監査役会が機能しないことが「重要な欠陥」に該当するとされた事例が出ましたね(内部統制報告制度)
いつも拝見している武田先生のブログで知りましたが、2009年10月決算会社までの調査では、3147社が内部統制報告書を初年度に提出し、そのうち重要な欠陥が期末に残り内部統制は有効ではない、と経営者が評価した会社が82社(うち1社は不備が残り、有効ではないとのこと)、意見を表明しない会社が11社ということになったようです。(つまり3%程度の上場会社が内部統制は有効と表明していない、ということになります)
ところで、京王ズホールディングス社(東証マザーズ)の内部統制報告書を拝見しますと、
当社は、監査役会が規定どおりに適時に実施てきていないことが判明いたしました。これは全社的な観点からの内部統制が整備・運用できなかったことに起因するものであります。これは監査人の指摘により発見されたものであり、是正する時間的猶予がなかったことから、事業年度の末日までに是正できませんでした。
とあります。(内部統制監査人は清和監査法人さん)ちなみに有価証券報告書を読みますと、3名の監査役さんについては、とくに期中に変更となったわけではなく、いずれも6年から8年ほどの在任期間でありまして、監査ができない環境にあったとか、期中の会計監査人との連携・協調が困難であった、という事情もみられないようです。招集通知添付書類のほうでは、社外監査役さん方について、取締役会への出席率等の記載はないようですが、決まった監査役会にはすべて出席されていたように記載されております。どのあたりに問題があったのかは、よくわかりませんが、監査役(もしくは監査役会)が機能していない、という「統制環境上の問題」が財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高く、重要な欠陥に該当する、とされた事例はきわめて珍しいのではないでしょうか。この点につき、監査役監査報告のなかでも、なんら触れられていないようです。(株主構成上、とくに質問が出るような雰囲気の総会ではなかったのかも)
ただひとつ気になりましたのは、3名の監査役さんの報酬額がきわめて低額なこと。とくに社外監査役さんは年間60万円(おひとり当り)!?ほんまかいな?月5万でまともな監査はちょっと無理じゃないでしょうかね(^^;; でも監査役報酬がいくら低額でも、問題が発生した場合の「善管注意義務」のレベル感について、報酬の多寡は一切考慮されないでしょうし、ちょっとたいへんかも・・・。(以上、備忘録程度にて失礼いたします)
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コメント
有価証券報告書ですが、一連の報道をみるに、
今年はトヨタ自動車が一番気になりますね。
投稿: unknown | 2010年2月 4日 (木) 23時35分
お久しぶりです。tonchanです。
私のような内部監査部門にいる内部統制担当者にとってみれば良い開示
といえるかもしれません。「実施基準」では内部統制の限界という記載が
有りますが、内部統制に係る内部監査部門の限界も存在します。
そもそも、会社法の立てつけである経営者を取締役会が監視するという
事自体もなかなか困難な要件です。全社的な統制の本当に重要な企業の
意思決定に係る部分は内部監査部門ではとても対応できません。
その意味で内部統制制度の大きなピースが監査役であることを今回の
開示は示しているように思います。企業のガバナンスを保証する手段と
しての内部統制は内部監査で評価できますが、ガバナンスに近い部分は
とても評価できません。
その意味でこの開示をとても高く評価しているtonchanでした。
投稿: tonchan | 2010年2月 5日 (金) 09時36分
「監査役会が規定どおりに適時に実施できていない」というのに関して、
提出会社さんが実際どうであったかは別として、事務方が書類だけ
ととのえて現実の会議を招集・開催していないケースをよく聞きます。
非上場の取締役会でよくある現象が上場会社の監査役会で広く残存
している可能性はあります。私の知る上場会社では考えられませんが
一般的にはどうなんでしょう?
毎回でないにせよ、一部そういう運用が発見されたのかもしれません。
まったくの想像の世界ですがね。
具体的に何がどうだったのか、今後どうFIXするのか等に関し、総会で
質問が出るのが正常なことだと思います。
投稿: JFK | 2010年2月 6日 (土) 18時07分
監査役は、統制環境・モニタリング等として評価することとなっていますので、実施基準に従った「重要な欠陥」の開示ということでしょうが、ガバナンスと内部統制の関係はもう少し整理すべきかと思います。
ガバナンスの問題を、「重要な欠陥」として開示した例として「シャルレ」がありますが、「当社では、重要な欠陥の主な原因は、機関設計の選択(委員会設置会社)にあると考えている」と開示しています。会社の執行側が行う内部統制評価としては、踏み込みすぎているように感じます。
投稿: 迷える会計士 | 2010年2月 6日 (土) 22時49分
皆様、コメントありがとうございます。
なるほどシャルレの事例は存じ上げませんでした。
そういえば、ユニオンホールディングス社の事例において、年2回しか監査役会が開催されなかった、という報道がありました。取締役会の状況と比較すると、監査役会の開催状況というのは、おそらく会社によって千差万別であることが予想されますね。(私も、このあたりは日本監査役協会のアンケート調査結果程度しか認識していませんが・・・)
投稿: toshi | 2010年2月 8日 (月) 20時48分
zaitenというアングラっぽい雑誌で社外取締役制度批判をやってます。
記事内容そのものに価値はないかもしれませんが、真っ向から社外取締役
制度批判をやってる、しかも下衆っぽい目線で、のが活字になるのは
大変珍しいと思いますのでご覧になってみてはいかがでしょう?
投稿: @ | 2010年2月 9日 (火) 17時05分
@さん、ご教示ありがとうございます。
実は先週、梅田の旭屋書店でZAITEN、読みました。おっしゃるとおり、かなり批判的な内容でしたが、それなりに面白かったです。(田村代表も写真入りで掲載されていましたね)社外取締役ネットワークも、いろいろな問題を抱えているようですが、関西でも、まあ東京でも結構まじめにかつ活発に活動は行っておりますよ。でも、本当に供給源としての魅力があるのかどうかは未知数ですが。。。それと、そのうち社外取締役にも「期待ギャップ」などと揶揄される時代がくるかも。。。
また、ご意見お待ちしております。
投稿: toshi | 2010年2月10日 (水) 00時55分