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2010年2月 2日 (火)

競争法コンプライアンス体制と違法行為の発見的手法

今年に入って、またパワハラ関連の内部通報が増えてきました。手書きのメモを正式な通報受理書面に書き換え、これをチェックするのに深夜までかかり、なかなかブログを更新する時間も採れないのが現状であります。

1月29日に経済産業省HPにて、競争法コンプライアンス体制に関する研究会報告書がリリースされております。内容は主に副題にありますように、国際的な競争法執行強化を踏まえた企業・事業者団体のカルテルに係る対応策が中心でありますが、一般の不正リスク低減のためのコンプライアンス体制整備においても参考となりそうであります。とりわけ、報告書では予防、問題発見、問題発生時の対応に分けて、ヒアリング対象企業の参考例なども掲載されており、コンプライアンス体制向上のための自社の取組みに応用できる点もありそうですね。

私自身がもっとも関心を持っておりますのは、やはり「違法行為の発見」に関する部分(報告書89ページ以下)であります。公認不正検査士(CFE)の業務は、主に不適切な会計処理の発見、調査といったあたりでありますが、ここでは内部監査、内部通報、社内リーニエンシーが効果的な手法として掲げられております。営業部門に対する内部調査・・・という手法は、たいへん骨の折れる作業かとは思います。PCのメール調査という手法も、基本的には調査手続きに関する規約と一般的な承諾に関する規約があり、またPC自体もすべて会社保有のもの、ということでしたら調査は可能かと思いますが、結構たいへんな作業でありまして、人的資源に限界のあるところではなかなか進展しない可能性が高いように思います。(つまり定例的なメール調査というのは限界があり、ほかに疑わしい点が確認されたうえでの非定例的な調査手法、というのが一般的ではないでしょうか?)また、このあたりは営業担当者のほうが心得ていて、(いちおう禁止されているかどうかは別として)最近は同業他社の営業マンどうしの連絡は携帯メールを使用するところもありますよね。

毎度、セミナーでは申し上げるところですが、予防や発見後の対応については、それなりにお金を出せば質の高い体制が整備できるところでありますが、この「違法行為の発見」についてはどんなにお金を出しても質の高いものを作ることは困難であります。発見機能については、基本的に個人の才能や資質に頼るところが多く、そのような資質や才能を持った個人がいない企業においては、ひたすら地道な社員研修やトレーニングの積み重ねによって発見的能力を磨いていくしか方法がないものと思われます。(もちろん、その際にはトップのコミットメントは不可欠であります)たとえば定例の内部監査によってどのような情報を定期的に集めれば、先に述べたような「疑わしい点」を察知する(推論することができるのか(「疑わしい点」が察知されたら、そこから深度ある調査に移行することになります)、その「情報と伝達」体制の整備から始めていかねばならないものと解されます。

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コメント

コンピュータ屋です。
いつもお世話になっています。
おっしゃること2点
「ひたすら地道な社員研修やトレーニングの積み重ねによって発見的能力を磨いていくしか方法がないものと思われます。」
「その「情報と伝達」体制の整備から始めていかねばならないものと解されます。」
まさにそのとおりですね。

私も「情報と伝達」体制の整備のひとつである内部通報制度のIT上の運用について、特に周知・研修のところに力を入れて検討しいます。
ある弁護士事務所さんの協力をいただいて実現をめざしています。

これらのコンピュータ屋の方向は、法律家さんと協調してのしくみ作りもひとつと思っています。

投稿: コンピュータ屋 | 2010年2月 2日 (火) 10時27分

コンピュータ屋さん、コメントありがとうございます。

「情報と伝達」ですが、最近のトヨタリコール問題でも、これは重要な論点だと思います。リコールには社内調査と改善計画の早期確定が必要になりますが、情報の集約の時間によって、対応が後手に回ってしまうケースが多いと思います。もしタイムラグが生じてしまえば、マスコミや消費者が騒ぐ方が先になってしまい「リコール隠し」や「マスコミが騒いだので重い腰を上げた」と評価されてしまいます。逆に早期対応に成功すれば、むしろ品質重視の信頼できる企業というイメージをもたれます。
消費生活用製品安全法に関連する「製品不具合」問題も同様ですよね。
このあたり、戦略的な営業にもつながる大きな課題だと思うのですが。

投稿: toshi | 2010年2月 8日 (月) 20時55分

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