証券市場の健全性確保と弁護士の役割
表記のセミナーが本日(3月25日)大阪弁護士会にて開催されました。(大阪弁護士会と大阪証券取引所の共催事業)1時半から4時半までの長丁場の講演でしたが、幸い120名ほどの会員、関係者の方々が聴講され、なんとか無事終了いたしました。
会員弁護士(証券取引所に出向経験のある方)、大証上席上場管理役の方の講演につきましては、すでに数回の打ち合わせを重ね、この日を迎えておりましたので、講演内容はおそらく我々会員弁護士にとって有益なものだったと考えております。
そして私も含め、聴講者一同が楽しみにしていたのが佐々木清隆氏(金融庁・証券取引等監視委員会総務課長)の講演であります。SESCのWEBサイトを見ましても、まぁいろいろなところでご講演をされておられるので、講演内容につきましても(たいへん失礼ながら)他のところでお話いただいている内容でも十分に盛り上がるのでは?と(講演主催者側としては)考えておりました。
いや、でもホンマにおもしろかったです。。。
といいますか、おそらくこの方はサービス精神が旺盛なのではないかと。。。
詳しい経緯につきましては、ブログでお話することも控えさせていただきますが、まずインサイダー取引関連で申し上げると「デジタル・フォレンジック」についてSESCはさらにパワーアップするみたいであります。(たとえばパソコンや携帯電話の会話内容の復元などが典型的なところですね。最近課徴金審判決定が出ましたが、あのような紛争事例などでも有力な証拠となりそうであります。なぜデジタル・フォレンジックが「パワーアップ」するのか、というあたりはちょっとご勘弁ください・・・ただ、過去の膨大な失敗例を糧としているところが金融庁の強みかと。。。)
そしてもうひとつが「不公正ファイナンス」の絡みで、「最近の新たな手口」であります。これを聞けただけでも今日、聴講させていただいた価値は十分ございました。これって絶対に弁護士が関与してるだろうなぁと思われるものばかりであります(笑)。ライツ・イシューが取引所規則の改正で使いやすくなると、その途端に「悪用の手口」に利用されてしまうんですね・・・・・なるほどなぁ。。。こういったお話を拝聴しますと、「こんなんやったら157条(金商法157条、いわゆるバスケット条項です)つこたらええんとちゃうの?」と思料いたしますが、あくまでも個別条項(たとえば158条)で対応される方針のようであります。(この「個別条項へのこだわり」は、たしか大森事務次長さんの「金融法務事情」の連載でも書かれていたような気がいたしますし、木下氏の2月ころの旬刊商事法務の「最近の証券取引等監視委員会の活動」に関する論文でも触れられていたように記憶しております。)
ただ弁護士が第三者委員として公正独立の立場で業務を遂行する論拠として「社長個人からではなく、会社から報酬をもらうということであれば、ステークホルダー自体の利益擁護という視点から職務を考えられないか」、「弁護士会が品質管理として弁護士の業務を監督できないか」というお考えにつきましては、会計士協会と弁護士会とではその立ち位置に大きな差があるものと認識しておりますので、まだまだ議論が必要な点ではないかなぁと(少なくとも私は)考えております。効果的な市場監視におけるリスク・アプローチとして、市場での弁護士の関わりをとらえるには、まだまだ課題が山積しているように思います。
「本日、聴講されていらっしゃる弁護士さんのなかに私どもがマークしている方がおられないことを祈りつつ・・・」(あちゃ。。。(^^; )
たいへんなご準備をいただいた2名の講師の方々、そして総務課長さま、本日はどうもありがとうございました。m(__)mおかげさまで、業務改革委員会の副委員長として、今年度最後のお仕事を無事終えることができました。
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コメント
SESCの総務課長さんは、今日は会計士協会で講演でした。大阪弁護士会での資料を拝見すると、本日の資料とほぼ同様で、しっかり使いまわししてますね。
ところで、会計検査院から「簡易生命保険の加入者福祉施設等の譲渡等に関する会計検査の結果についての報告書」が出てますね。大部なので全部は読んでいませんが、減損の会計処理とその前提である不動産鑑定の問題点が指摘されています。
本日の講演でも、不公正ファイナンスの新たな手口として「不動産による現物出資の場合の鑑定評価の問題」が挙げられていたように、不動産鑑定は今後とも大きなテーマになりそうですね。
投稿: 迷える会計士 | 2010年3月29日 (月) 22時32分
迷える会計士さん、こんばんは。
このエントリーにコメントがつくとは思っておりませんでした(笑)
そうですか、もう会計士協会で講演されたのですか。あのレジメの「使いまわし」だと、どれくらいの時間でご発表されたのでしょうか?
不動産鑑定さんのお話は、弁護士会でも興味あるお話のひとつでした。
そもそも不動産の現物出資だと、鑑定士だけでなく意見書を書く弁護士あたりにも「?」という方がいらっしゃるようで・・・
まことに「ふしぎな」開示がこれからも出てきそうですね。
投稿: toshi | 2010年3月30日 (火) 01時19分
ちまたで問題になっている闇紳士たちが関わるケースでは、ファイナンスのスキームそのものよりも、見せ金で増資して即時に社外に流出していたり、紐付きで価値の無いものに化けてしまう犯罪行為が問題であって、ここまでくるとファイナンスをすること自体が不公正なのですから、もはや手の施しようが無いというのが現実でしょう。
日本は法令の整備が未熟すぎて、不公正ファイナンスが問題になる段階にすら到達していないと言えます。
投稿: ターナー | 2010年3月30日 (火) 03時44分
ターナーさん、いつもご意見ありがとうございます。
見せ金の件は課長さんの講演でも示唆されておりました。事後規制ではなく、事前規制が喫緊の課題ということでしたが、やっぱり不公正ファイナンスに対する事前規制の手法はまだまだ整備されていないということなんでしょうね。「怪しい開示」についてのお話なんか、もっとこのブログでやりたいのですが、各方面にご迷惑がかかるので、ちょっと控えております。ホントはそういうのが一番おもしろいと思いますが。。。
投稿: toshi | 2010年3月31日 (水) 02時04分