日航の上場問題と「空飛ぶ簿外債務」-その2
ちょうど2カ月前に「日航の上場問題と『空飛ぶ簿外債務』その1」におきまして、なぜこの方に光があたらないのだろうか?(もっと話題になってもいいのではないか?)と書きましたが、やっと話題の中心に上られたようであります。(民主党がJAL問題で勉強会、過去の粉飾決算の疑いなど検証」ロイター記事より)民主党の第1回目の勉強会で細野祐二氏が講師に招かれ、旧経営陣および監査法人が刑事責任を追及される可能性がある、とのお話をされたそうであります。すでに4年も前から細野氏が警鐘を鳴らしておられたところだと思いますが、細野氏の「法廷会計学VS粉飾決算」を読みますと、会計について素人である私でも「何が問題なのか」よく理解できるところでありました。細野氏の財務分析の思考でたいへん勉強になりますのは、「Aという数字、だからBが推認される」という単純なものではなく、「Aという数字、だから本来ならばCにならないとおかしい。でも、実際にはBという数字に変わっている。なぜ?推認されるのは・・・」という時間軸も含めた推論の進め方であります。やっぱり「後だしジャンケン」ではなく、現在進行形で「おかしい」と言い続けておられた方のご意見というのは、研究に値するものではないかと思います。まだムズカシイ立場にいらっしゃいますが、どうか頑張っていただきたいです。
そしてもうひとつ、上記エントリーで予想しておりましたのが「OB従業員の方々の乱」でありますが、サンケイビズのニュースによりますと、3月2日JALに弁護士、会計士5名によるコンプライアンス委員会が設置され、期間限定ではありますが、元従業員や取引先からの内部通報を受け付ける窓口を設置するそうであります。(サンケイビジネスアイはこちら)年金減額という「大騒動」がありましたので、私の予想では、もうすでにいろいろと(皆様、墓場まで持っていこうと決めておられた)過去の不祥事につきまして、持っていくだけの義理を果たす必要もなくなったことから、たぶん出てきているのではないかと勝手に推測しております。(これって人間の自然な感情だと思います)
ただ、私の外部窓口の経験からしますと、(わずか1カ月余り、といった)期間限定窓口というのは失敗するケースが多いです。重要な内部告発や内部通報ほど、一回の通報で不祥事の全体が把握できる可能性が低いからであります。今回のJALの連絡窓口は、あくまでも情報をそのまま吸収するだけのものかもしれませんが、通常は内部通報の情報を、社内調査のために整理する必要があります。この整理がメールや電話ですぐにできるかというと、まったく困難でありまして、何度も聞きとりをして、やっと受理できる情報になる・・・というのが正直なところです。(なかには通報制度の濫用という場合もありますので、かなり慎重な聞き取りが必要です)したがって受付期限を設けてしまいますと、その期間内に事実を整理することができず、そのままアウト・・・ということも考えられます。とくにこういった窓口への通報は匿名のものが多いので、匿名性を保証しながら、となりますとそのあたりはかなり厳しいのではないかと。
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