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2010年2月25日 (木)

サンスターMBO高裁決定が確定したようです。

(2月26日未明:追記あります)

サンスター社のMBOの過程で行われました全部取得条項付き株式の公正価格を巡る事件(価格決定申立て事件)におきまして、サンスター側から出ておりました特別抗告を棄却する旨の最高裁決定が出されたようです。(まだ風の噂でありますが・・・)

最近は「旬刊商事法務」さんも、「ビジネス法務」さんも、MBOをとりまく特集記事(論稿)が目白押しであり、多くの学者、法曹実務家の方々は、このサンスター高裁決定を疑問とする意見が強かったように思います。とくにサイバードHD東京地裁決定が出てからは、なおさら高裁決定への批判が強まったように感じました。でも、これが現実であります。

MBOに直面する監査役としましては、行為規範(構造的な利益相反状況のなかにおけるTOB価格賛同のための公正な手続き)と開示規範(株主にTOBに応じるか否か、その結果に自己責任を問いうるだけの情報が開示されているか)が適切に遵守されていることをチェックしなければ、自らの善管注意義務違反を問われかねない時代になってきたといえそうですね。

PS それにしても、商事法務(株式会社)さんの不祥事、ビックリしました。(本当にこんなことってあるんですかね??)「第三者委員会特集号」の不祥事で第三者委員会が立ちあがる・・・って、シャレにもなりませんし、あんまり笑える話ではないですよね。。。

(2月26日未明:追記)時事通信ニュースによりますと、サンスター社がこの件につき、リリースを出しておられるようです。風の噂は本当だったようです。

ところで、このサンスター社のリリース内容については素朴な疑問が出てきます。最高裁の司法統計、たとえば平成20年度の統計からみますと、高裁が許可抗告を「許可」したのは、1331件中、わずか57件です。しかも、平成20年度中に最高裁で既済となった54件の許可抗告のうち、破棄差し戻しとなったのはわずか3件です。つまり「重要な法令解釈の統一に関する必要性」が認められたとしても、最高裁で判断が覆るのはほとんどない、という結果が出ております。このような現実があるにもかかわらず、なぜサンスター社は「最高裁で審理されていれば、自らの主張が通ったと確信」できたのか、非常に素朴な疑問を感じます。田原裁判官の補足意見を引用されておられますが、田原裁判官は、破棄差し戻しを予想させるような判断理由を付記されておられるのでしょうか?もし、そのような決定内容であれば教えていただければ幸いです。

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コメント

 サンスター決定の確定もさることながら、中立性のお話しが、MBOの問題と重なっているのですね。
 この第三者委員会には、過去の案件についてもしっかり調査して欲しいと思います。ちなみに、旬刊商事法務の署名論文で、MBOにかかる裁判所の決定について関係者が評釈を書いていた案件があったと記憶していますが、あれば中立でないことが(明確でないが)わかることから、問題ないということでしょうか。

投稿: Kazu | 2010年2月25日 (木) 11時52分

>kazuさん

コメントありがとうございます。
いろいろなご意見があろうかと思いますが、署名論文の場合、できれば注記において、ご本人もしくはご本人の所属する事務所が、当該事件の代理人として関与している(関与していた)事実は記載していただきたいと思います。
中立性とは直接関係ないかもしれませんが、たとえば、純粋に判決(決定)文だけを参考にされたものと、個々の事件の裏事情まで認識したうえで論稿を書くのとでは、筆者の判決に対する評価も異なってくる可能性がありそうです。(そのことを、読む側も覚悟して冷静に読むべきでしょうし。たとえば読んだ方が、その論文を引用するか、しないかの選択にも影響を与えるものと思います)

投稿: toshi | 2010年2月25日 (木) 12時21分

一株純資産を下回るTOBでは、殆どのケースで一株純資産に言及していなかったり、清算時価純資産のみを記載しているだけで、非常に姑息だと思います。せめて、最低限の注意喚起程度のことを監査役にしてもらえれば良いと思いますが、それすらも今の監査役に期待することは難しいでしょうか?山口先生が言及されているほどの高いモラルを監査役に期待する事は難しいにせよ、最低限の職務を監査役には果たしてもらいたいと思うのです。

一株純資産を下回っていても、市場株価に相応のプレミアムが付いていればTOBに賛同しても問題ないと思いますし、清算時価純資産までも下回るのであれば相応のやむを得ない理由を記載すべきだと思います。

また、最終的に全部取得する時には、一株時価純資産を保障しないのは株主に対する背任である気もします。TOBと全部取得を近い時期にしなければならない理由はありません。TOBと全部取得を組み合わせてやるから、問題が大きくなるのです。そして、TOB価格と全部取得価格を同一にしなければならない理由も全く無いのです。(ただし強圧的二段階買収は許されていませんから、TOBと全部取得の時期が近接していれば、TOB価格≦全部取得価格になろうかと思います)

投稿: ターナー | 2010年2月25日 (木) 14時04分

PSの部分、果敢なつっこみですね^^

でも、商事法務の業界専門誌のという性格から、「第三者委員会」のメンバーといえども一度も執筆を依頼したことがない、と言うわけもないでしょうし、今後の関係も皆無と言うこともないでしょうから、「第三者性」が担保されているかとつっこまれるとつらいでしょうね。(以前第三者委員会の独立性に関する記事もあったような)

投稿: go2c | 2010年2月26日 (金) 00時44分

ターナーさんの、他のエントリーへのコメントも併せて拝読いたしましたが、なかなかスルドイ視点ですよね。(といいますか、この純資産総額を下回るTOB価格というのは、過去にも実はありますよね。価格決定申立ての非訟事件はなかったようですが。。。)いままで裁判所は清算すれば株主がもらえるものよりも、なぜ下回る価格でTOBに応じなければならないのか、きちんと答えを出していないですよね。あくまでも理屈の問題ですが、一般株主にも理解可能な理屈でこれを説明する必要はあるかもしれません。

go2cさん、コメントありがとうございます。こういったツッコミは大手の法律事務所の先生方では無理でしょうね(笑)第三者委員会の独立性につきましては、さすがに私も果敢にツッコミはできませんでした。委員就任に関する前提条件に関するリリースが出ていたことと、あの問題にそれこそツッコミを入れることができるのは、就任された委員長の先生くらいではないかと。しかし、コレ、本当に重大な問題ですよね。どうなるんでしょうか??

投稿: toshi | 2010年2月26日 (金) 01時51分

最高裁で審理されていれば覆ったのだから、高等裁判所の判断が不当であるに過ぎず「他の株主さんにはお支払いしません」と言いたいのではないでしょうか?どれほど不当な価格を付けても、申立株主のみに公正な価格を支払えば良いとすれば全く利益相反を防げませんよね。そして、今回の裁判で金銭的に得をした人は誰もいません。(会社側の弁護士以外には・・・)

もし、自分が住んでいる住宅を売ってくれといきなり言われて、10%や20%市場価格に上乗せするだけで喜んで売る人はそんなにいないでしょう。無理やり追い出すなら市場価格の倍以上付けるのが常識ある企業だと思います。プレミアムを付けてTOBしたくなければ市場ですべて買い付ければよいだけなのです。(実際は価格が上がってしまい高くつく事になります)

法律で規制されていなければ何をやってもかまわないような考えを示していた●●エモンや●上ファンドは、結局のところ法令違反を突かれて痛い目にあいました。申立株主のみに840円が適用されると強弁することも出来るでしょうけれど、果たしてそれで本当に良いのでしょうか?多くの株主は法的な知識も無いのですから、老人や子供から金を巻き上げているのと変わりません。

投稿: ターナー | 2010年2月26日 (金) 10時17分

商事法務第三者委員会に対して、厳格な調査を求める要望書を提出しました。特にMBOに関して、広告主に偏った報道姿勢が目立つように思います。
http://blog.livedoor.jp/advantagehigai/?blog_id=2054910
サンスター最高裁決定文アップしました。サンスターについては、キャッシュフローから見た企業価値は、840円でも割安です。この点にも目を向けてほしいと思っています。
http://blog.livedoor.jp/advantagehigai/archives/65414415.html

投稿: 山口三尊 | 2010年3月 3日 (水) 13時54分

三尊さん、決定文ありがとうございます。この件については、別エントリーで書きたいことがありますので、また別の機会に。田原裁判官の補足意見に関するものです。

商事法務の件は、興味深く拝読いたしましたが、(いま出版の件でお世話になっているところですので)コメントはご勘弁ください。。。m(__)m

投稿: toshi | 2010年3月 4日 (木) 03時07分

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