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2010年5月30日 (日)

上場会社のクーデターに関与する弁護士のリスク-深夜開示より-

中央経済社「ビジネス法務」7月号では、「新ルール設立なるか?第三者委員会『新時代』」といった特集が組まれておりまして、存じ上げている先生や話題(?)の佐々木氏(証券取引等監視委員会総務課長)の論稿など、有事における上場会社が開示すべき情報の適切性を担保する「第三者委員会」の役割等わかりやすく解説されております。日弁連より第三者委員会ガイドラインが公表される直前だと思われますし、非常にタイムリーな特集ではないかと。今回のお話は、この「第三者委員会」の在り方にも関連するものであります。

さて、東京の企業法務弁護士として著名な先生よりメールを頂戴しまして、「これって、先生どう思われます?」ということで、教えていただいたのが5月28日(金)TDNET午後10時に開示されたアップルインターナショナル社(東証マザーズ)の「調査報告書受領等のお知らせ」と題するリリースであります。(情報どうもありがとうございました <m(__)m> )

ちょっと表現内容は不正確かもしれませんが、ざっくりと委員会報告書のなかから問題となる部分を説明いたしますと、

上場会社において「お家騒動」(創業者・大株主かつ取締役会長の方と、取締役社長との確執)が発生した。取締役社長は、会長の勢力を社内から一掃するためのクーデターを考えていた。知人の紹介で弁護士の紹介を受けた。当該弁護士は、この社長さんの計画実行を積極的に支援することになった。2月19日にクーデターは敢行されたものの、どうやら5日間で鎮圧され、会社のリリースが錯綜した。とくに、2月19日の時点で、会社は当該創業者である取締役会長を提訴する、といったリリースを出していたため、監査役会が中心となって、第三者委員会に提訴の根拠事実の有無を調査させることになった。当該報告書では、社長を支援していた弁護士が、(依頼者である取締役社長さんに)送付していたメールを、逐一公開し、「根も葉もない事実が、あたかも存在するかのように装って訴訟を提起して、挙句に対立役員を失脚させようと画策していた」とした。

第三者委員会報告書のなかでは、「ちょっと首をかしげたくなるような行動によって、社内を混乱させた法律専門家」といった事実認定(評価?)がなされております。(もし私の要約が事実と反するものであればいけませんので、よろしければ上記リリースに直接あたっていただけますと幸いですが・・・)いやいや、ひさしぶりにスゴイ開示情報であります(^^;といいますか、報告書に登場する弁護士の方も、企業法務(渉外等)でたいへんご活躍の方ですし、第三者委員会として「ここまで書いて委員会?」といった感覚を覚えました・・・・Σ( ̄□ ̄;)。つまり第三者委員会は監査役会からの嘱託で「会社として取締役会長さんを訴えるべきか否か」を調査することが目的であるにもかかわらず、「このようなお家騒動に至った背景事情」にまで踏み込んで克明にメール内容を開示する必要があったのかどうか、若干疑問を感じます。それとも、2月の開示内容に伏線がありますので、ここまで徹底した報告書を提出したのでしょうか、そうであるとしても報告書要旨だけを開示する、という選択肢もあったような気がします。

このたびの事例につきましても、2月ころからのアップル社の開示情報を逐一チェックしておりますと、(第三者割当増資に絡む問題など)固有の事情もありそうですので、当該支援にあたられた弁護士の行動の是非を含め、感想程度しか意見を述べることはできません。しかし、たしかにメールというのは動かしがたい証拠でありまして、そこで開示されているメールの内容を拝見いたしますと、うーーーーーん、と考え込んでしまいたくなるような表現もありますね。(日経新聞の経済部の記者さんが読んだら、おそらく心外に思うようなことも・・・。)ここではメールの内容にまで立ち入ってあれこれと野次馬的に意見を述べることは差し控えますが、こういった上場会社のクーデターに関与する弁護士としては、十分なリスク管理が必要ですね。これは実におそろしい。。。私もこういった役員クーデターに関与した経験がありますが、(当然のことながら)情報交換は決して社内メールでとりあう、といったことはいたしません。「密会」で情報交換を行ったり、クーデターのリハーサルを行うのが当たり前でして、どうしてもメールでの連絡が必要な場合は役員さん個人の携帯メールですよね。また、万が一、携帯メールの情報が関係者以外に漏れた場合のことを考えて「いとし、こいし」「マコとミコ」「さくらと一郎」(ちょっと古いですが・・・)等で関係者や企業名を特定しますよね。今回のリリースにもあるように、社内メールはどんなに削除したとしても、復元ソフトで(ある程度は)復元可能であります。これは上記「ビジネス法務」7月号のなかでも「デジタルフォレンジック」として紹介されております。また、復元された返信メールには、元の送信者のメール内容もくっついているケースが多く、いずれも証拠価値の高いものとして扱われることになります。

ところで本件ではクーデターを起こす側の役員さんから、事前に状況説明を受けていたとされる監査役の方(おひとり)が「第三者委員会」から離脱していますね。会社側による説明によると「委員としての公正性、透明性に疑問があるため自ら離任された」とあります。しかし私が監査役だったら、事前に状況説明を受けた時点で、当該役員の方に、「他の監査役にも同じ説明をしておいてください」と言うか、もしくは私自身が他の監査役さんに連絡をして、こういった情報を監査役会として共有するようにします。たしかに、クーデターを起こす側としては、当該クーデターが適正な手続きによって行われたことを監査役に見届けていてもらいたいとの欲求から、最低限度弁護士や会計士などの社外監査役だけには事前にひとこと説明しておきたい、という気持ちになるのは理解できるところであります。しかし打ち明けられたほうとしましては、「一方当事者と親密な関係にあった」と言われるのは嫌ですし。もし私のような監査役がいて、事前に監査役全員が状況を知っていた場合にはどうなったんでしょうか。やはりこういった場合には、監査役会が依頼をするにしても、第三者委員会は社外の独立した者だけで構成するほうがいいのではないでしょうか。いずれにしましても、第三者委員会の在り方や、弁護士業務のおそろしさ、またリスク管理の在り方など、きわめていろいろなことを考えさせられるリリースであります。「マニュアル本」を読んでいても、とうてい学ぶことができないような事件が世の中では次々と起こっていることに気づきますね。

5月 30, 2010 商事系 |

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コメント

弁護士がここまで前面に出されて非難的に報告される例は珍しいと思います。もっとも、2月19日のクーデター決起の際のリリースを見ますと、報告書に登場する弁護士が、かなり前のめりになって、登場しています。
その意味でも、混乱の収束を投資家・株主に理解させるためには、ここまで情報開示をする必要性があると考えたものと思われますね。

① https://ircms.irstreet.com/contents/data_file.php?template=39&brand=81&folder_contents=9757&src_data=92373&filename=pdf_file.pdf

② https://ircms.irstreet.com/contents/data_file.php?template=39&brand=81&folder_contents=9757&src_data=92371&filename=pdf_file.pdf

③ https://ircms.irstreet.com/contents/data_file.php?template=39&brand=81&folder_contents=9757&src_data=92369&filename=pdf_file.pdf

会社のHP
http://www.apple-international.com/

投稿: 東京の弁護士 | 2010年6月 1日 (火) 10時17分

どうもご意見ありがとうございます。>東京の弁護士さん

このエントリーはアクセスがすごかったです。ツイッターでもずいぶんと取り上げられているみたいです。
ただ、ご指摘のとおり、この開示情報の真意は掲示いただいている2月の一連の情報も参考にしてみなければ理解できないところがありそうです。
しかし弁護士の仕事って、本当に怖いですよね。。。

投稿: toshi | 2010年6月 2日 (水) 00時33分

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