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2010年2月16日 (火)

JR東海道新幹線事故にみる「情報と伝達」の重要性

(本日はとくにムズカシイ内容ではございませんので、どうか気楽にお読みください)

今日の日経ニュースによりますと、1月29日に発生したJR東海道新幹線の架線切断事故につきまして、社長さんが「初歩的なミスだった」と謝罪の会見をされたそうです。(日経ニュースはこちらです)たしかパンタグラフのボルトの締め忘れが原因だったようですが、12号車のパンタグラフにだけ「確認シール」を貼っていなかったために、比較的早期に事故原因が判明したもののように記憶しています。

これはブログに書くべきか迷っていたのですが、実はこの日、私は日本監査役協会中部支部の講演がありまして、終了後、大混乱の名古屋駅で2時間ほど新幹線を待っておりました。そして「のぞみ33号」博多行きに乗車してヘトヘトになって大阪まで帰ってきました。(15時15分発ののぞみ33号が名古屋駅に到着したのが19時10分ですから、私などまだマシで、東京から乗車してきた人は本当にお疲れさんだったと思います)車内は本当に「修羅場」でした。

ボルトの締め忘れも初歩的なミスであり、二度と同じミスを繰り返してほしくないのは当然です。ただ私と同じようにJR名古屋駅で復旧を待っていた人たちにとって、もうひとつの大きなミスに遭遇しましたのは(忘れもしない)駅のアナウンスでありました。

大混乱の名古屋駅のアナウンスはこのようなものでした。

「たいへんご迷惑をおかけしております。ただいま新横浜・小田原間におきまして、沿線火災のために架線が切断され、現在復旧工事を行っております。列車が遅れておりますのでもうしばらくお待ちください。」

おそらく私を含め、名古屋駅で駅員に詰め寄りかけていた人たちは、このアナウンスを聞いて「もらい事故」だからしかたがない・・・といった気持ちになっていたと思います。しかし自宅に帰ってニュースを見ましたら、なんと名古屋駅のアナウンスは大嘘でして、皆様ご存知のとおり、切断された架線が沿線の野原に落ちて、焦げた架線から火災が発生した、というものでありました。これは架空の話ではなく実話でありまして、おそらく名古屋駅にあのとき待機していた大勢の方がアナウンスを記憶しているはずです。

「この大嘘野郎!」と一瞬思いましたが、本当のところはあのアナウンス駅員には悪意はなかったのではないか、と冷静に考えるようになりました。人間は有事になると自分に都合のいいようにしか考えない、というコンプライアンスの原則がまさに適合する場面だったのではないでしょうか。おそらく本部から名古屋駅への連絡では、ほぼニュースと同じような情報が第一報として入ってきていたのではないかと推測いたします。しかしながら、あのように乗客に詰め寄られた状況のなか、本能的に自分に都合のよいように真実を取り違えてしまうのですね。いくつかの情報伝達経路を経るうちに架線事故→沿線火災、という順番が沿線火災→架線切断というように変わってしまい、それが真実であると信じ込んでしまったのではないでしょうか。(本当に悪意で虚偽の説明をした・・・ということでしたら、大問題でしょうけど)

今回は「笑い話」(でもないか?)で済むようなものでしたが、情報が混乱するために大きな企業不祥事につながるケースも出てきます。いまリコール問題が大きくクローズアップされていますが、法律上のリコールに該当するかどうかはむずかしい事実調査が必要ですよね。情報の伝達に不手際があり、調査に時間がかかりますと、せっかく事実調査が終了しても、そのころにはマスコミがすでに報道していたりして、「マスコミが騒いだので、やっと重い腰を上げた」といわれることになります。一方、事実調査が早期に終了しますと、世間で問題になる以前にリコールを公表することになりますので、かえって会社の信用が高まることにもなります。つまり「情報と伝達」は、企業の社会的信用が毀損されるのか、維持されるのか、を分ける大きなモノサシになりかねません。

「情報と伝達」の関わる内部統制については、平時から訓練は可能だと思いますし、けっこう小さなトラブルの解決でもトレーニングになります。この名古屋駅のアナウンス事件のような例は、探してみるといろんなところで見つかるかもしれませんね。

2月 16, 2010 コンプライアンス経営はむずかしい |

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コメント

名古屋駅で、そのようなアナウンスがあったとは、知りませんでした。

「情報と伝達」の混乱で、発生しかねないと思います。

しかし、間違ったアナウンスであったと認識したなら、直ちに訂正のアナウンスをすべきでしたね。Toshiさんも、「自宅に帰ってニュースを見ましたら、」とのことで、多分訂正するアナウンスは、なかったのだと思います。

訂正することは、勇気も必要ですが、訂正をしないで、ずるずると行くことは、絶対避けるべきで、コンプラやガバナンス以前というか、最も遵守すべきことと思います。

投稿: ある経営コンサルタント | 2010年2月16日 (火) 14時51分

初めまして。時折拝読させて頂いております。
単なる感想で恐縮なのですが、

>おそらく私を含め、名古屋駅で駅員に詰め寄りかけていた人たちは、このアナウンスを聞いて「もらい事故」だからしかたがない・・・といった気持ちになっていたと思います。

ここでもし、「初歩的なミスで生じた架線切断」というアナウンスが入っていたら、怒りで駅員に詰め寄る人が大量発生していたのではないでしょうか。そうなると、ただでさえ混乱状態で大変な駅員さんに必要以上の業務負荷がかかってしまい、さらなる混乱が生じる可能性もあるのではと思います。

こういった場合の最優先事項は「危険な状態を招くことなく、正常な運行状態に戻す」ことであり、そのために必要な情報(いつをめどに動き出すとか)を早めに最小限に提供していく必要があると思います。混乱を招くような余計な情報は真実であってもこの段階では伝えなくても良く、詳細な原因等は正常になってからでも充分ではと個人的に思います。こういった場合のノウハウは、鉄道会社や大人数の興行を開くイベント会社などが持っていそうな気がしますね。

とはいえ、ウソまでついていいかというと、そうではないとは思いますが。。
(トンチンカンなコメントでしたら、申し訳ございません)

投稿: denden | 2010年2月16日 (火) 22時39分

嘘も方便やね。
何事もすべて正直に話すことが良いわけではないのだと思います。
特に緊急時ならばお客さんを落ち着かせることが最優先されるべきでしょう。もしかしたら、そういうマニュアルがあったんじゃないですか?

不祥事を隠す事はまずくても、ある程度表現を和らげて無難な発表に落ち着かせることが良いケースもあるのではないかと。ウソとまでは言えないけれど、必ずしも正確ではない程度の発表で乗り切れるときは乗り切るのも経営者の手腕だと思います。特に、反社や総会屋関係は正確でない発表で乗り切ってしまうのがベストだと思いますよ?

反面、死傷事故のような重大な不祥事が起きてしまったり、その虞があるとしたら下手に隠すより包み隠さず発表することが結果として最良の結果をもたらすと思います。人の道にそれるような自己保身は叩かれたときにダメージが大きいですし、事が起きてから様々な恨みを買ってしまいます。もたらす結果と比べて得る利益の少ない姑息な自己保身こそが企業の信用を損なうものだと思います。

投稿: ターナー | 2010年2月17日 (水) 03時14分

Toshiさん、こんにちわ。
たった今、月間「監査研究」で、Toshiさんの「企業において「情報と伝達」を有効に機能させるための実践」を拝読させていただきました。
この記事中には有りませんでしたが、このブログの事例のようなケースも要素として有るのですね。
「情報と伝達」...奥が深いです。
追記:写真で初めてToshiさんを拝見しました。予想では眼鏡をかけた色白な方、でしたが、なかなかワイルドなご尊顔でした!

投稿: 外資系損保内部監査人 | 2010年2月19日 (金) 13時07分

皆様、ご意見ありがとうございます。どれもなかなか骨のあるコメントで拝読させていただき勉強になりました。(たまには、こういった少し軽めのエントリーもいいですね)
DENDENさんやターナーさんのコメント、なるほど・・・と思いました。私は基本的には経営コンサルトさんと同じ意見でしたが。
コンプライアンスと「うそも方便」、これはおもしろいテーマですね。墓場まで持っていけるウソなら良いのですが、その場をともかく安全にすごすためのウソというのも、クライシスマネジメントとしては一考に値するのかもしれません。ほかに、もっと好例とかありませんかね?なんか議論するのに適しているような?(笑)これ、真剣にエントリーにしたいです。

内部監査人さん、はじめまして。お読みいただきありがとうございます。
あの写真はちょっとコワイです。実物はもっとやさしいタイプです(笑)
しかしだんだん亡くなった父に似てきているなぁ。。。と写真を見てぞっとしておりました(^^;  また今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: toshi | 2010年2月21日 (日) 01時56分

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