KDDIのJCOM出資方法の適法性と公開買付け規制の解釈(その2)
(2月9日夜:追記)
先週、KDDIのJCOM出資方法の適法性と公開買付け(TOB)規制の解釈というエントリーをアップして、「KDDIがリバティグループの子会社持ち分を取得する方法で、実質的にはJCOM株式の37.8%を取得することが、はたしてTOB規制に違反するか?」といった問題についてご紹介いたしました。そしてすでにご承知の方も多いかとは思いますが、本件について金融庁が調査に乗り出し、違法の可能性があるとしてスキームの見直しをKDDI側に求めているそうであります。(なお、もし違法となれば課徴金800億円~900億円が課される可能性もあるとか)そこで、最初は強気だったKDDI側も、スキームを見直す予定である、とニュースでは報じられております。(産経ニュースが詳しく報じております。このニュースでは、金融庁が中間持株会社を「ペーパーカンパニー」と評価している、とのことですが・・・)
ある新聞記者の方もおっしゃっていましたが、「感覚的にはちょっとヤバイのではないか。普通の感覚だと、脱法的なニオイがします」とのことですし、たしかに中間持ち株会社が十分に機能していない状況であれば、やはり潜脱行為の可能性が高いようにも思います。(つまりJCOM社の一般株主の方々が不満を募らせるのもナットクできるところであります)ただ、前回のエントリーでコメントいただいた辰のお年ごさんが疑問を呈しておられるように、買付会社が「限られた資源」をもって限られた範囲で(つまり50%以下の議決権を獲得する目的で)出資したいと考えているケースにおいて、当局が公認する代替手法も不明なままに、市場外取引ができずに常にTOBによらなければならない、ということになりますと、かなりM&Aを断念せざるをえない結果になるのではないか、とも思われます。とりわけ課徴金制度がTOB規制に導入されましたので、その法的な性格が「不当利得のはく奪」にあるにせよ、現実には相当な萎縮的効果を発揮することは間違いないでしょうね。(ちなみに、ニュースが報じるところでは、JCOM株式の3分の1を超える部分については、KDDIとしては第三者に持ち分を移転することで、リバティグループの要請と法の要請を同時に満足させる方針とのことですが、そもそもこの「第三者」がKDDIの実質的な支配関係にあるならば、また新たに潜脱行為ではないか、との疑問も残りそうな気もしますが・・・)
前回のエントリー以降、いくつかの文献等を読みましたが、このTOB規制に関する法律や金商法施行令の解釈方法については、いくつかの議論があるようです。(たとえば種類株式発行会社における種類株式・普通株式へのTOBについての限定説、非限定説、また限定説に立つ場合の形式的解釈説、実質的解釈説など)このあたりの問題点の認識につきましては、財団法人日本証券経済研究所・金融商品取引法研究会「公開買付け制度」の著名な教授のご報告とその討論部分がたいへん有益だと思いました。同時に、なかなか軽々には論じ得ないほどに金商法と会社法の役割分担の問題を含む困難な問題を抱えていることも理解できました。以前、日経「法務インサイド」でもとりあげられていましたカネボウ事件東京高裁判決の課題についても、このご報告で、わずかではありますが理解できたような気がいたします。
ところで、いろいろと解釈に課題のある公開買付規制でありますが、昨年のアデランス株主総会の直前に、ユニゾンキャピタル社が条件付きTOBを届け出たはずですが、届出ようとされていたはず(結局中止)ですが、「ユニゾンが推薦する取締役候補が選任されないことを撤回の条件とする」ことは、(仮に開始された場合)TOBを撤回できる金商法上の条件に該当したのでしょうかね?もし、なにかこの件について参考となる文献等ございましたらご教示いただきたいのですが・・・
(追記)2月9日の日経夕刊や読売朝刊の記事によりますと、住友商事社がJCOM株式に対してTOBをかける準備をしている、とのことです。住商とKDDIで経営権争奪の可能性もあるとか。ちょっとマニアックな話題かと思っておりましたが、大きな問題に発展するのかもしれません。
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