« 日本興亜損保・臨時株主総会開催禁止の仮処分申立の行方 | トップページ | 不適切な会計処理の判明と内部統制報告書の訂正について »

2009年12月17日 (木)

闘うコンプライアンス(しまむらvs新潟県加茂市)その1

世間ではあまり注目されていないようですが、ちょこっとだけマスコミで報道されているのがファストファッションでおなじみ しまむら社(東証1部)が新潟県加茂市より刑事告訴を受けている(正式には刑事告発でしょうね)模様で、12月8日には地元警察がこれを受理したそうであります。

闘うコンプライアンスといえば、過去にはヤマハ発動機のヘリコプター輸出(関税法違反)刑事事件(株主総会で代表者が「かならず社員を救ってみせる」と株主に誓い、見事二人の社員は無罪判決)や不二家信用回復委員会(でしたっけ?)のTBS抗議事件などが著名なものでありますが、このたびのしまむら社も「法令遵守」のために闘う姿勢をみせておられるようであります。

ニュースでは、しまむら加茂店の売り場面積拡張に「待った」をかけるため、今年7月に加茂市が臨時議会で条例を改正した、というものでして(加茂都市計画地区計画による建築物の制限に関する条例の制定 7.17 原案可決)、すでにしまむら社は新潟県から拡張に関する許可を得ていたことから、そのまま加茂市の制止を振り切って面積拡張に踏み切ったというもの。今年に入ってからしまむら社と加茂市とは交渉を繰り返してきたようですので、この7月改正はまさに「しまむら対策」として制定された可能性は高いのかもしれません。行政刑罰が盛り込まれている条例ですので、制定段階では検察庁との協議も終えているはずですので、今後は罰金の適用が検討されるところだと思われます。

もちろん加茂市側としても、地元商店街と大型店との共存体制を構築するためには、どうしても大型店舗の規制に乗り出す必要性もあるでしょうし、政策法務としてはしまむら社と協議を重ねることは重要なことだと思います。ただ、それを条例という行政手法によって規制し、かつ刑事罰をもって臨む、となりますと、これまた企業コンプライアンスという観点からは問題が発生するものと思います。つい先日も、最高裁で初めて条例に対する行政処分性が認められております。つまり、特定個人の人権規制を狙ったような条例の制定については、(条例といえども紛争の成熟性が認められるので)取消訴訟の対象になることが判断されました。したがいまして、今後は自治体の条例制定の裏にある立法事実が厳格に判断されることになるのではないでしょうか。

条例にしたがって刑事罰が課されるとしましても、この条例自体が憲法違反もしくは法令違反ということになりますと、当然に無罪ということになります。たとえばしまむら社が「自社は法令に違反するようなことは決してしていない」と主張するのであれば、この条例の合憲性、合法性に関する主張を堂々と展開されるでしょうし、それはまた売り場面積拡大を取締役会で決議した役員の方々に経営判断原則が適用される前提になるものと思われます。

自治体の(地域社会のための)政策法務による企業規制と、企業のコンプライアンス経営の必要性とが真正面からぶつかりあう珍しいケースであり、今後の企業コンプライアンスの在り方を検討するうえでも貴重な事例です。今後の動向に注目したいと思います。(でも、ニュースでとりあげられないとちょっと進展はわからないかもしれません。しまむら社のHPにも、また加茂市のHPにもリリースされていないようですし・・・・)

|

« 日本興亜損保・臨時株主総会開催禁止の仮処分申立の行方 | トップページ | 不適切な会計処理の判明と内部統制報告書の訂正について »

コメント

ライブドアのBLOGOSで、本記事のトピックスが「告発されたしまむらは当然無罪」となっています。本文と趣旨がかなり異なるようですし、修正を依頼された方がよいのではないでしょうか?

投稿: たこ | 2009年12月17日 (木) 12時45分

全国的に同じ店はいらない。すべて許可制にして、これ以上しまむらやヤマダ電気を作らないでくれ。もう辟易だ。チェーン店反対!!

投稿: 8938 | 2009年12月17日 (木) 13時48分

>>自治体の(地域社会のための)政策法務による企業規制と、企業のコンプライアンス経営の必要性とが真正面からぶつかりあう珍しいケース
→ 明和地所と国立市のケースが、類似のケースといえると思います。
http://blog.livedoor.jp/advantagehigai/archives/65390218.html

投稿: 山口三尊 | 2009年12月18日 (金) 02時34分

はじめまして。

>地元商店街と大型店との共存体制を構築するためには、どうしても大型店舗の規制に乗り出す必要性もあるでしょう

そもそも商店街が大型店に対し政治力で対抗するということ自体に問題がありますね。郊外への出店への規制であれば正当化も可能ではありますが、単なる拡張に、しかも事後的に規制を掛けるというのはかなり無理があります。この件に注目が集まることで、こういった規制自体の問題にも関心が寄せられることを望みます。

投稿: Rion | 2009年12月18日 (金) 15時48分

法律の範囲内で、将来的に柔軟に対応できるように設計するのは当然のこと。
県に許可をもらってから、売り場を増やしたら、市から刑事告訴。

これは明らかにおかしいですよね? 

本当に法律を犯しているのは誰でしょう。

投稿: oni999 | 2010年1月26日 (火) 21時59分

そういえば、朝日新聞ニュースの1月24日付け記事で「しまむらVS加茂市」の件が採り上げられていますね。いわゆる「上乗せ規制」に関する有識者のコメントも掲載されており、ちょっと触発されてエントリー(その2)を書きたくなってきました 笑

投稿: toshi | 2010年1月27日 (水) 02時09分

例えば、法律の範囲内で自社ビルの一階を店舗に改造したら、

 『おまえ、建設時から企んでいただろ! 
気に入らんから条例作って警察に訴えるからな!!』 と役人が怒鳴り込んできたらどう思います?   

法に守ってやった事を後から無理やり条例を作って、民事ではなく刑事告訴。ありえない。

toshiさん、
こんなのが通ってしまったら、日本は終わりです。
是非、エントリー(その2)を書いてください。

投稿: oni999 | 2010年1月27日 (水) 20時05分

市の対応や地元商店街の安易な考えか方に違和感を感じます。

経済活動を弱い人たちを守ると言う理由で規制すると、日本は何時までも
効率の悪い業種が蔓延り、他国から経済的に支配される様に成ります。

自分達は創意工夫も何も努力しなかったから、地元の人たちから支持されなくなり商店街が衰退するのです。

商店主は店を閉めても税金の矛盾で、他人に賃貸で貸すより一部住居として使用してる様に装う事で固定資産税やその他の税金の免除を受けてるのです。

ですから日本全国の商店街は店を閉めても何もせずの方が有利なのです。

自業自得だよ!!!

投稿: タケル | 2011年1月17日 (月) 08時58分

今回の事件は市に問題があります。しまむらにはなにも問題ありません。
大型店舗・チェーン店大いに結構です。商店街は規制する前にする事が
沢山あるのでは?金額的にかなわないなら、他にすることもあるでしょ!

投稿: グラス | 2011年1月17日 (月) 09時44分

加茂市って「市」だけど、何も無いところなんですよ
このしまむらだって立地的には商店街から離れてるし
絶対に市民は助かってると思います

投稿: 新潟県民 | 2011年1月17日 (月) 10時47分

さすがコ○リの国

投稿: 名無しです | 2011年1月17日 (月) 11時20分

大型店の規制云々より地域密着しすぎる(ある意味客を客と思ってない態度の)商店街の経営体質を少し考えたほうがいいのでは???

投稿: ゆーすけ | 2011年1月17日 (月) 11時22分

地元の商店街の経営者さんには同情しますが、お客にとっては大規模な店舗のほうにいろいろと魅力があるから、お客がそちらへと流れるのでしょう。水が低いほうへと流れるのと同じです。

それならば、お客の立場に立った、より魅力のある商店街にする方法を考えてみたら、どうでしょうか? 

大規模店の魅力の一つは、広い駐車場があることです。それに商店街が対抗するには、「空き店舗」を利用した「自転車駐輪場」を、各お店の近くに作ったらどうでしょうか?

商店街に買い物に出かけても、自転車を置くスペースが無い、駐輪ラックが無い、・・・これでは自転車で買い物に行く気がしなくなります。

自転車で買い物ができる。自転車を駐輪して、自分の自転車を見ながら、カフェでコーヒーを飲んだり、おそばやラーメンが食べられる、そんな商店街があれば、私は毎日のように商店街に入り浸りになるでしょう。

商店街の周囲に駐車場を配置して、商店街のなかには「自転車駐輪場」を設置する。「自転車駐輪場」への固定資産税は免除に近いものにする。こうすれば商店街は活性化します。

ぜひ、商店街に「自転車駐輪場」をたくさん作ってください。

投稿: コニー | 2011年1月17日 (月) 12時00分

新潟の方ならご存じかと思いますが、この加茂市の市長、変わり者のやっかい者で有名ですよ。
勿論投票した市民も気がつかないんでしょうか?
周辺市町村にかなりの迷惑をかけてる事に。
大体しまむらなんて、あんななにもない所にぽつんと建ってて、本当になにもない糞田舎だとつくづく思う。
そんな所に出店してくれただけでも感謝しなさいよ。
ホント、どうしようもない市だこと!

投稿: 新潟県民 | 2011年1月17日 (月) 14時35分

噂を聞けば、市長さんは不思議な方だとか・・・。
同級生も従姉妹達も、加茂から出たのは魅力が薄いから。
でも、しまむらには行ってました。
私の実家はしまむらの近くです。周りには何も無いし、もしかすると加茂市と思われていないような場所ですけどねえ・・・。

投稿: もと加茂市民 | 2011年1月17日 (月) 14時36分

最初のニュースを読んで、すぐに余目町トルコ風呂営業許可不受理最高裁判決を思い出すほど、行政権の濫用であることは明白なんですが、誰も指摘しなかったんでしょうか?市にもお抱え弁護士もいるでしょうに…。

投稿: もこ | 2011年1月17日 (月) 23時20分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 闘うコンプライアンス(しまむらvs新潟県加茂市)その1:

« 日本興亜損保・臨時株主総会開催禁止の仮処分申立の行方 | トップページ | 不適切な会計処理の判明と内部統制報告書の訂正について »