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2010年6月22日 (火)

エフオーアイ社の粉飾決算事件と内部告発の世間的認知度

関西の某研究会にて、本日はエフオーアイ社(半導体製造会社 破産手続き中)の粉飾決算の事例を検証しておりました。すでに報道されているように、本事件は株主の皆様が取引所、主幹事証券会社、監査人を相手に訴訟提起の準備中、ということだそうですので、ちょっと法的な責任問題をブログで述べることはエチケット違反になりそうですので、研究会での検討結果等のご紹介は控えさせていただきます。

ただ、本事例もマスコミで報じられているところによれば、取引所や証券取引等監視委員会に対して内部告発があったそうでして、内部の者でなければわからないような正確な情報が伝えられたそうであります(たとえばこちらのニュース記事)。匿名組合等を用いたVC(ベンチャー・キャピタル)保有の株式が市場に出回る寸前の強制調査・・・ということですから、おそらく内部告発がなければ、被害はさらに拡大していたことは間違いないところだったのでしょう。しかもVCの株式保有率が75%にも上っていた、ということであります。

本日の研究会でも話題になりましたが、世間では間違いなく「内部告発」の認知度は上昇しているように思われます。調査権限を有する行政当局、消費者団体、業界団体、マスコミ、そして2ちゃんねる・・・。告発者の告発動機にしたがって申告先が選択できるほどであります。上司は部下を会社の不正に引きずり込む、部下は最初はこれに応じるが、次第に不正行為が過激になるにつれ、終わりのない不正の繰り返しに思い悩み、耐えきれず不正を第三者に申告する、というパターンが典型例であります。

何度か申し上げておりますとおり、私自身も数社の内部通報窓口(外部窓口)を担当しておりますが、先週たいへんむずかしい通報を受理いたしました。内部通報は当該会社のA社員からでありますが、「同社のB社員が、公益通報者保護法の保護要件に該当しないにもかかわらず、内部告発をマスコミに対して行おうとしている。告発のための証拠収集方法を含め違法行為なので直ちに止めてほしい」というものであります。会社の不正を告発しようとしているBの行動であるが、その行動自体が違法行為であるから、この社員の違法行為に対して何らかの会社としての対応を求める、という通報でありまして、こういったむずかしい問題が生じるのも、一般の企業社会のなかで、内部通報や内部告発、また公益通報者保護法の意味が少しずつ理解されはじめているからではないかと思われます。

JR西日本さんもセイコーHDさんも、そしてローソンさんも近鉄さんも、ガバナンス向上のために「内部通報制度」をしっかり整備することを最近表明しておられましたが、内部通報制度をどのように整備してみても、その運用に失敗すれば内部告発は急増するわけでして、とりわけ労働力の流動化が進んだり、非正規雇用者が増加するにしたがって、「元社員」「パート社員」による内部告発はこのまま増え続けるものと思われます。正社員が減る傾向のなかではさらに特徴的ではないでしょうか。今回のエフオーアイ社のような事例が発生しますと、また規制が厳格な方向へ向かうことが懸念されるわけでありますが、できるだけ規制が過剰にならず、それでいて不正摘発に効果的な手法として「内部通報制度」「内部告発」に注目が集まるのも、なんとなく頷けるような気もいたします。

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