« 商事法務のコンプライアンス-その光と影- | トップページ | 闘うコンプライアンス(トヨタ・リコール問題編) »

2010年4月 5日 (月)

待ち遠しいビックカメラ元役員に対する課徴金審判決定

先日、味の素社員によるインサイダー取引に対する課徴金審判決定が出されまして、その内容を精査いたしますと、わずかばかりではありますが、違反行為に対する金融庁の立件方法が垣間見えてきて、たいへん興味深いものがありました。先日もご紹介したように、デジタルフォレンジックの重要性や、社員のインサイダー取引摘発及び立件に対する会社側の協力体制の重要性なども考えさせられるところがございます。この事件は納付命令(行政行為)に対して取消訴訟が提起されたようですので、今後は裁判所で争われることになります。(ちなみに味の素社の株式交換の相手方だったカルピス社の社員の方については、すでに争わない旨の答弁書が提出され、課徴金納付命令は確定しております)

ところで、もうそろそろ審判決定が出てもいいのではないか、と思われるのがビックカメラの元役員の方に対する課徴金納付命令に関する否認審判手続きですね。有価証券報告書(正確には同社報告書に基づく目論見書)虚偽記載事件についての1億2000万円余りの課徴金納付命令が勧告されているものであります。上の味の素事件の終結直後である3月17日ころに審判手続きが終結しておりますので、今週あたり決定が出るのではないでしょうか。ただ、味の素事件の審判期日が4回に対して、ビックカメラ元役員さんについては6回開催されておりますので、事案の争点および事実認定とも複雑なのかもしれません。また、法人たるビックカメラ社は、すでに事件について争わない旨の答弁書を提出しておりますので、これが元役員さんの審判にどのように影響を及ぼすのか、このあたりも気になるところであります。(果たして法人たるビックカメラ社は、創業者である元会長さんにとって不利益となる証拠を積極的に金融庁に提出しているのでしょうか?このあたりは大いに悩ましいところではないかと。。。)

ただ弁護士として、本当に取り扱ってみたいのは、インサイダー取引事件にせよ、有価証券報告書虚偽記載事件にせよ、クロかシロか、を審判や裁判ではっきりさせることよりも、刑事事件として起訴相当と思われる事件をなんとか課徴金納付命令事件(行政処分事件)に落とせるのではないか、という事案でしょうね。クロかシロかを争うことよりも、よっぽどこっちの方が難しい仕事ではありますが、行政事件を取り扱う弁護士としてはやりがいを感じるところであります。おそらく刑事事件と行政処分事案とでは、行政当局での組織も変わってくるでしょうから、相当に困難が伴うかもしれませんが、当事者にとっては最も切実な局面でしょうし、それゆえにプロとしての弁護士の力量が問われる最大の場面ではないかと。現実問題としては、証券取引等監視委員会に出向経験のある(現場感覚を持ち合わせた)法律家が、この分野ではもっとも能力を発揮できるのではないでしょうか。当局にとりましては市場の健全性確保のためにリスク・アプローチの手法で事件処理に臨まれるわけですから、「前例がすでにある、ごくごくありふれた事案」なのか「たとえ検察庁と全面協力してでも、世間に示しをつけなければならない事案」と考えるのかは、やっぱり中にいた人の感覚でないとわからないところもあるのではないか、と思われます。

|

« 商事法務のコンプライアンス-その光と影- | トップページ | 闘うコンプライアンス(トヨタ・リコール問題編) »

コメント

もし、元会長の主張通り違反がなかったとの決定となった場合、ビックカメラに対する処分との関係はどのようになるのでしょうか。自ら違反を認めた場合には違反となるが、異議を申し立ててそれが審判で認められれば違反ではなくなる、という矛盾した状況になってしまいます。この事態をどのように解釈すべきでしょうか?

金融庁が主張するように、財務諸表規則によると豊島企画は子会社に該当し、リスク負担割合から、資産流動化の会計処理を金融取引とすべきであったと言えるでしょうか。資産流動化が実行された平成14年当時、ビックカメラは未上場会社ですから、その後上場したからといって子会社判定を財務諸表規則で行わなければならないのでしょうか?
確かに上場後においては、豊島企画を子会社となりそれを前提とすれば、ビックカメラのリスク負担割合は30%となり、会計士協会の実務指針により、資産流動化の会計処理は金融取引としなければなりません。しかしながら、実務指針ではリスク負担割合は形式ではなく実質で判断すべきものとされています。今回のスキーム(元会長が保有するビックカメラ株を担保に融資を受け、資産の買取資金に充当する)は、ビックカメラ自体にリスクがあると言えるでしょうか?
さらに、会計士協会の実務指針の規範性がどの程度であるかも論点ではなるのではないでしょうか。ASBJの策定する会計基準は、明文をもって「一般に公正妥当会計基準」とされていますが、会計士協会の実務指針はそれより下位の規範として位置付けられるのではないでしょうか。

このように様々なな論点があり、単純に不正な会計処理であったとは断定出来ないように思われます。

投稿: 迷える会計士 | 2010年4月 5日 (月) 16時37分

 審判を傍聴しに行った方からの情報ですと、会長やビックカメラは適正意見書をもらったかどうか、もらったとすれば著名な方かどうか、とても気になります。
 著名な会計士の意見書に従って行動してそれが課徴金となるようでは、大変ですよね。また、課徴金は課さないけれど不適切な処理ということであれば、当該会計士の処分の問題となりそうだし・・・。
 意見書があると、金融庁は難しい問題を抱えそうですね。

投稿: Kazu | 2010年4月 6日 (火) 11時44分

迷える会計士さん、Kazuさん、コメントありがとうございます。
審判に行かれた方のブログを拝見しますと、審判長は指定職員、被審人代理人いずれにも会計処理が問題となりそうなので、意見書を提出するなら早めに提出するように・・・との指示があったようですね。
また、味の素社員の件とビックカメラの件では審判員が同じメンバー(といっても、そもそも4名)のようですので、法曹資格者だけで構成されているわけですね。迷える会計士さんの指摘しておられるような問題をどのように処理されるのか、これも楽しみになってきました。

会社としては認める旨の答弁をしたとしても、代表訴訟を提起されることを念頭に置けば役員個人としては争う・・・ということも考えられるかもしれませんね。虚偽記載による課徴金ということなので。なにが会社の損害になるのか、という点では若干問題はあるでしょうが。

投稿: toshi | 2010年4月 7日 (水) 00時54分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 待ち遠しいビックカメラ元役員に対する課徴金審判決定:

« 商事法務のコンプライアンス-その光と影- | トップページ | 闘うコンプライアンス(トヨタ・リコール問題編) »