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2009年12月23日 (水)

日本興亜損保・総会開催禁止の仮処分再度の申立て(クリスマスラウンド)

(23日午後:追記あり:株主有志の会のWEB更新を教えてくださった方、ありがとうございます)

先日、朝日新聞の「ひと」で紹介いただいたときの記事に「深夜の開示は蜜の味」といったフレーズが引用されておりましたが、22日の午後10時をまわった時点で、日本興亜損保の代表者を債務者とする株主総会開催禁止の仮処分命令申立てがなされた旨、日本興亜損保よりリリースされております。先日、6名の株主より本日開催予定だった日本興亜損保社の臨時株主総会について、その開催を禁止するよう求める仮処分申立てがなされ、これを30日に延期することが決定された後に取り下げられましたが、本日ふたたび(おそらく同じ株主の方々だと思いますが)30日の臨時株主総会の開催禁止を求める仮処分命令申立てが東京地裁に提出されたようであります。(いちおう予想されていたところではありますが、いよいよ第2ラウンド開始ということですね。)

日本興亜損保の真の発展を願う株主有志の会のWEBページにおきまして、(現時点では)このたびの仮処分命令申立書は公表されておりません。このたびの申立内容がリリースされております(一部未公表部分あり)。そこで私個人の推測ではありますが、仮処分命令申立ての被保全権利は(やはり)株主による取締役の違法行為差止請求権(会社法360条)であり、その根拠は日本興亜損保の臨時株主総会の招集権限を有する代表取締役の総会招集手続きに著しい不公正又は法令定款違反がある、ということではないかと思われます。具体的には、従前記者会見において「招集通知の参考書類として添付します」と述べていた(統合比率の適正性を判断するための)資料が添付されておらず、実際には会社のWEBページで開示されているのみである点や、第三者算定機関に対して適正な統合比率の算定を依頼した際に、日本興亜損保の株主が不利になるような条件を付して算定依頼をしたことから、取締役会は一般株主と利益の相反する行為を承認したものとして、瑕疵ある取締役会決議に基づく総会招集手続きがなされた、といったところではないかと想像いたします。(もし違っておりましたら訂正いたします) 追記:推測していた点も一部含まれておりますが、実際にはかなり詳細な根拠が記載されております。招集手続の瑕疵以外に決議方法に重大な瑕疵がある・・・という争点については存じ上げませんでした。ご関心のある方は、上記「有志の会」WEBページをご覧ください。

本日、統合の相手方である損保ジャパンの臨時株主総会では、統合を承認可決したことからみて、統合比率そのもの瑕疵を問題にしてしまってはあまりにも影響が大きいものとなりますので、日本興亜損保の株主の利益侵害という点だけに絞って主張を展開されるものと思われますし、また損保ジャパンの「統合承認」という事実がはっきりした以上、日本興亜損保の総会開催を禁止する以外には、もはや取締役の違法行為を差し止める方法がなくなった、ということになりますので、保全の必要性の要件からみましても、このタイミングしかなかったということなんでしょうね。前回のエントリー同様、申立てに対する個人的な意見は差し控えさせていただきますが、ここのところ事業統合、組織再編は大手の上場会社さんでも頻繁に行われるところですし、統合比率の公正性(価値的な判断)と手続きの公正性(価値算定のためのプロセスの判断)については多くの事例で問題視されておりますので、この第2ラウンドにおきましては、ぜひとも裁判所の判断を仰いでいただきたいところであります。(そういえば、本日の適時開示を眺めておりましても、本件とは資本関係が若干異なりますが、イーアクセス社とイーモバイル社の統合交渉において、イーアクセス社は社外取締役ら6名で構成される独立委員会が今後の主導的役割を果たす旨、公表されておりました)

しかし臨時株主総会が12月30日ということですと、明日(23日)が祝日ですから、平日はたったの4日間しかありません。(24日、25日、28日、29日)ということは審尋期日はこの4日間において行われることになりますし、(もちろん商事部裁判官との事前面談は行われているものと思いますが)クリスマスどころの話ではないですよね。当然、株主側も会社側も、単に開催禁止の裁判だけに専心してはおれず、実際に総会が開催された場合の対応についても準備をしておくはずですから、一般の株主の方も含めて、たいへんな年末になってしまいました。この季節になりますと、佐野元春さんの「クリスマスタイム・イン・ブルー」という曲が好きでよく聴きますが、そのなかで戦場でも一時休戦してクリスマスを祝う・・・というシーンが出てきます。しかしこの仮処分命令申立て事件だけは、そんなことを言っている場合ではなさそうであります。

最後に前回のエントリーに対するオープンセサミさんのコメントをご紹介いたします。

仮処分申立ては、指摘資料の追加添付をもって、目的達成し取下げとなりました。私のように法律、会計知識が十分でない者には、「封筒に一枚入ってない。」→「入れ忘れたので、送ります。」ということだけであったように見えます。なぜたったこれだけのことが、多くの株主、投資家の皆さん、報道関係まで巻き込んで、普通の株主の皆さんが参加出来にくい年末の日に開催日を延期までして、やらなければらないことだったのでしょうか。納得しにくいことであり、別の目的があるならば、より多くの人々にも、私のような1000株株主、他の株主にも知らせてほしいと思いました。

ご意見どうもありがとうございます。m(__)m 一般株主の皆様方の偽らざる心境だと思います。しかし、その封筒に入っていなかった一枚の紙がどういったものだったのか、参考書類に入れますと言いながら、WEB開示をした資料がいったいどういった意味を持つのか、今回の臨時株主総会で決定される内容の重要性からすると、誰かが一般株主の方々に解説する必要があるのかもしれません。その紛争はあるときはお家騒動のようなものであり、またあるときはアクティビストファンドの濫用的買収のように見えるかもしれませんが、いっぽうにおいて現経営陣の意思決定が100%正しいものとも言えないものと思います。本来会社法が目指してきた道は、こういった紛争解決もありうることを前提としてきたのではないか、と(トライアイズの事件などをみてきた)私は素直に思うところであります。

12月 23, 2009 商事系 |

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コメント

こういうのは本当にボランティア的な精神でやってるのがわかりますので、頭が下がります。会社役員の方は全く懐は痛みませんし、所詮会社の金で裁判を行うのです。一方株主側は手弁当、しかも決議取り消し訴訟ならば場合によっては担保提供が必要になったり、敗訴時の損害賠償請求を行われてしまう恐れすらあります。

会社法は、かつての商法より定款自治を重視し自由度が増していますが、単に特別決議さえ取れれば何だって出来るようになったに過ぎず、さながら無法地帯を生み出してしまっただけのような気がします。近年、会社と株主の紛争が急増しているのも、法による最低限の規制がほとんどなくなってしまった所に原因があります。額面株式の廃止に始まる増資規制の消滅を皮切りに(これは商法のときですが)、合併対価の自由化、さらにはスクイーズアウトの解禁・・・どれも株主の権利を蔑ろにするものばかりです。

今の会社法は、形ばかりは株主保護条項は盛り込まれているものの、現実的にはそれを行使するより、市場で売却してしまう方が遥かに利口だという事になっています。会社法は間違った方向に進んでしまったような気がしてなりません。

株主にとっての最大のリスクは、投資している会社の会社役員です。そして、会社の法令違反よりも、法令は一応遵守しているように見える不適切な合併比率、増資、その他反市場的行為こそが株主にとっての大きなリスクなのです。

投稿: ターナー | 2009年12月23日 (水) 15時30分

ターナーさん、ご意見ありがとうございます。いつもターナーさんの意見には感心いたします。
現行会社法の問題点や公開会社法への視点など、「ビジネス法務」2月号におけるNN弁護士のご意見(2009年企業法務10大事件)にたいへん近いものを感じます。ちょっとエラそうな物言いで恐縮ですが、この会社法の影の部分を活用して、かなり利益を獲得している法律事務所さんもいらっしゃるように思いますが、どんなものでしょうかね?

投稿: toshi | 2009年12月25日 (金) 02時32分

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