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2010年4月 7日 (水)

闘うコンプライアンス(トヨタ・リコール問題編)

本日は新聞報道に対する感想にすぎませんが・・・・

少し前までは「安全神話」、つまり品質管理が問題とされていたトヨタ・リコール問題でありますが、アメリカ政府による15億円の制裁金賦課の件で、経営管理の問題に発展してしまったようであります。現場における「安全神話」は必要ですが、経営陣における「安全神話」は「悪い情報を信じない」「使用法に問題あり、と即断する」方向へ走ってしまうリスクを伴うわけでして、欠陥を隠す気持ちは毛頭ないわけでありますが、欠陥を認めるまで時間を要し、その結果として「欠陥を知ってて隠していた」「マスコミに指摘されて、やっと重い腰をあげた」と世間では評価されることになってしまいます。まじめに商品作りに取り組む会社でも、商品に誇りを持っているがゆえにリコールリスクも大きいのではないでしょうか。

「製品の欠陥を知ってて放置していた」という事実による制裁金だそうですが、これはなんぼなんでも認めるわけにはいかないのではないかと(トヨタ社としては「現在、対応を検討中」とのことですが)。もちろん品質管理の面においてはできるだけ誠意をもって今後の対応策を検討すべきではありますが、経営管理つまり「欠陥を知ってて放置」ということになりますと、制裁金だけでは到底済む問題ではないでしょうし、法令違反行為に関する経営判断として、日本でも大きな裁判が起こってしまうものと思われます。なにより、従業員の士気にも関わってくるのではないでしょうか。

これまでトヨタ・リコール問題はいくつかの過程を経ておりますが、経営管理問題に火がついてしまった現時点において、まさに最大の正念場がやってきたのでは。たしかに長引けば信用問題に傷がつくかもしれませんが、あやふやな対応では更に大きな傷がつくのではないかと思います。「闘うコンプライアンス」の典型例として、まさに今回のトヨタの対応に注目しております。

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コメント

全く別件ですが。

12月決算の・・・・・の内部統制監査報告書は間違っていませんか?
会社の内部統制報告書では、「内部統制は有効でない」としていますが、監査人の内部統制監査報告書では、「内部統制は有効であると表示した・・・適正に表示していると認める」となっています。

投稿: 迷える会計士 | 2010年4月 7日 (水) 23時16分

迷える会計士さん、こんばんは。
訂正有価証券報告書を確認したところ、訂正されておりました。(私もエントリーを書きかけてしまいました)

しかし、重要な点で訂正がされているということは、ちょっと問題がありそうですね。名門の中堅監査法人ですし。

投稿: toshi | 2010年4月 8日 (木) 00時29分

訂正報告書の方確認しないまま、お騒がせしました。

監査法人側の重要な誤りですから、審査等の監査法人自体の品質管理(内部統制)の問題ですね。

投稿: 迷える会計士 | 2010年4月 8日 (木) 09時16分

はじめまして。いつも勉強させていただいております。きょうのニュースなどを読んでいますと、どうも米国政府から15億円の制裁金が課せられる可能性が強くなってきたようです。
私の疑問は、欠陥を放置するのと、欠陥がどうか時間をかけて調査するのとでは、どう違うのか?ということなのですが、このあたりは明確な基準があるのでしょうか?そもそも「欠陥」と判断する客観的な基準がなければ議論がかみ合わないように思うのですが。
また、先生のご意見など、時間のあるときにでもお聴きしたいところです。

投稿: ローカル弁護士 | 2010年4月10日 (土) 11時43分

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