« 監査役会が機能しないことが「重要な欠陥」に該当するとされた事例が出ましたね(内部統制報告制度) | トップページ | KDDIのJCOM出資方法の適法性と公開買付け規制の解釈(その2) »

2010年2月 8日 (月)

サントリーとキリンの統合交渉決裂へ

ちょうど3年前、某上場会社の社外役員として、勝ち負けのはっきりしない企業統合のむずかしさを経験をした者(基本合意→交渉決裂・合意解消→マスコミ・株主からのご批判)からすると、今回の交渉決裂は「予想されたこと」どころか「当然の流れ」ですし、むしろレター・オブ・インテント締結の前にこのような結果になっただけでもよかったですよね。基本合意書を巻く以前に(一方が創業家の資産管理会社が大株主であり、EDNETによれば、そこに個人・法人の株主が多数存在するわけですから)統合比率を検討するのであれば、内容として様々な条件が(たとえば非公開会社の株主対策に関する条件が)盛り込まれるわけですし、労働組合の意向なども当然に聞こえてくるわけですから、次第に現実が見えてくるわけで。

日本の食品産業がグローバル化のなかでスケールメリットを必要とすることは理解できるのですが、その高邁な理想とは裏腹に、勝ち負けのはっきりしない企業同士の統合交渉を進めることは、「会社は従業員のもの」であることの「現実」(法のタテマエとは異なる現実という意味です)を思い知らされる場面だと思います。あまりにも(社内的にも、社外的にも)統合するには無理が多かったですよね。おそらくご異論もあるかとは思いますが、日本を代表する双方の会社に大きな傷を残さないうちに、統合解消を決意したことは(両社の今後のグローバル競争において)たいへん賢明だと思います。

PS 

今、日経新聞夕刊の1面を読みましたが、世界に対抗しうるグローバル企業出現への期待が破られ、非常に落胆の色の濃い内容の記事ですね。(同様のご意見の方も多いと思います)でも、勝ち組の従業員の方々の企業文化へのこだわりはすごいものがありますよ。勝敗がはっきりしている企業の再編や監督官庁(仕切り役)のある業界であればまだしも、「勝ち組どうし」ということになればおそらく「企業価値の毀損」は免れないこと強く肌で感じることと思います。1+1が2にはならず、1.5くらいになることが実感できると思います。統合交渉をしてみて初めてバランスシートには乗らない「無形資産」の重み(企業文化の重み)を再認識するはずです。でもこれは実際に統合交渉をしてみないとわからないですよね。なにせ、勝ち組同士の統合など、ほとんどの企業経営者にとっては、「一生に一度あるかないか」の経験ですから。

2月 8, 2010 商事系 |

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104680/47512885

この記事へのトラックバック一覧です: サントリーとキリンの統合交渉決裂へ:

» ザ・企業文化 キリン-サントリー統合取りやめ、その他雑感 トラックバック 元・経営コンサルタントの投資日記
キリン側の発表 加藤社長「統合比率を詰める以前に、上場企業として独立・透明性を維持する上で考え方が一致しなかった」サントリー側の発表 佐治社長「断念の理由は統合比率。日本で大きなシェアを確保して海外に余力を振り向ける考えだったので、今後の事...... [続きを読む]

受信: 2010年2月 9日 (火) 12時51分

コメント

そもそも統合比率も決めずに、話が先走ってしまったことに、株主から何らかの「そしり」を受けることなどないのでしょうか、と思ってしまいました。
法的責任がなくとも、キリンの株主に期待させたわけですし。

産業再編的には大きな後退ですね。

キリンの取締役の責任は重そう(道義的にも)。
一方、ご指摘の通り、トップが決めても部下が動かない(?)という日本的なカイシャ概念は健在だったのですね。

投稿: katsu | 2010年2月 8日 (月) 14時06分

katsuさん、早速のコメントありがとうございます。おそらくkatsuさんは統合決裂で残念に思っておられるでしょうね。

統合比率を決めずに走るのは、どうしても社内でインサイダーの犯罪者を出さないためにも必要な場面もありますので、やむをえないこともあるように思います。

敵対的買収防衛のときもそうですが、やはり「従業員の意向」は会社の有事には大きいなぁ・・というのが、経験者の実感です(笑)

投稿: toshi | 2010年2月 8日 (月) 14時24分

経験も実体も知らないのに、生意気ですが、

結局、キリン側にサントリー創業家が出来上がり持ち株会社の拒否権を与えるのが嫌だった、という点が全てなんじゃないか、という風に思っていたのですが。

その場合は、協議の基本前提すぎますので、企業文化「も」重要要因にしている可能性はないでしょうか(邪推かもしれません)?

企業文化が水と油であることは、当初から外部でも想像できたはずです(実際交渉すると、さらにその差が広がった可能性もありますが)。

結局、従業員がうまく融合できないと、おっしゃる通りの企業価値毀損になりますので、破談の大義名分となる。

拒否権の話になると、従業員レベルではなく、金曜会あたりの意向なんてのもチラついたりしました。

残念ですね。後に続く企業が出にくい、という点では。

従業員の意向というより、部長・執行役員レベル以上レベルの意向というのが、直感的な感じがします(部長を先生の意味する従業員とするかしないかは微妙ですが)。
もっともこれは私の経験ですが。

投稿: katsu | 2010年2月 8日 (月) 18時18分

いえいえご異論大歓迎です。というか、むしろkatsuさんのご意見のほうがマスコミ含めて多数意見ではないでしょうか。

>企業文化が水と油であることは、当初から外部でも想像できたはずです(実際交渉すると、さらにその差が広がった可能性もありますが)。

↑ご指摘のとおりかと思いますが、水を残すのか、油を残すのかはわからなかったと思います。酒類、医薬品、飲料など、噂が広まるにつれて、いろいろと問題が発生しますでしょうし、従業員の意見を納得させる理屈がないと思います。

もちろん創業家の問題もあると思いますが、このあたりはエントリーにも書いたように、拒否権を付与する代わりに創業家の意見が反映されないような工夫さえ通らなかったのでしょうね。このあたりはおそらく守秘義務のベールにつつまれていると思いますが。

投稿: toshi | 2010年2月 8日 (月) 20時39分

テレビの報道を見ていましたら、サントリー創業家に拒否権となる3分の1以上の株式を持たせたくないのがキリンの意向のように受け取れましたが、
拒否権を持たせることがそんなに問題なんでしょうかね?
私の勤務している会社のように筆頭株主でさえ10%程度だと、
株主の意向?というより経営陣の独断専行を防止できないのが、
株主総会の実態のように思われます。むしろもっと株主の意見が言えるようにならないとまずいのではと感じています。
サントリー社長がインタビューで言われてましたが、創業家が大株主だから経営の透明性を損ねるというようなことは関係ないような気がします。

どちらも優良企業のようですから、せっぱつまった統合の必要性はなかったような気もします。

投稿: 元システム監査人 | 2010年2月 9日 (火) 09時34分

元システム監査人さん、こんばんは。

私の経験からですが、せっぱつまった統合の必要性はあまり感じていなかったものと思います(笑)というよりか、こういうのはトップ同士の意気投合であり、また意気投合もタイミングが必要だと思います。
また、後からいろんな人たち(?)が登場することで、興ざめすることもありますよね。(たとえば○○投資銀行とか)
拒否権の問題なども、本当はあまり関心がなかったところ、後でいろんな方々が、知恵を貸してくれるものですから、ひとつの「モノサシ」として登場してきたのではないかと思います。(たぶん・・・)

投稿: toshi | 2010年2月10日 (水) 00時49分

■最初から無理な話でした
こんにちは、DMORIです。久々に私がコメントできそうな話題ですので一筆。
この統合話には、最初から無理がありました。最も大きな前提は、サントリーのオーナーが経営権を手放すことに同意しているかどうかです。オーナー企業側が経営危機を抱えて、公開企業に救ってもらう、という図式なら、オーナー側も覚悟するでしょうが、今回の話はそういう前提ではありませんね。
単に経営の効率化や企業規模の拡大という、目先の課題に食指が動いて始まったのでしょう。

サントリーのオーナー側が、経営統合しても自分が筆頭大株主の座を続けていきたいつもりなら、そんなことをキリンという一般公開企業の株主が認めるはずがないのです。
そうした根本的なことを始めに確認せずに、統合話を公表してしまうとは、2社とも有名な大手企業なのにこんなレベルかと、不思議に思いました。

投稿: DMORI | 2010年2月10日 (水) 12時50分

私の感想はやや低レベルなのですが、結局、
①サントリーの創業者一族が「上場会社とは何か?」という本質的なところを理解できていなかった、という点に尽きる、と感じています。あと、
②従業員的には(これも想像の域を出ませんが)「なんでいっしょになる必要があるんだ?みんな、社内で頑張ってきているのに」、という、両社内に「プライド」からの抵抗が強かったのではないか?と想像しています。
②については、むしろとてもよく理解できます。
いずれにても、「最初からムリの多い縁談」、必然的破談、という印象を持ちます。

投稿: 伊藤晋 | 2010年2月10日 (水) 13時04分

役務そのものにブランド固有の価値を観念できない(こんなこと言うとおこられそうですが)銀行などの統合とは違った難しさがあると思います。
伊藤様の②のとおり、やはり大手飲料メーカー、とくにビール業界は、商品自体にブランドの色や匂いがしみついてます。その裏で日夜独自の物づくりに励んでいる方々がおられて、他社に負けまいとがんばっているのですから、別個の企業風土(アイデンティティという意味で)が育つのは当然でしょう。誤解しちゃいけないのは、一方が良く(上場会社で開かれた先端的風土etc)他方がイマイチ(同族会社で内向的etc)と勝手に決め付けられないことです。

合意に至らなかった点は様々でしょうが、会見を見て感じたのは、何か一つが突出した理由ではないものの、ある時点からサントリー側が冷めていったんじゃないかということ。おそらく、色々なパーソナリティの支配株主から諸々の消極意見が出たことは間違いなく、業界内での独自性・異質性等も考えると、そういった消極意見を乗り越えてまで統合するメリットが見いだせなかったのでしょう。
結婚前に破談したのは、ある意味よいことです。

後日、「上場も視野に・・・」とおっしゃったのを見て、正直、やめといたほうが…と思いました。

投稿: JFK | 2010年2月11日 (木) 01時07分

DMORIさん(おひさしりぶです)、伊藤さん、JFKさん、コメントありがとうございます。本当に残念・・・というご意見もあれば、所詮無理だからやめといてよかったというご意見もあり、縁談がこわれたときの御親戚たちの意見に良く似ていますよね(^^;

あまり本筋とは関係ありませんが、キリンの社長さんが「公平性、透明性を維持することが困難と思った」とのスピーチがありましたが、あれはサントリーからすると「あんた、人のこと言えまへんがな」とも言えそうな気がします。3分の1を持てば、たしかに創業家一族が重要議案の拒否権を持つことになりますが、役員構成によってはキリン側が第三者増資を行わない、という確約もないのでは?(以前、たしかキリンさんはTOB+第三者割当増資の手法を活用したことがあったように記憶していますが・・・)

投稿: toshi | 2010年2月11日 (木) 22時18分

コメントを書く