意見として開示し、投資判断に活かせてこそ「ディスクロージャー制度による企業統治」と言えるのではないでしょうか。また監査役さんからみて「おかしい」と感じたガバナンス上の問題があれば、これを経営者と協議して、より慎重な全社的統制への評価を経営者にしてもらい、これを開示することが「ディスクロージャー制度における企業統治」と言えるのではないでしょうか。先の大機小機では経営の透明性を追求することが、企業の資産を明るみにしてしまったり、誰にでもわかりやすい経営手法を求めることになり、これでは企業は戦えないとのことであります。しかしガバナンス論でいわれる「透明性」とは、そもそも株主に自己責任を問えるだけの情報開示・・・という意味ですから、とくに経営ノウハウを開示するものでもありませんし、もしわかりにくい経営手法で勝負するのでしたら、あとは経営者がIR活動によって説明責任を尽くせばよいだけの話であります。また会社資産の問題にしても、今年の不正競争防止法の改正をみれば明らかな通り、営業秘密等の資産管理は別途法律によって対応が進んでいるわけでして、「透明性」とはあまり関係のない話のように思います。

会社法上の内部統制の話は別として、金商法上の財務報告に係る内部統制報告制度は、日本には珍しくプリンシプルベースの規制手法であります。一般に公正妥当と認められる内部統制評価の基準に準拠して、経営者が有効性に関する自己評価をして、これに監査人が意見を述べる、というものであります。費用対効果に問題があるとされておりますが、この「効果」が個々の会社の業務の有効性や効率性、不正リスク管理といったところだとすれば、もう効果の検証は済んだのでしょうか?この「効果」を資本市場の健全性向上と捉えるのであれば、本当に費用対効果が見合わないことへの検証は済んだのでしょうか?私はとくに監査法人の人間でもありませんし、J-SOXコンサルティングの立場でもありませんので、とくに内部統制報告制度が廃止されても困らない立場ではありますが、ここでプリンシプルベースでの規制手法に対応できないとすれば、今後のIFRSの強制適用は内部統制報告制度の比ではないと思われますので、企業の会計制度の変遷による疲弊度は著しく大きなものになってしまわないでしょうか。内部統制もIFRSも、開示規制による制度であることの意味(違反した企業にはいったいどんなペナルティが待ち受けているのか?)を、もう一度きちんと把握しておく必要があると思います。内部統制報告制度が過度に企業を疲弊させているのが現実だとすれば、あらためて制度運用上の問題点を修正すべきである、と考えております。

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コメント

山口先生

先生ならば、大機小機を取り上げるだろうと思っていました。運用面の問題という先生のご意見にまったく賛同です。
問題の発生を事前に防止できるように制度を組むことは、ある意味で当然なのですが、それを怠っていても外部からは分からないので、何らかのチェックプロセスを入れることは合理的と思われますが、どうしてあのような過激な議論が堂々と論じられるのでしょうか。どこに問題があるか、という分析をした方がより現実的であり、もっと有意義な議論ができそうです。制度を完全に廃止してそれで終わり、というほど簡単に解決できるものではないと思われます。廃止によりもっと悪い状況になった場合に、どうするのでしょうか?もう少し、分析をしたうえで、冷静な議論を期待したいですね。

投稿: 辰のお年ご | 2009年11月18日 (水) 12時23分

DMORIです。
山口先生ご意見のとおり、日本企業の強みを破壊してしまったのは、J-SOXの制度のせいではなく、運用に問題があるでしょう。
金融庁は内部統制部会の提言も含めて、「身の丈サイズの内部統制でよい」「監査法人は重箱のスミをつつく監査をする必要はない」と言い続けてきました。また、内部統制のために、経営者がビジネスの局面で必要な決断を萎縮しなくてよいように、そうした経営判断は内部統制の範囲外で可能、といったガイドまで実施基準の中に入れています。
ビジネスの闊達性が侵害されて、縮小均衡に陥ってしまったと思う企業があるならば、それは内部統制制度の不勉強、または経営者の胆(きも)の座りができていないことが原因です。

民主党政権でJ-SOXを見直してほしいとの意見も、おもしろいですね。
鳩山首相の資産管理問題では、管理の不備が次々と露見しています。「恵まれた家庭に育ってしまったので、お金の使い方を厳しく管理する意識が弱かった」などと反省している始末です。こうした鳩山首相の資金管理団体にこそ、必要なのが内部統制なのです。金庫のカギを1人にまかせっぱなしにせず、牽制機能を整えて、経営者の鳩山さん自ら、ときどきでよいから、帳簿や決裁伝票のモニタリングをする、それだけで会計不祥事は格段に発生をおさえられるのです。
そもそも鳩山さんほどの資産を保有して政治活動をしていれば、これは中堅企業クラスの事業規模であり、秘書や経理担当者を個人レベルで信用して任せていては、統制は無理です。

鳩山さんくらいの資産家は、本気でこうした上場企業レベルの仕組みを取り入れたらどうでしょうか。

投稿: DMORI | 2009年11月18日 (水) 13時04分

 こんにちは。筆者の猪突さんは、株主権の強化に反対〔株主権が叫ばれるようになってから日本企業の業績は低迷した〕(6月11日)、内部統制システムに反対(8月28日の本欄でも)、小泉政権下での雇用の柔軟化には反対だが、他方、民主党による監査役会に労働者代表を入れることにも反対〔ドイツの鉄鋼業界を見よ!〕、経営の透明化(おそらく独立取締役等の義務付け等を指している)は不要(以上、11月17日)との論調ですね。
 原因と結果の因果関係のとらえ方がかなり独特な方であるように思います。

投稿: おおすぎ | 2009年11月18日 (水) 19時44分

「大機小機」の意見はいかにも「日経」らしく一部の(多数の?)企業経営者の本音を代弁したものですが、あまりに短絡的で賛成できません。こうした制度が必要となった背景たる企業不祥事への「総括と反省」の姿勢が根本的に欠けています。ただこうした意見は決して特異なものではなく、経営者に限らず内心で拍手喝采するサラリーマンは多いはずです。やはり現在の制度のあり方に問題が多いからで、真摯な総括と対応がない場合は、更にこうした暴論が勢いを増す虞があります。山口先生が論ぜられているように、有効性と効率性の観点から冷静に効果と問題点を検証して、「意見書」の修正を含めて運用を思い切って見直すべきかと思います。

投稿: いたさん | 2009年11月18日 (水) 23時43分

制度そのものを廃止せよという論者は内部統制の効用を知らないのだと思います。

かといって、運用に問題がある、とおっしゃる“運用”が、現場レベルの運用だけを指すのでしたら、それも少し違うように思います。
制度を作り運用に下ろす段階で混乱や誤解を招いたことは事実です。混乱や誤解がなかったならば、後手後手のペーパーは必要なかったはずです。対応が後手に回ったために、コンサルの跋扈を許してしまった一面もあります。これらの余波はまだ解消してはいないと感じています。つまり、「制度の運用」にも問題があり、制度運用の問題が現場運用の問題の一因になっているのだと思います。

今の制度が正しい方向で動いているかどうかを検証する作業は必要だと思います。単純な廃止論者は論外ですが、建設的かつ批判的に検討する役割を誰かが担わなければならない。

企業がバカだから問題なんだ、というのでは制度そのものが良くなっていきません。

投稿: JFK | 2009年11月18日 (水) 23時59分

監査法人に重箱のスミを実際に突付かれ、くだらない論争になることが多々あり、企業も監査法人も無駄な労力を使ったのは確かだと思う1年目。では、どうやって無駄を無くし、企業が健全な経営を出来るようにするかが内部統制制度の今後の課題と感じています。慣れてくれば、必要なことがハッキリと見えるのでは?5年後くらいに制度の見直しをすれば良いのではないでしょうか?

投稿: フトッピ | 2009年11月19日 (木) 12時09分

みなさま、コメントありがとうございます。

「鳩山政権に期待する」とありますが、民主党公開会社法PTの案をみますと「内部統制を強化する」とありますね。内部統制を強化することが企業統治を向上させる・・・と明記されておりますので、どうも廃止案にはいきつくところではないと思うのですが・・・
おおすぎ先生の検索結果をみて、なんとなく納得がいきました。

投稿: toshi | 2009年11月20日 (金) 02時19分

前に投稿した通り、「大機小機」の結論には到底賛成できませんし、あくまで制度の趣旨を生かす前提での抜本的な見直しが私の立場です。ただし、こうした意見を内部統制を理解していない一部の人たちの独特で特異なものとする見方にも強い違和感を覚えます。決して侮ったり、甘く見たりすべきではないと思います。
この意見に同意、共感する人にも色々な立場、タイプがあるでしょう。第一は企業経営者で、表立ってはなかなか言わないでしょうが、本音のところでは多数派であると推定しても的外れではないでしょう。ただこれは内部統制など利益を直接生まないものにはあまり金をかけたくないとか、内外の監視が自らの経営を縛る恐れがあることへの懸念とかが動機で、多くの企業不祥事が経営者自身によって惹き起されてこうした制度を作ることになったことへの「総括と反省」に乏しいものも少なくないと思われます。むしろより重要なのは、企業内で大なり小なり内部統制に関ってきた人たちです。少なくとも私の知る限り、内部監査部門等内部統制関連の業務の実務経験が長く、かつ見識の高い人ほど本制度に批判的な見解を持っています。この人たちも立場上の影響を考えてあからさまには口には出しませんが、内々の本音の話し合いの場ではこの人がとびっくりするほどの批判的意見を述べられるし、はっきりとこの制度は不要と明言する人も少なくありません。むしろ内部統制に関わった経験の浅い人たちの方が本制度を前向きに受け止め、素直に意義を強調する傾向にあります。更に一般のサラリーマン層では、責任のない気楽な発言かも知れませんが、この制度は廃止すべきと考えている人の方が多数だと推定する方が事実に近いでしょう。学者、有識者でも、例えば雑誌「世界」10月号の上村達男教授と原丈人氏の対談でも痛烈な批判がされていました。
ここで想起するのが、8月28日の日本経済新聞に載った「内部統制制度、監査法人は弾力対応を、経産省、金融庁に要請」という記事に対する反応です。間接的な情報ですが、直後の29日に開かれた内部統制研究学会でとんでもない誤報だと日経に批判が集中し、まともに取り上げられなかったと聞きました。確かに記事に正確性が欠けていたのは事実としても、全くの誤報でなかったことは、「ラウンドテーブル」の経産省資料を見ても分ります。ここで紹介されている経産省の見解の元になった二つの企業アンケートでの企業側の強い批判があの記事の背景でしたが、残念ながら無視に近い扱いになり、制度のあり方への根本的批判なしにどう運用を改善するかだけの議論が主流になってしまいました。
先般の「ラウンドテーブル」は大変有意義ではありましたが、関係者の発言の中には、こうした潜在的であるが広範かつ根深い批判、不満から遊離し、狭い「内部統制サークル意識」に囚われた、あまりにも危機意識に欠けたものが少なくなかったというのが、率直な私の感想です。

投稿: いたさん | 2009年11月21日 (土) 23時20分

大杉先生のブログから流れ、よく拝見するようになりました。
内部統制については、社内での構築段階で深く関与した段階から気になっていたのですが、理念については山口先生ご指摘のとおり問題があるとは思っていません(近い手法は、労働安全の分野でも見られます)。
問題点は、(1)内部統制構築がドキュメンテーション至上主義的になってしまったこと、(2)そうしないと監査法人が評価しないこと、(3)ダイレクトレポーティングではないというモデルにもかかわらず、実際の監査はほぼダイレクトレポーティング型であること、と感じています。
些末な議論ではありますが、権限者(例えば社長)が自身の出張時の旅費精算をする場合、権限者が入力し、権限者が自ら承認することは内部統制上問題だ、という指摘を受けたことがあります。会計士曰く、「秘書が入力すれば統制が効く」と。原理原則という意味で指摘は分かりますが、社内のヒエラルキーなどを考えた場合、やや滑稽な指摘であり、散々会計士と議論をした覚えがあります(最終的には、J-SOX上、重要な勘定に関わらないという理由で、フェードアウトさせました)。
一事が万事、と申し上げる気はありませんが、こういった原理原則から踏み出せない発想が、諸々の批判につながっているように思います。

投稿: K.C. | 2009年11月22日 (日) 19時08分

toshi先生

先日は、名刺交換だけでお話する時間はありませんでしたが、次回機会がありましたら意見交換などさせていただきたいと思います。

内部統制は個別の企業からすると、費用は定量的に明確である一方、効果は定量的には定かではありませんから、どうしても負担を感じてしまいますね。内部統制制度の効果をマクロ的にみた場合、内部統制制度導入の前後で、不正の発覚件数が有意に減少していれば、一定の評価をして良いのではないでしょうか。
今年度上半期の不正発覚件数は21件で(個人的に収集しているデータですので多少の漏れはあるかもしれませんが)、下期に入っても6件の不正が発覚しており、今年度1年では40件くらいと見込まれます。この水準ですと、06年度66件、07年度64件、08年度52件に比べて一応は減少したとは言えるでしょう。あと数年見てみなければ断定的な結論はだせませんが、傾向としては減少するでしょうし、またそうあらねばなりません。

今年度発覚した不正の多くは、前年度に存在していたものであり、前年度において実施された内部統制評価において、何故見逃されてしまったかという点についても論点となるでしょう。今後、不正が発覚した際に設置されるであろう社内(外)調査委員会においては、この点についても十分に検証してもらいたいと思っています。

投稿: 迷える会計士 | 2009年11月23日 (月) 17時02分

いたさん、いつも現実を直視したコメントありがとうございます。本当に「なかよし倶楽部」にならないように気をつけます。いろいろと論戦していても、結局は狭い視野での議論だったりするんですよね。自戒いたします。

KCさん、はじめまして。コメントありがとうございました。
秘書が入力すれば・・・の件、ご指摘のとおりかと思います。結局は、この制度もガバナンスの議論と同様、どこかでバランスを考えなければ「へんな方向」に行ってしまうような気がします。また、そのバランスを考えること自体に、私は意味があるように思うのですが。

迷える会計士さん、コメントありがとうございます。
また、先日は名刺交換をさせていただき、ありがとうございました。(すぐに、この人が「迷える会計士さんだ」とわかりました)
西武鉄道事件、日興コーディアル事件、IHI社の件など、大型の有価証券報告書虚偽記載事件が少なくなった印象を持っています。会社もそうですが、監査する立場の方々の意識も急速に変わってきている点もあるのではないでしょうか。

投稿: toshi | 2009年11月24日 (火) 11時17分

toshi先生
 tonchanです。ご無沙汰しております。

 本来ですともっと早くコメントすべきでしたが、往査もありやっとコメントすることができました。

 ご存じの通り私は小さな上場企業でひとりでJ-SOXの担当をしております。
全社的な統制から業務プロセス、IT全般統制の文書化、評価、監査法人対応を
ほとんどひとりで行ってきました。
その経験からあえてJ-SOXインパクトを論じると以下の通りです。
1.企業の為になっているか?
 少なくとも内部監査の重要性を理解する一助にはなっています。また、
リスクアプローチを実践するとJ-SOX以外にも応用できることがよく
わかりました。
2.J-SOXの本質は何か?
 「全社的な統制」と「決算財務プロセス」により従業員の内部統制意識が向上したのが本質かもしれません。
3.コストは?
 当社では私一人の人件費+出張費くらいではないでしょうか?

 以上の点から、J-SOX対応とはもともと企業が投資できる範囲で
どのように対応していくかを決定する部分、企業別のフレームワークが
最も重要だと思います。
このフレームワークを作り込むのが現在の課題だと認識しております。

toshi先生
 私なりのフレームワークを作成しましたので、また評価をお願いします。

投稿: tonchan | 2009年12月 1日 (火) 11時19分

久々のエントリーです。

内部統制報告制度が過度に企業を疲弊させている?
とんでもない曲解です。内部統制(J-SOX)を単に法規制対応と思って取り組んできた企業や担当者は、確かにコストと労力を費やして、効果のない制度だと考えていることでしょう。特に、過去に財務諸表を訂正するなどの重要な不正や不祥事を経験したことのない優良企業では、「何を今さら」と考え、内部統制廃止論の意見が出るのが普通だと思います。
当社にしても、内部統制の導入当初から負担感とデメリットしか感じなかったのも事実であり、そのような状況(担当者の心境を含む)の中では、整備や評価取組みも遅々として進みませんでした。それでも、外部のコンサルも使わないで、細々と整備をやってきましたが、何とか無事に「内部統制報告書」を提出することができました。
しかも、初年度の内部統制評価を終えた頃より、経営者から担当者まで「内部統制っていいかも!」と、意識が変わってきたように思います。
それは、内部統制整備の取組みにおいて、デメリットだけではなく、それ以上のメリット(*)があることを認識できたからだと考えています。
もしかしたら、型にはまった形式的なコンサルを使わなかった(これが最大のメリット?)ことが良かったのかも?

*内部統制のアセスメントを通じて、業務の標準化や見える化を進め、不備事項の是正や業務改善につなげることができた。
*リスクアプローチやPDCAなど、日常的なマネジメント活動の重要性が認識でき、内部統制が継続的な取組みのきっかけになった。
*内部統制における牽制等のコントロールの整備に加えて、過剰品質やムダな業務の洗い出しも行うことができた。

また、J-SOX2年目以降の取組みとして、業務の有効性や効率性に関するモニタリング体制(内部監査)の整備と改革に取り組んでおり、付加価値を創造できる監査を目指していますが、監査法人による形式的な内部統制監査については、コストと時間を費やしている割には、企業にとってのメリットは少ない気がします。やはり、当初から言われていたように、制度自体の見直しよりも運用として監査法人による内部統制監査手法の見直しが、近々の課題ではないでしょうか?

投稿: KY | 2009年12月 2日 (水) 10時45分

tonchanさん、KYさん、力のこもったコメントありがとうございます。
ずいぶんと勇気をもらいました。tonchanさんのご依頼がいくつかございますので、宿題とさせてください。

なお、日本取締役協会のWGに参加しているところですが、会計士、弁護士の一年目報告書の研究を主眼として、かなり有益な議論がなされています。ここでお話できる範囲で、またエントリーとして研究報告をしたいと思っておりますので、またご意見等ございましたらお聞かせください。

投稿: toshi | 2009年12月 5日 (土) 02時16分

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