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2010年4月20日 (火)

これはおススメ!会計士協会「不正調査事例分析」

トヨタ社が「欠陥隠し」を否定しながら15億円の制裁金を払うことの意味がよくわかりません。「故意」ではなく「過失」による不具合の連絡ミスに、過去最大の制裁金が課せられるのでしょうか?ということは、今後、日本の企業は「ふっかければ制裁金を出す」という前例を作ってしまうのでしょうか?ゴールドマン・サックスがSECと徹底抗戦に出る方針であることと比較して、このトヨタ社の方針は果たして妥当なものなのか、有識者の方々のご意見をうかがってみたいものであります。(早速、アメリカ政府はトヨタ社が15億円を払うことを奇貨として、さらに問題がみつかれば制裁金の追加を検討している、と報じられておりますが・・・・・)

さて、ある会計士さんから「先生が好きそうな報告書がありますよ」と教えていただいたのが、本日(4月19日)日本公認会計士協会のHPで公表されております「上場会社の不正調査に関する公表事例の分析」(経営研究調査会研究報告第40号-リンクは控えますので、ご興味のある方は、会計士協会のHPで閲覧してみてください)。

まだ全部は読めておりませんが(125頁!)、ホントおもしろいです。会計士の方々の研鑽のための報告書でありますが、我々弁護士のほか、上場企業の管理部門の方々も、平時におけるリスク管理の一環として社内研修に使えるような内容になっております。ここ5年以内に不適切な会計処理(会計不正)に関する情報開示を行った企業30社の事例分析を中心として、社内調査委員会や社外調査委員会のあり方なども研究されており、非常に有益なものであります。(私の場合、こういった報告書を読むのが大好きなので、この30社のうち、ヒマラヤ社を除く29社につきましては、すでに分析済みでありますが・・・・)

とても嬉しいのは、ACFE(公認不正検査士協会)の「不正及び不正調査に関する基本概念」を一章設けて紹介されているところです。(いわゆる不正のトライアングルですね)会計士協会のこういった報告書でACFEの「不正概念」が広く紹介されるのは「ACFE JAPAN」苦節○年、ナミダモノの出来事では?(ToT)/

「実際にはこんな単純なものではないよね~♪」といった声も時々は聞こえてまいりますが、基本となる不正調査のイロハが随所に盛り込まれております。とくに116頁あたりの「仮説検証アプローチ」は、内部監査と不正調査の区別として極めて重要な点ですし、実際には内部通報や告発によらねば会計不正が発覚しない、というのもうなづけるところであります。ちなみに、今回分析対象となった30社のリリースのなかで私の一番の好みはGSユアサ社の社外調査委員会報告書ですかね・・・)

ただ少しだけ注文をつけさせていただきたいところは、不正調査の場合、いわゆる「件外調査」がとても重要だという認識です。犯罪調査であれば、スコープした事実だけを評価対象とすれば良いのでありますが、こういった不正調査は「同じ不正が他の部署でも行われていないだろうか」といったステークホルダーからの関心にも応える必要があります。したがって、「他も合理的な方法で調査したけれど、他では見つからなかった」という結論を、どのように納得できる方法で調査し、説明できるか、という点が結構重要であります。これは会計士さん向けの報告書であったとしても、不正調査にかかわる以上は心得ておくべき点ではないかと。

それともうひとつは、「不正調査における今後の検討課題」として、グループ会社における内部統制の問題があると思います。内部統制によってある程度抑止できる従業員不正、内部統制の限界を超える経営者不正についての課題はある程度理解できるのでありますが、子会社経営陣による不正への対処・・・・というのが今後の課題であろうかと思われます。最近の近鉄さんやローソンさんの事例など、ひとつ間違えると大きな決算訂正の要因になりうるわけで、「グループ企業内部統制」という概念で対処できる問題なのかどうか、会社法の改正問題などとも絡めて喫緊に検討していくべき課題ではないでしょうか。(こちらは弁護士委員にとって重要なだけかもしれませんが・・・・)

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