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2010年5月14日 (金)

半導体製造会社の粉飾決算だそうで・・・

私が社外監査役を務めております会社も、昨日が監査法人と監査役会との最終決算報告会、そして本日が決算役員会ということでして、ブログ更新もお休みさせていただきました。たくさんの外食店舗を有する企業の場合、資産除去債務を「公正価値」として算定するのは結構たいへんですね。私は「特損計上分」と「償却分」との区別がわからず、新日本の指定社員の方に、黒板(ホワイトボード)でいろいろと説明してもらってやっと理解しました。これ、不動産取引に関する知識や経験も必要ですよね。(ちなみに、このエントリーは決算短信公表後の午後4時10分に発信しております。念のため・・・)

その間に大きな粉飾決算容疑事件が報道されていたようでして、ずいぶんと出遅れてしまいました( ̄◆ ̄;) 私がいつも拝読しているブログでは、この会社が新規上場した昨年11月時点で「この売上高と売掛金残高との関係は怪しいですね。届出書や事業リスクの表示を額面通り受け取らないほうがいいですね」と書かれておりましたので印象に残っておりましたが。。。公開資料をご覧になったアナリストの方が、新規公開時に堂々と「これはあやしい」とブログで書かれるほどの内容ですから、監査法人さんや、監査役さんはどう思っておられたのでしょうか。まず、私はそこがとても関心のあるところです。(海外口座が活用されていたみたいですから、当局も調査に時間がかかったのではないかと思いますが。)

まだ執務時間なので、とりいそぎ、出遅れた話題への備忘録のみ。

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コメント

当該企業の社長インタビューとかを読む限り(確かにこの時代に極めて強気すぎる印象はありますが)とても真っ当であり他人を騙すような人物に思えないのですよね。いや、ほんと、人間というものは分かりません(笑)。

とにかく「公開を許した全ての関係者」に対する怨嗟と批判の声が掲示板やらブログやらTwitterに満ち溢れております。会計士も証券会社も皆んなグルなんじゃないか、とかね(そう思われても致し方ないです。あまりに大胆な手口というか、無能な審査・監査というか)。

再発防止策というのは、審査を厳しくするというより、不正を見抜ける人材を育てることでしょう。あと、疑わしきは認めないということ。

投稿: 機野 | 2010年5月15日 (土) 01時52分

機野さん、コメントありがとうございます。まだ備忘録程度ですので、もう少し展開が認められた時点でいろいろとツッコミを入れたいと思っています。

最近「経営学とコーポレート・ガバナンス」(だったかな?)という加護野教授らによる新刊を読んでいますが、加護野教授も「不正を見抜ける人材を育てることの重要性」やそもそも人事部がしっかりしていれば日本の会社では不正はある程度防止できる、ということを力説しておられます。(ちなみに、この本では内部統制は会社を滅ぼす・・・という立ち位置です)法学・経済学とは違った視点でなかなかおもしろいですよ。

投稿: toshi | 2010年5月16日 (日) 03時14分

加護野教授は(ご説は雑誌等で拝読したことがありますが)攘夷派ですからねえ(笑)。首肯する部分も多いのですが。

私が申し上げたいのは(加護野先生もそういう意味のことをお書きだったように思いますが。郷原さんもそういうお考えのようですが)、「制度・法律・規則さえ強化すれば、不正・問題は防げる」という誤解というか迷信、妄信に、今の日本社会は囚われてしまっているのではないか、ということです。

投稿: 機野 | 2010年5月16日 (日) 22時31分

日曜日のTDNETですが、当該企業は粉飾決算を行って上場したことを認めていますね。「判明しました」ではなく「やりました」とのリリースですから、上場廃止は間違いないのでは

投稿: とおりすがり | 2010年5月16日 (日) 22時50分

経営者が粉飾に手を染めてしまうとは内部統制の限界ですね。
私は新規上場時からの株主でもあり、株券は紙くずと化し、高い授業料となりそうです。会社も虚偽の情報を開示して上場、審査を厳格化したはずの東証の上場審査を通過、幹事証券や監査人も含めた極めて悪質な上場詐欺事件に対しては株主訴訟などの道もあるのではないかと思いますがどうなのでしょう。通常、皆さんはどのような手続きを踏むのでしょうか。会社法にある株主代表訴訟とも違いますよね。相談する方もおらず、書き込んでしまいました。

投稿: たびびと | 2010年5月19日 (水) 01時00分

金商法第二十一条の二、同第二十二条をご覧ください。アーバンコーポレイションやライブドアの事例を参考にされると良いかと思います。もっとも、会社自体は債務超過であると思われますし、役員の支払い能力には限界があるでしょう。裁判自体は勝てるでしょうが、どれだけ戻ってくるのか・・・
倒産に移行した場合、債権届出など色々厄介です。夜逃げされると、もっと厄介です。

経営者の悪事を防ぐ内部統制の構築には、監査役の存在が不可欠ですが、監査役も取り込まれていることが多いですし、全く能力のない名義貸しのような監査役もいます。そこで、わが国では独立しているはずの会計監査人が帳簿だけでも正しく作られていることを保証する制度になっている建前ではありますが、彼ら自身の能力不足が著しく、完全に闇紳士とお友達のようなモラルの低い人たちもいる状況です。

なお、簿外債務を使った粉飾でなければ、一応見抜く事は可能です。粉飾には二種類あり、架空資産を使った粉飾、簿外債務を使った粉飾があります。架空資産による粉飾は外部からでもある程度見抜けます。簿外債務が使われたら帳簿を見ても通常は見抜けません。

投稿: ターナー | 2010年5月19日 (水) 03時01分

コメントありがとうございます。
金商法読みました。提出者および提出会社の役員等の賠償責任ということで賠償請求できそうですね。支払い能力の問題からすると今回の事例は幹事証券会社に賠償責任を問う方法もあるのでしょうか。東証の審査能力の欠如によるところもあるので、東証に賠償責任を問う方法もあるのでしょうか。
上場審査の時点から粉飾をしていた点はアーバンやライブドアの時とは異なっているようですね。

投稿: たびびと | 2010年5月20日 (木) 00時24分

たびびとさん、ターナーさん、こんばんは。
私も「公表」の時期も含めて一連のライブドア一般株主訴訟の判決等が参考になるのではないかと思います。ただライブドア社の場合には、それなりに資産がありましたので訴訟も継続しましたが、ターナーさんがご指摘のとおり、はたして資産があるのかどうか、ちょっと不安がありそうです。取締役や監査役などの個人責任を追及するのも同様です。(刑事問題もどうなるかまだわからないところですね)
大証の社長さんが「これで上場できたのは異常。摩訶不思議」とおっしゃっておられましたが、どうしてこうなったのか、関係者間で今後プロセスチェックが行われることになるでしょうし、その結果を知りたいところです。とくに個人的には監査役の方々の状況がもっとも知りたいです。

投稿: toshi | 2010年5月20日 (木) 00時34分

たびびとさんの2回目のコメントを読まずにレスを付けてしまいましたので、すこしコメントがずれてしまいました。ご了承ください。

投稿: toshi | 2010年5月20日 (木) 00時38分

ネット上では、取引所、証券、会計士を激しく叱責しているようですが、私はそんなに単純ではないと思います。結果論としては、悪いイメージしかありませんが、取引所、証券、会計士がプライバシーを侵害してまでも厳格な審査などできないと思います。その意味で東証社長の会見内容は損失を被った方には理解できないかもしれませんが、軽んじた内容ではないと思いました。本件の続きのエントリーの際は斉藤社長の会見も加味して頂ければ嬉しいです。

投稿: 芋焼酎 | 2010年5月20日 (木) 00時58分

芋焼酎さん、コメントありがとうございます。失礼しました。東証社長さんのコメントはきちんと読んでおりませんでした。
ぜひ、ご主張のとおり、客観的に考えるためにも、関係者の方々のご意見をお聞きしてみたいです。
ただ、別エントリーでも述べておりますとおり、守秘義務の関係から、なかなか本当のところを知る機会に乏しいですよね、こういった事件の場合。どこまで真剣な議論ができる前提事実にアクセスできるか・・・というところですね。また、事情にお詳しい立場でしたら、ご教示いただければありがたいです。

投稿: toshi | 2010年5月20日 (木) 02時02分

コメントありがとうございます。
東証の斉藤社長のコメント、大証の米田社長のコメントを読みました。外部から粉飾を示唆する情報がどんな情報で、それに対して、やるべきことをやったという東証の審査が通常の審査以上に慎重にどれだけのことを実施したのか、検証結果が待たれます。いずれ司法の場でも、真実を明らかにしてほしいものです。
それにしても、同業の大証の社長に摩訶不思議と言われるような審査のあり方が問われている状況での「審査でがんじがらめにすることは本末転倒」というコメントは市場の信頼回復を目指すトップの発言としては、ズレている感が否めませんが・・・。私だけでしょうか。

投稿: たびびと | 2010年5月21日 (金) 02時29分

 東証の立場として、公認会計士や引受主幹事証券会社を性善説で見ることは仕方ないのかなと思います。引受主幹事証券会社は怪しい案件で著名なところではなくある著名企業グループ系列ですから、疑いにくいですよね。監査法人は、あるプロキシファイトで有名になった一部上場会社と契約している監査法人ですし、また国家資格を持つ専門家ですから、やっぱり疑いにくいでしょうね・・・。

 私としては、公認会計士と引受主幹事証券会社の責任が重いと思っております。引受主幹事証券会社や、公認会計士の所属する監査法人は、検証して公表する、というアクションは執らないのでしょうかねえ。

投稿: Kazu | 2010年5月22日 (土) 16時18分

 若干補足ですが、主幹事が経営者等のプライバシーに踏み込んでまでチェックはできない、という見方については、個人的には反対です。会社を上場することは、going public、すなわち公のものとする訳ですから、迷惑をかけないことを証明することは必要であり、そのために経営者等がある程度のプライバシーを犠牲にしてまで問題のない会社であることを証明しなければならないと思います。逆に、調査する側は、背後の投資家のことを考えて「プライバシー」という言葉に負けずに、本当のプライバシーは何なのか、プライバシーであってもそれより優先するものがあることを考えて欲しいと思います。例えば、ちょっとテーマは違いますが、役員報酬の個別開示については「プライバシー」の側面も否定できませんが、株主が拠出した資産から生み出された財産を役員がもらうという利益相反性があるので、一定の基準を超えれば個別開示もやむなしと思っています。
 それが苦痛であれば上場せずに資金調達は銀行借り入れにすればよいのではないでしょうか。もっとも、銀行も相当程度プライバシーに踏み込んだ調査を受けなければ融資をしてくれませんが・・・。

 もっとも、今回の場合は、取引先の実在性ですとか、会社のお金の流れのチェックですから、経営者個人の(会社のプライバシーではないです。)プライバシーを侵害しない方法で調査できそうなものではないでしょうか・・・。

投稿: Kazu | 2010年5月22日 (土) 16時41分

皆様、コメントありがとうございます。
保全管財人の方による記者会見なども行われたようです。だいぶ以前から監査法人を騙すために粉飾決算を計画していたようですね。保全管理人は株主による損害賠償請求権を届出債権として認める方向にあるように報じられています。

この事件は、当該会社が倒産となりますと、一般株主から倒産会社以外の誰に対して損害賠償請求がなされるのか、今後の展開を注目しています。刑事問題を含め、この事件はこれからも大きな問題を残すような気がします。

投稿: toshi | 2010年5月23日 (日) 02時03分

「実はね、ここだけの話なんだけど、この時代にあの急成長ぶり、しかも売り上げの大半は海外への販売と、どうも怪しいとは思ったんだけどね、証拠があるわけではないし、外形的、書類的には問題なかったので、株式公開を了承した/購入を推奨したのよ。ま、貴方には薦めなかったでしょ(笑)」

…てな会話が、銀座あたりのバーで、されているのであれば、(結局のところ司法なんてこういうことには無力なんでしょうけど)まあ、そういう人たちは、多分ろくな××方はされないだろうなと(笑)。
(一応伏せ字にしました)

「貯蓄から投資へ」「子どもたちに投資家教育を」
…全くもって、HAHAHAHAHAですよ。

投稿: 機野 | 2010年5月23日 (日) 23時16分

いま、どこかの国で問題となっている事例とよく似ているような>機野さん

せめてロックアップ条項が解除される直前ということで、まだ良かったのかもしれません。(>_<);

会計監査人との関係では、あらためて「期待ギャップ」が話題になるような気がしています。この点は、私が仕事がらか、会計監査人を擁護する方向での意見になってしまうかもしれませんが・・・

投稿: toshi | 2010年5月24日 (月) 00時13分

倒産会社における、金商法に基づく株主の損害賠償請求権の有無に関していろいろ問題がおきそうですね。

株主の残余財産分配請求権は債権者に劣後しますが、株主の損害賠償請求権は残余財産分配請求権とは異なります。

しかし、本件の場合、株主と債権者が完全に同列になってしまうと、債権者に株価下落のリスクを過剰に負わせる事になってしまい、適切では無いとの見方も出来ます。

一方で、会社側は嘘の目論見書で多額の資金調達を行っており、入った資金が債権者の弁済のみに回されるのも不公平な気がします。

会社が調達した資金を限度に株主全体が破産債権として持ち、そこで得た破産配当を適切に株主間で分配する方法が利口だと思うのですが、あくまで方法論であり法的な根拠は薄弱でもあります。

投稿: ターナー | 2010年5月24日 (月) 19時56分

 監査人が正当な注意義務をもって監査手続を行ったとしても、巧妙な偽装のため粉飾を発見できなかったか否かが論点となると思います。
 今回の事案では、売掛金の実在性についての監査手続が問題となりますが、報道(6月6日付産経新聞)によれば、会社は韓国の架空会社を監査人に紹介し確認が行われたようですが、有価証券届出書には主要な販売先として台湾の実在の会社等が記載されています。大口の取引先には確認を行わず、別の会社に確認を行ったとすれば、確認先の選定に問題があったということでしょう。確認先の選定から確認状の発送・回収にいたる一連のプロセスは、監査人のコントロール下で行わなければなりません。このプロセスに会社が関与したとすれば、監査手続により得られた監査証拠の証拠力は、著しく低いものとなってしまいます。
 さらに、確認金額(会社の債権額)と回答額(得意先の債務額)が一致しており、売掛金の実在性が確かめられたと監査人が判断したのであれば、職業的懐疑心が不足していたといえるのではないでしょうか。会社の売上計上基準は機械設置基準(これ自体問題があると思われますが)で、その後1年半から2年半の期間にわたりプロセス・インテグレーションが行われ、さらに技術検収が実施されるとされていますので、相手の会社が固定資産(=債務)として計上するのは、技術検収後と考えられますから、会社の債権額と得意先の債務額は一致しないのが普通でしょう。
 売上が増加しているにも拘われず、それに比例して増加するはずの運賃や旅費交通費(プロセス・インテグレーションのために、日本から派遣されるであろう技術者の出張経費)は減少しており、分析的手続も不十分と思われます。

 このように、有価証券届出書をレビューしただけでも不自然な点が見受けられますので、深度ある監査が実施されていなかったといえるのではないでしょうか。

投稿: 迷える会計士 | 2010年6月 8日 (火) 19時31分

迷える会計士さん、ご意見ありがとうございます。とりわけ後半のプロセス・インテグレーションのお話は会計実務家らしいもので、たいへん勉強になりました。(このあたりはなにか反論のようなものは見受けられるのでしょうか?)
今後とも、ご教示いただけますとありがたいです。

投稿: toshi | 2010年6月12日 (土) 18時46分

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