投信運用会社による議決権行使状況の開示義務付け
今年の株主総会に関連する話題でありますが、投信運用会社が投資先企業への株主議決権の行使状況を各社が個別に開示するように(投資信託協会が)義務付けるそうであります。(日経ニュースはこちら。今年5月、6月総会の集中期から導入とのこと)上場会社が総会における議決結果(賛否の結果)を開示することにつきましては、取引所の要請がありましたが(たとえば東証「株主総会議案の議決結果の公表についてのお願い」)、こちらは機関投資家(および運用会社)の受託者責任の履行という観点から、ガバナンスの強化を図る、ということのようであります。
私もよくは知りませんでしたが、これまではこちらにあるように投資信託協会が、まとめて行使状況を開示しておられたのですね。ちなみに、このあたりの問題点は金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」の第19回(平成21年2月10日)議事録(金融庁HPより閲覧可能)が参考になるかと思います。私などは、そこで展開されている(推進派でいらっしゃる)岩原教授のご意見が、まことに正論のように思うのでありますが、運用会社のなかには、金融機関のグループ会社が含まれておりますので、議決権の行使状況を開示すると、「発行会社にご迷惑をおかけしたり、無用に発行会社や、そのエージェントから圧力がかかったりして無用にコストがかかる」ということで、かなり反対意見も強かったのではないかと思われます。(実際、こういった事務手続の増加は手数料に影響してくるのでしょうかね?)ちなみに三菱UFJ投信さんなどは行使状況を開示されておられるようですが、この程度であればとくに発行会社に迷惑をかけたり、圧力をかけられる・・・というほどでもないように思うのでありますが。。。
これが果たして個別の企業のガバナンス強化につながるのかどうかはわかりませんが、議決権行使状況を各社で比較できたり、議決権行使ガイドラインの変更だけでなく、行使状況の変遷自体もわかるようになるため、おそらく各運用会社における説明事項は増えるものと思いますので、市場による(全体での)ガバナンス強化へのインセンティブは高まるのではないでしょうか。
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コメント
「不思議の国のM&A」(牧野洋、日本経済新聞出版社)によると、過去に三菱自動車があのリコール問題で経営が揺れた際、ご指摘の系列系資産運用会社が系列に都合のいい議決権投票をしていた、という指摘があります。
最近独立系の投信の人気もこういったケイレツ資産運用会社の不透明感が根っこにあると思われます。
また、ETFという投信の天敵ともいえる商品が巨大化しつつあり(日本のETFが買えなくとも、ネット証券で簡単に海外ETFが買える)、投信会社はコストを引き上げる余裕もなく、本来やるべき手続きが増えるということになるのでしょう。
当然のことが当然に起こっている程度だと思います。
論点は議決権行使アドバイザーのようなところのアドバイスの正確性とかがあるかもしれませんね。
自前の議決権行使基準をしばし拝見していますが、かつて企業年金連合会が開示した基準より緩かったと思います。
発行会社に大いに迷惑をかけてほしいものです。
投稿: katsu | 2010年1月12日 (火) 12時30分
ご指摘の本、早速読みました。最後のあたりにも、プラットフォームの進展問題とともに記載されていますね。理屈よりも、実務がどうなって動いているかを知る上には有益な本だと思いました。(ご紹介どうもありがとうございました)
ETFとの関係、なるほどと感じました。そういったインセンティブが働いている点もあるのでしょうね。
投稿: toshi | 2010年1月15日 (金) 02時44分