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2010年3月 4日 (木)

受動喫煙防止措置は法令遵守かCSRか?

先日の温泉偽装事件につきましては、いろいろとコメントをいただきましてありがとうございました。私の予想どおり、あれから大阪府の立ち入り調査があったそうですが、いままで出ていなかった問題が調査で判明したようで、産経新聞ニュースで報じているようであります。○○菌が混入していたのに報告していなかった・・・というのは、いくら南大阪地域の方々が太っ腹といっても、ちょっと気持ち悪いかも・・・です(^^;。

ところでグローバルダイニング社(東証二部)が本日(3月3日)、事業の中核であるレストラン店舗のすべてについて3月1日より禁煙とした旨リリースされております。健康増進法に基づいて、厚労省が各自治体に「不特定多数の人が利用する場所では原則全面禁煙」とする通知を出したことに対応するものだそうであります。(ちなみにグローバル社が「今後も推進していく」と宣言しておられる健康増進法25条というのは、いわゆる受動喫煙防止をうたった規定です。)神奈川県条例を機に県内全店を全面禁煙としたロイヤルホストさん(ロイヤルHD株式会社)もそうですが、外食産業にとっては、これからきわめて厳しい選択を迫られることになりそうです。

※ 日本がたばこ規制枠組み条約を批准していることで、2007年の約束を履行する期限が迫っていることも、こういった厚労省の通知に影響しているようであります。

上場会社の監査役さん方は、今回の受動喫煙防止についてはどのように考えておられるのでしょうか?健康増進法上の禁煙措置については「努力義務」と言われておりますが、いくら罰則がないからといって、受動喫煙防止措置を何もとらない、というのはやはり法令違反に該当しますよね。かといって、(ネット上で閲覧できますが)テリー伊藤さんとの対談で、ワタミのCEOの方がおっしゃっておられるように、実際に「居酒屋のフロアすべて禁煙」としたところ、宴会予約が全く入らず大赤字になったので、すぐに喫煙OKに戻した・・・という話をお聞きしますと、「やっぱり死活問題かも」と思われます。当分の間、ペナルティがないことに甘えるべきか・・・いや、本当にむずかしい。いずれにしましても、監査役さんとしましては、会社の対応次第では「現在の状況は違法である」と指摘しなければならないのか、それとも企業の社会的責任として経営判断にゆだねるべきなのか、思い悩むところであります。

今回は外食産業や官公庁の方々が頭を悩ますところでありますが、次に控えている労働安全衛生法の改正については、「努力義務」などとは言っておられない状況になります。これは職場を原則禁煙とするもので、罰則がありますので、すべての会社にとって、従業員の職務の適正を確保するための体制の整備に該当するわけで、まさに内部統制システムの構築に関する問題であります。とりわけ私が監査役をしている外食産業の場合、従業員の受動喫煙が問題とされているのですから、緩和措置のある店舗(床面積100平米未満) が予想される店舗以外はすべて禁煙とする必要がありますね。いや、緩和措置があっても、従業員による受動喫煙の被害をなくすために全店禁煙とすべきでしょう。喫煙されたい方は、各店舗の外に喫煙所を設けて対応するしか方法がないと思いますが、いかがでしょう。

※ 100平米未満の床面積の店舗に緩和措置がとられているのは神奈川県条例でした。失礼いたしました。訂正いたします。

たしかに、さきほどのワタミさんの例でもありますように、宴会幹事の方からすれば、現実問題として全面禁煙の居酒屋をチョイスするのはちょっと気が引けますね。(なんて気の利かないやつなんだ、お前は?)と言われそうな気もします。8人くらいのグループでしたら、やっぱり2人くらいは喫煙者が混じっていると思いますし。おそらく禁煙を推進する飲食店は売上が落ちることは間違いないと思われます。ただ、お客様や従業員の健康被害を防止することは、もはや避けられない社会の流れですし、改正労働安全衛生法が施行されて「法令遵守」などと後ろ向きなことを言わないうちに、ここはCSRの一環として全面禁煙に転換していくべきではないでしょうか。全面禁煙のお店なら、きっとお酒も食事もおいしいですよ。どうしてもタバコが吸いたくなったら、とりあえず店舗の外で一服するとか。そのほうが監査役さんもいろいろと悩む必要もなくなりますし。

日本は成人男性の36%程度が喫煙者らしいですが、実は私も未だそっちのほうに入っている者ですから、余計にこの話題についてはナーバスになっております。喫煙されない方々にとっては、あまり関心がない話題なのでしょうかね?(笑)そういえば昔は普通に電車の中でタバコを吸っていましたが(考えられないですよね)、そのうち「昔は普通に電車の中で携帯の電源入れて画面見ていた時代があったよな」なんて時代が来るのかもしれませんね。

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コメント

いつも貴重な情報として拝見いたしております。
喫煙の件ですが、小職は止めて26年経ちますが、20歳から30歳まで10年吸っていたので吸われる方のお気持ちも理解できるつもりでおります。
ただ、世の中の動き、特に先進国では、室内、レストランなどでは法律により全面禁煙が常識になってきており、日本の対応がとても遅れている印象があります。日本では売上の減少で禁煙を解いた例もあるようですが、そうした自主的な対応でなく法律で網をかける時期に来ていると思います。そうすれば幹事さんがあれこれ悩む必要もありません。
(喫煙者のみなさん、ごめんなさい。でも高層ビルのオフィスからおりてきて建物の出口でタバコを吸ったり、食事の途中で、吸いたくなって席を立つ、というのも豪州やシンガポールでは、大分前から当たり前にみられる風景となっています)

投稿: SMZ | 2010年3月 4日 (木) 10時01分

ご意見ありがとうございます。
喫煙者の立場からも同感です。

最近はやっと「不特定多数の人が集まる場所」での喫煙意欲が湧かなくなりました。おそらく頭のスイッチが変わるようになったのかなあと。ただ、自分ひとりになるとまた吸ってしまうんです。100円の値上げと今回の措置で私も「吸わない人」になりたいです。

新幹線ホームの喫煙所も、ちょっといただけないですよね。
ついフラフラと誘惑に負けることも多いのですが(^^;

投稿: toshi | 2010年3月 4日 (木) 11時14分

 このCSRというのは魔物ですね。「倫理的に」つまり人間の単純な感情に沿ったことなら、およそなんでもかんでも企業に要求できてしまう。そのうち企業が外国に工場を作るのも、本社を法人税の安い国に移すのも、全部「企業の社会的責任」の名の下に制限されそうです。江戸時代に農民が土地に縛り付けられ、年貢の高い場所から動けなかったのも、きっと「百姓の社会的責任」に基づいていたのでしょう。
 こんな「国体ヲ変革シ」よりも曖昧な概念で企業を拘束するのは危険です。「法的な拘束力はない」なんて詭弁にすぎない。事実、この言葉を使うのはほとんどが法律家です。やはり早急にその詳細を定め、それぞれの個別の責任を明文化したうえで、精査し、議論し、場合によっては一定条件の下に免責するとか、あるいはCSRの限界は一体どこにあるのかなどを考えていかないといけません。「倫理」の名の下に統治された時代が、恐怖政治にならなかったことなど一度もない。まあ、この国がそうなっても、法律家の方々は「聖職者」なので関係ないかもしれませんが。
 こんな風に少しでも企業を擁護してしまうと、「新自由主義者」として異端審問を受ける日が近い気がして、大変不安です。

投稿: taru77 | 2010年3月 4日 (木) 11時23分

taru77さんのご意見、いいですね。

温泉偽装事件に関するエントリーにもつながると思うのですが、「社会的責任」の「社会」というのは非常に漠然とした概念ですね。法令遵守とは違うということが前提であれば、おそらくCSRを支えるのは一体誰なのか、本当にそのような責任を述べるだけの根拠があるのか、また法律で規定せずソフトローにまかせるほうがよいのはなぜか、といったあたりを精査する必要はあると思います。
私はソフトローという規制を肯定する立場ですから、taru77さんからご批判を受ける立場かもしれませんが、おそらくご指摘の点は留意しなければ、と思っております。

投稿: toshi | 2010年3月 4日 (木) 11時55分

タバコを吸わない者から見ると、吸っている人は吸わない人の迷惑
なんて意識にないのかな?と思ってしまいます。
私が一番やめてほしいのは歩きタバコですね。
前を歩いている人が吸っていると煙が流れてくるので、早く追い越して
しまおうと思いますが、大勢いるとどうしようもないですね。

東京の新宿区は歩行禁煙だったと思いますが、都全体とか大阪市内全域とか、もっと言うと全国で歩行禁煙とかできないものですかね?
少なくとも都心部はしてほしい。多くの人が歩いているので、衣服にタバコの火をつけられたというようなことも結構あると思います。

飲食店は最近禁煙の店も増えてきたようで喜ばしいと思っています。
居酒屋も全部の店が分煙とかになれば売上への影響も減るのでしょうが、
どこが勇気を持って取り組むかというようなことになるのでしょうか?

ワタミの社長さんもいろいろいいことを言っているようですが、
客が減ったからすぐに止めたというのでは・・・もう少しポリシー
を持った人かと思っていました。

投稿: 元システム監査人 | 2010年3月 4日 (木) 13時22分

元システム監査人さんのご意見を拝見して、そういえば「嫌煙権」という言葉をきかなくなって久しいなぁと感じました。

受動喫煙という、かなり医学的にも害悪がはっきりした概念が出てきて、嫌煙権運動というのは縮小してしまったのでしょうかね?あれはたしか人格権的な発想から出てきたように記憶していますが。

投稿: toshi | 2010年3月 4日 (木) 13時57分

子供が出来てから、今やホタル族。この季節はホタルも凍え死にそうです。日本中で禁煙になることで、どのような影響が出るか考えると、危険なことも想定する必要がありますよね。医者が言うには本数は減らすべきだけど、ストレスが溜まる方が体に良くないとも言われました。更には今では日本で普及していない紙タバコが普通になって、より子供手を出す危険は増えたり、就業中にクチャクチャする人間も増えるでしょう。フィルターが無い分ニコチン摂取は多くなることも。更にはタバコに変わるものとしての薬物の蔓延。喫煙者からすれば都合よく悪くなることを書きましたが、Taspoの導入でコンビニのタバコの購入が増え、若干は変化が出たのですが、次は日本中で禁煙となれば、タバコ産業は絶滅。失業者の増加。タバコの税金も入らなくなり、4年後の消費税の増額へと拍車がかかるのでは?などとも考えます。やるならタバコの販売ごと禁止にすれば一番良いのでは無いでしょうか。その分、タバコ産業に関わる人間への救済措置が前提ですけどね。タバコやめられるかなぁ…?人間はやめませんよ。

投稿: takepon | 2010年3月 4日 (木) 15時51分

昔NYに住んでたことがありましたが、レストランは屋内完全禁煙で本当に快適でした。
日本もいよいよここまで来たか、と感慨ひとしおです。
コンプラだのどうのと構えずにお客さんのためにグローバルダイニングに続く店が出てくることを期待しています。

居酒屋はさすがに分煙でいいと思いますが。

投稿: nori | 2010年3月 4日 (木) 16時33分

私は国家の過剰な介入に辟易としている人間の一人です。政府(government)の仕事は、タバコの煙が身体に有害であることを精緻に研究し国民にデータを公表することで足ります。つまり、身体を害してまで自ら喫煙するか否か、身体を害するおそれを認識しつつ他人の煙を吸うか否かを国民自身が判断できるようにすればそれでよいのです。
政府が業態や床面積という基準で規制範囲を恣意的に切り取って介入するのはナンセンスです。問題なのはタバコの煙の有害性であり、有害性が明白であるならば、了解していない他人に煙を吸わせる行為そのものが加害行為(少なくとも、いわゆる迷惑行為)だからです。
政府が害の有無・程度を知らしめることプラス、全面禁煙・分煙・全面喫煙の別を店舗入口に表示する義務を課すことで、社会の利益対立は充分に均衡すると考えます。子どもと一緒のときは全面禁煙の店を選択するでしょうし、喫煙者の同僚と飲むときは分煙または喫煙の店を選択するでしょう。経営する店舗でどの対応をとるかは、各店が客層を自己分析した結果の判断で各々決めればよいことです。ワタミさんがそのようにされたことは経営判断として当たり前の行為です。おそらく、ファミリー向けの店舗を展開される場合は分煙ないし禁煙とするでしょう。「政府に言われなくとも」です。
このように考えていくと、嫌煙者の多い社会では自然と禁煙の店が増え、社会全体が分煙で回ってゆきます。止まったところが均衡点です。政府は積極的情報提供だけやっていればよいのであり、直接介入する必要性はありません。害の深刻性が明らかとあらば、喫煙そのものの違法性が議論されるべきです。

喫煙者にサービスを提供する労働者の問題は残ります。しかし、排気ガスの漂う道路上で交通整理にあたるなど、ある程度有害・危険な環境で労務従事する方々は不可避的に存在するのですから、ここでの問題もやはり有害性の程度です。受動喫煙でも身体に深刻な影響を及ぼすのならば、分煙室または開放的な屋外で自己責任で吸うほかは、喫煙行為そのものが違法であるとしないとつじつまが合いません。大量に吸引しなければ身体に害が生じないという程度ならば、労働者の危険を減らす対策(特殊マスク着用等)に向かうのが穏当です。害の有無・程度が現在の科学で特定できないならば、電磁波におびえるのとたいして変わらず、規制にはおよばないでしょう。

申し遅れましたが、私は喫煙者です。

投稿: JFK | 2010年3月 4日 (木) 22時56分

JFKさんにお聞きしたいのですが、
歩行喫煙(自転車に乗りながら吸っている人もいますが)について
どのようにお考えですか?
店舗の場合は選択すればよいとの事で、私もそう思いますが、
歩行喫煙には罰則を設けないと、喫煙者のモラルに期待するのは
無理と思いますが?

投稿: 元システム監査人 | 2010年3月 5日 (金) 09時09分

そうですよね。
私は、歩行喫煙は煙の害というよりも「火種を持って歩く」という危険の観点から罰則付きで規制されてもやむを得ないと思います。ただし、その危険性は火種と他人の接近が前提ですから、群衆の中とか、類型的に人が集まりやすい駅前の一角に限るべきでしょうね。
タバコをふかしながら自転車で河川敷を颯爽と走るくらいのことは自由にできないとおかしいと思います。

煙の害が深刻なのだということが明白ならば、誰一人居ない場所で、一人で吸うこと以外は違法だと言われたほうがすっきりします。

p.s. 昨日のコメントの後半部分は極論すぎたかなと反省しております。害の有無・程度が科学的に特定されていないとしても、環境政策でいう「予防原則」的な考慮で政府が介入することまでは否定しません。

投稿: JFK | 2010年3月 5日 (金) 21時44分

すっかり乗り遅れました。
私は内外のタバコ会社に投資するものとして、興味あります(元愛煙家です)。ドイツ等ではすでに法制化されていたと思います。しかし、その後の禁煙率の減少幅はそれまでと対して変化なかった気がします。

タバコという商品は極めて政治的な扱いを受けていますね。健康に悪いといっても貴重な税収であることは世界の国々で証明されていて、財政悪化となるとすぐに増税対象になります(ギリシャが最近たばこ税を引き上げ。アメリカでも昨年思いっきり引き上げた)。

日本でも10月に増税確実ですが、アメリカではマルボロが1パック5ドル以上しますので、先行き値上げ要素が多そうです(日本でも先行してマルボロ30円値上げするのですね)。

民主党さんも人気取りと税金取りのはざまの商品がタバコという感じですね。

先生、めげずに吸ってください(笑)。

投稿: katsu | 2010年3月 7日 (日) 01時26分

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