「無煙タバコ」への対応は結果無価値か?行為無価値か?
3月4日に「受動喫煙防止措置は法令遵守かCSRか?」というエントリーをアップいたしましたところ、また議論の対象になりそうなニュースが登場しております。JTが5月から、首都圏を中心に「無煙タバコ」なるスグレモノを発売されるとか。(ニュースはこちらです)喫煙者である私としましては、非常に興味をそそられる一品であり、いまから入手するのを楽しみにしておりますが、興味をそそられるのは、無煙タバコそのものだけではなさそうであります。
神奈川県受動喫煙防止条例によりますと、この無煙タバコは規制の対象外ということですので、おそらく法律(条例)上は不特定多数の人が集まる場所でも喫煙が可能ということになりそうです。ということは、神奈川県だけでなく、厚生労働省の通知による全国自治体の規制におきましても、とりあえず分煙や禁煙の地域においても、この無煙タバコはセーフ、ということになるのでしょうね。もちろん、愛煙家にとって、どれほど受け入れられるかは微妙でありますが、ともかく分煙や禁煙のマークのあるところでも、タバコを吸いたいという意識をお持ちの方にとってはありがたいタバコということになるのではないでしょうか?
ただ今朝(3月18日)の日経新聞によりますと、大手外食チェーンのS社は、「無煙タバコを店内でOKとするかは思案中。とりあえず現物を確認してから・・・」とありました。たしかに無煙タバコですから、「受動喫煙」という実害は生じないようです。現在いろいろと分煙や禁煙活動が進められている根拠が、「他人に害を与えない」という受動喫煙に関する医学的な見地からですので、その医学的な実害がないかぎりは、どこでも無煙タバコはOKではないかと思われます。ただ、それは「実害」という見地からのものであり、「他人のタバコを吸う姿を近くで見たくない」という、いわゆる「行為」からの見地ではありません。日経新聞にも記載されておりましたように、おそらくタバコを吸わない方々にとっては、(これだけ分煙や禁煙が進んでいる社会におきまして)店内のあちこちで「ぷかぷか」とタバコを吸う姿をみるだけでも不快感を抱くことは間違いないところであります。なかには、「たとえ煙を吸わなくても、吐く息にはニコチンが含まれているのだから、受動喫煙と同じではないか」とおっしゃる方も出てくるかもしれません。(現に、毎日新聞ニュースによりますと、わずかながら、吐き出すときにタバコのニオイがするそうであります)また、ひょっとしたら喫煙者も「ここはタバコを吸ってもいいんだ」と錯覚をして、「オネエサン、灰皿!」と、普通のタバコに火をつける方も出てくるかもしれません。さて、そういうことになりますと、外食産業としましては、この「タバコを吸わない人の不快感」を尊重して無煙タバコも一切禁止する、という選択肢も当然出てくるのではないでしょうか。
「実害」を重視して無煙タバコを「禁煙から除外」するのか、それとも「タバコを吸う行動」を重視して、無煙タバコも「禁煙措置に含む」とするのか、これからいろいろな場所で、この選択が迫られるものと思います。たとえば新幹線の禁煙車両ではどうなるのでしょうか?(フジサンケイ・ビジネスアイのニュースでは「新幹線や飛行機で吸える可能性のある・・・」とぼやかした表現が用いられています。)たぶん、隣に座ったオバサンとか、絶対に嫌な顔するでしょうね?(笑)小さな居酒屋さんなどでは、商売に影響することですから、除外という選択に走るものと思いますが、いわゆる上場会社たる外食産業チェーンなどは、これからどういった選択をされるのか、どちらへ集約されていくのか、そのプロセスに関心が寄せられるのではないでしょうか。(もっと思い切って、CSRの観点から「そもそも喫煙者自身の健康増進に寄与するため、そして将来の医療費削減に寄与するため、当店は無煙を含めすべて禁煙といたします」とする考え方もあるかもしれません。まぁ、あくまでも「無煙タバコ」が普及すれば・・・のお話でありまして、見向きもされなければとくに大きな問題にもなりませんが・・・)
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コメント
無煙タバコ、Smokeless tobacco、はスカンジナビア半島で盛んです。
スヌースとかスナッフとか言われています。
スウェ―デンの「スイディッシュマッチ」というメーカーが有名で、非常に洗練されたマーケティングで、日本では考えられない高級感があります。モノは見せようでしょうか?
http://www.swedishmatch.com/
http://www.swedishmatch.com/en/Media/Images/
アメリカでは、最大手のアルトリアグループが無煙タバコ会社を昨年買収しており、米国では一般のタバコは年率数量ベース3~4%のダウンですが、無煙タバコは年率5%程度成長している「成長産業」となっています。これは一般のタバコから無煙タバコへのスイッチが起こっていると考えられています。
理由は値段が安いのと、他人に迷惑をかけない、吸える場所が広がるなどです。
JTのようなパイプものは記事の通り珍しく、ふつうはティーバッグのようなものに湿ったタバコの葉を加えて歯ぐきからタバコ味をしみ込ませるような感じだそうです。
ただし、欧米で議論になっている一つに、未成年者がタバコに接近するような誘惑を一切遮断させる、というものがあり、ミント味は将来的にダメになる可能性が残っています。
今吸っている人の権利をはく奪しないけど、未成年者を誘惑するのはダメ、というのが各種の規制の根っこの考え方のようです(宣伝広告とか昔はF1のスポンサーといえばタバコメーカーでしたが、今はダメ。公共の場所で吸ってはいけない、というのもこういった理由が大義名分の一つ)。
また、無煙と言っても健康に悪いわけではないという議論もあり、愛煙家の方は休まる暇がなさそうです。
投稿: katsu | 2010年3月19日 (金) 11時01分
はじめまして。
すいませんが取り急ぎコメントしたいと思います。
当方非喫煙者ですが、タバコの問題は煙だけではないと考えています。この無煙タバコ、火気の点はどうなんでしょうか? それと吸殻の点は? これらの不始末が残念ながら嫌煙家と喫煙者(特に男性)のいざこざの原因だと思います。
できれば当方のブログでもちょっと時間ができたら書きたいと思います。何かあればメッセージやコメントでも。
・・・ちなみに当方、以前貴兄が書かれた企業のCSRに関するニュースの、まさにその会社に勤めていて、内情を知っているのであの件はどうなのかなという印象も持っていますが、それも機会あれば。
投稿: fisico | 2010年3月19日 (金) 23時51分
前回非喫煙者の立場でコメントしましたので、その流れで一言。
無煙でも口からタバコの臭いがするとのことですが、これは程度問題だと思います。飛行機、新幹線など席が隣り合う場所はちょっと嫌かもしれませんが。
このタバコが普及すれば、(従来の)喫煙を公の場で認める必要性は薄れていくのだと思います。パブリックスペースを禁煙化していくことが無煙タバコの普及を助け、さらにそのことがパブリックスペースでの禁煙化を促す、そんな循環ができてくれればと思います。
投稿: nori | 2010年3月20日 (土) 08時13分
皆様、コメントありがとうございます
katsuさんがご紹介されているような事情はまったく存じ上げませんでした。
いや、ホント、けっこうこの問題はどうなるのか気にしております。
私も実際に手にとって、試してみたいです。
本当にパブリックスペースでもオッケーなのでしょうか。そうなればnoriさんがおっしゃるように好循環も夢ではなくなるのですが。
投稿: toshi | 2010年3月21日 (日) 01時32分