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2010年2月19日 (金)

社外取締役には株主総会への出席義務があるのか?

今朝(2月18日)の日経新聞のベタ記事で見つけましたが、2月24日に開かれる法制審議会に会社法制の見直しが諮問されるようであります。企業統治のあり方や親子会社に関するルールなどが検討課題となるそうでありますが、これって民主党が制定に意欲を持っておられる「公開会社法(仮称)」に関する諮問ということなんでしょうね。でも、周囲のいろんな方々とお話していても、新法が制定される現実味がないですよね。結局この記事にありますように会社法の一部改正、金商法と会社法の交通整理、あたりで十分有意義な審議ができそうですし、とくに公開会社法なる新しい法律の制定が審議の対象にはならないものと思われます。(あくまでも個人的な推測でありますが)

ただ昨年の企業統治研究会や金融庁スタディグループあたりの報告書提言を基に、今度は会社法マターで企業統治のあり方が議論され、法制度への落とし込みが検討されるものと思われます。おそらくまた注目されるのが「社外取締役制度導入論」だと予想されます。ZAITENあたりでも特集が組まれております「社外取締役」でありますが、著名人の社外取締役の方々は、何社も掛け持ちされているために、おそらく定時株主総会にも欠席がちになってしまう方もいらっしゃるものと聞き及んでおります。そこで本日は「はたして取締役には株主総会へ出席する法的義務はあるのだろうか?」というお話であります。

ちなみに法律・会計関連の某大手出版社が毎年発行していらっしゃる「平成22年版 株主総会の準備・・・」には、<社外取締役の欠席>に関する想定問答が掲載されておりまして、株主様が

「社外取締役の○○さんは大事な株主総会だというのに欠席しているではないか。総会にも顔を出さないような○○さんを選任したこと自体、問題ではないか?」

との質問をぶつけますと、社長さんが

「○○さんは取締役会には全回出席しておられ、またいつも貴重なご意見をいただいております。たしかに総会は大切ですが、総会への出席を条件として選任しますと、候補となる人が限定されてしまい、優秀な人材を確保することができません。また総会では私たち社内の者で説明は十分できると思いますので、どうかご理解のほどお願いいたします。」

との模範回答。(概ね、こんな感じの回答例でした)

たしかに回答例としては模範的なものだとは思うのでありますが、ちょっと気になりましたのが、(おそらくその本の監修をされていらっしゃる著名な法律事務所のご見解ですが・・・)総会は貴重な場ではあるが、法律上は取締役・監査役全員の出席が義務付けられているわけではない、との解説であります。この「取締役・監査役全員の出席」というのは、株主総会という機関における決議の効力要件からみたイメージであるならば、たしかにその通りだと思います。しかし、上の想定問答で問題となるのは個々の取締役にとって、果たして株主総会に出席すべき法律上の義務があるのか(ないのか)ということであります。そうだとしますと、社外取締役も含めて、会社の役員さんには株主総会での目的事項に関する説明義務が会社法上は規定されておりますので(法314条)、この条文からしますと取締役さん(監査役さんも同様)には株主総会への出席義務は法的にも認められるものだと思われます。「新会社法概説(大隅・今井)」や「逐条解説会社法第4巻(浜田解説)」も、当然に取締役には総会への出席義務あり、とされております。

ということは、たしかに多忙であることは承知しておりますが、社外取締役が株主総会に欠席されるのは、法的には義務違反(任務懈怠)に該当することになります。ところで、株主に対する説明義務というのは、とくに担当の取締役がされなくても、たとえば執行役員を履行補助者として説明させても構わないわけですので、とくに当日は出席せずとも説明義務違反にも該当しないのではないか(したがって出席義務はないのでは?)、という理屈も考えられそうであります。しかし、出席している株主様からは、目的事項に関してどのような質問が出るのかは当日になってみないとわからないのですから、やはり出席義務を否定する根拠とはなりえないものと考えます。

とりわけ報告事項も「株主総会における目的事項」であり、事業報告には社外役員の状況についての記載があります。また、そもそも社外取締役は一般株主の利益保護を目的として選任されており、社内取締役よりも株主に近い立場にあるのが通常の感覚でしょうから、そのような立場にある取締役が総会に欠席する、ということは、法的な義務違反といわれても仕方ないように思います。(ただ、欠席したことが決議の効力に影響を与えるとか、直ちに解任事由に該当する、ということではありません。)社外取締役にはお忙しい方が多いと思いますし、相変わらず総会集中日というものがありますので、やむをえない場合もあり、想定問答としては上記のあたりが無難かとは思いますが、ただ決して「総会に出席する義務はないのだ」などと開き直ることだけは回避されたほうがよろしいのではないかと。

2月 19, 2010 株主総会関連 |

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コメント

一見模範回答のようにみえますが、そのまま使う会社さんはおそらく皆無かと・・・。
出席義務がないことを前提にして開き直っている点で根本的に欠陥があると思います。株主さんからすれば、そんな条件で選任した覚えはないでしょうね。昨年の総会参考書類に“候補者○○氏は総会に出席しないことを条件に就任予定の取締役であります”という注記をしていたならば別ですが(笑)
善解して、「総会出席しないことを条件に就任していますので…」ということだとしても、そもそも就任契約で決めることのできない無益な就任条件でしょう。
出席するか否か(できるか否か)は当人の問題であって、会社側がさも既定のことのように回答するのにも違和感があります。
やはり、義務はあることを前提に、当人の本業、当日のご都合等により出席できないこともございます・・・目的事項に関することでございましたら我々でご回答申し上げます云々と正直に回答すべきではないでしょうか。

投稿: JFK | 2010年2月19日 (金) 01時48分

実は私もほぼ同感です。模範解答の前半部分はよいと思うのですが、後半部分には若干の違和感を覚えています。
素直に申し開きせずに「申し訳ございません」のほうが良いかもしれませんね。本業の取締役として総会が重なってしまう場合にはそのとおり言いますが、他の社外取締役を務めている会社の総会に出席してます、なんてあまり正直に言うのもなんだかなぁ(笑)という感じはしますが。

投稿: toshi | 2010年2月19日 (金) 02時56分

ごぶさたしてます。

大きな事務所に聞くと「抽象的には総会への出席義務はあると言われていますが・・・」などと上品な答えをされそうな問題ですね。
上の回答は結局「社外取締役は独立で判断するんだから他の取締役だってコントロールできないぜ」と開き直っているわけですよね。
あまりそれを強調すると「できるだけ多くの取締役(や株主)が出席義務を果たせるよう総会日程を調整する義務があるんじゃないか」などとつっこまれそうです。
そうすると、総会招集の取締役会の時点で出席の可否を確認して、もし欠席であれば招集通知にその旨を記載し、「欠席取締役に質問があるのであれば事前に書面でご質問いただければ、総会当日にしかるべくご回答申しあげます」などと注記するのが一番親切で、欠席取締役もできる限り義務を果たす感じにはなるのでしょうけど、そこまであえて寝た子を起こすような羽目にならないように、そこはそれこそ上品に対応するのが肝要かと(笑)

投稿: go2c | 2010年2月19日 (金) 08時27分

私も先生およびコメント投稿の皆様と同意見です。想定問答回答例の「出席を条件に選任~優秀な人材~」の部分は全く不要で、JFKさんがおっしゃるように、これをそのまま使う会社の担当者がいたらとても有能とは言えませんね。
やはり、「(病気等)やむをえない事情で」と一般的回答を用意し、更に株主が「事情」を追求してきた場合は、あとでウソとならない範囲で丁重に簡潔に事情を述べ、今後、極力こうした事態がないように留意したい」としておくくらいがよいかと思います。
「go2c」さんが言及されているとおり、当日の緊急事態でなく事前に欠席が判っている場合は、その(社外)取締役の回答と思われる範囲(内容)の回答を別の取締役が受け持つくらいの内部での「振り分け」をしておくことがベターorベストだと思います。
もし某社が青字の回答例のまま回答をしたら、私が同社の株主ならこう突っ込みます。「株主総会に出席できないような取締役は選任するな。「優秀」なら出席しなくてよいのか?出席できる「優秀」な人は、探せばいますよ」、と。
とにかく、今回のトヨタのリコール問題での同社の対応失敗例と同様、「余計な言い訳はしない。誠意ある回答に徹すればよい」ということだと思います。

投稿: 伊藤晋 | 2010年2月19日 (金) 10時25分

go2cさん(どうもおひさしぶりです)、伊藤さん、ご意見ありがとうございます。

>上の回答は結局「社外取締役は独立で判断するんだから他の取締役だってコントロールできないぜ」と開き直っているわけですよね。

なるほど、そういった見方もできるんですね。気が付きませんでした。

伊藤さんの想定ツッコミはまさにそのとおりでして、私も同様の質問がとんでくることをおそれます。会社にとってはまさに優秀な方が一番ですが、株主にとってはあまりそこを前面に出すのはちょっとなぁ・・と。

次の6月総会から総会における議決結果が賛否の数も含めて公表されるようになり、そのなかで取締役の選任も個別案件として上程されるようになりますが、そうなると(形だけかもしれませんが)株主の質問権の実効性を高めるためにも役員の総会出席はますます必要性が高くなるように思います。

投稿: toshi | 2010年2月19日 (金) 11時29分

遅くのコメント失礼します。しかも、少し議論がずれますが。。
独立役員の導入もあいまって、今後はこういった悩みが継続的に現場で出てきそうですね。

法的な観点は皆さん方の議論のレベルには届きませんので、あえて普通の観点で(笑)
社外役員や独立役員はコーポレートガバナンスにおいて重要な場面で適切な牽制機能が働く事を期待されている。という前提に立ったとき、
会社の最高決定機関である株主総会に出席できないという事象は「牽制機能が正しく働くのか?」という疑問を株主や投資家に湧かせはしないでしょうか。
その理由が、多数兼任している。業務が多忙であるなどである場合は、その社外役員における当該会社の優先順位が低いと見え、
いくら過去の各会議の出席が優秀であっても、優先順位が低い中、将来本当に牽制機能を発揮すべき時に出席し、発揮してくれるのか?という疑念を与えないでしょうか?
仮に社外役員が欠席多数の株主総会があったとしたら、法令に問題なくとも不安に思うのではと思います。

でもそうなると人選や総会の設定は難しくなるとは思いますが、早期に欠席を判断し説明に頭を悩ませる前に、少し視点を変えて見てもいいかもしれません。

投稿: ママ監査役 | 2010年3月 2日 (火) 14時02分

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