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2010年6月24日 (木)

株主総会の議決結果開示にみる「社外役員の独立性」への期待度

月2回発行となりました金融法務事情の記念号(1900号)はなかなかオモシロイ!一冊まるごと「SESC(証券取引等監視委員会)特集号」、オールキャストによる執筆ということで、まさに「SESCのいま」を知るには最高の読み物になっております。(強いて挙げればPCAAOB-公認会計士・監査審査会-についても特集の中でとりあげていただきたかった、というのが感想でありますが。)米国SEC(証券取引委員会)は2009年11月現在で、その内部統制には「重要な欠陥」があるとGAO(会計検査院)から評価を受けておりますが、日本のSESCの内部統制はどうなのでしょうか?先日のエフオーアイ調査などの活躍に代表されるように、適正なものと評価されるのでしょうか?

さていよいよ株主総会シーズンも真っ只中となりました。連日、「どこの会社のCEOが○億円もらってる」というニュースが飛び交っておりますが、情報開示は役員の個別報酬だけではなく、議案の賛否に関する株主の「議決権行使結果」もルール化されるようになり、なかなか興味深い結果も開示されております。日経新聞電子版のニュースで知り、ちょっと驚きましたのはバンダイナムコHDさんの株主総会で、社外監査役選任議案に45%の反対票が集まったそうであります。(第5回定時株主総会の議決権行使結果に関するお知らせ)他の役員さん方(取締役、監査役を含め)への反対票がほぼ均一(25%程度)ですから、この反対票の比率は異様に高いわけでして、私がこの候補者の立場だったら、かなり落ち込みますよ。。。(>_<)。。

弁護士の社外監査役候補者の方に関する議案でありますが、日経新聞電子版によりますと、この候補者の方は、バンダイナムコHDさんの子会社であるバンダイ社の法律業務を担当され報酬を得ていることから、米国の議決権行使助言会社は「社外監査役として疑問がある」と意見表明をされていたとのこと。しかし賛成票55%ですから、かなりの株主さんが同様の疑問を持ち、本当に「薄氷を踏む思い」での可決だったようであります。当該弁護士の方は、企業法務を取扱う法律事務所の方で、株主総会指導などに詳しい専門家でいらっしゃるベテランの先生ですから、このたびの議決権行使結果についても予想されておられたのでしょうか?(^^;;それとも、ちょっと意外な結果だったのでしょうか?

以下は私の個人的な意見でありますが、当該候補者の場合、会社法の社外監査役の要件に抵触することはありませんので、法律的に社外性に疑問がある、ということにはならないと思われます。(当該会社の顧問弁護士でも、社外監査役に就任することはとりあえずOK、と言われておりますし。)ただ、かなり問題を抱えていることは事実ではないかと考えます。たとえば親会社の社外監査役は、子会社の調査権を有しています。調査した内容に問題があれば(つまり親会社取締役の職務執行の適法性に疑問があれば)、株主に対して説明をしなければなりません。しかしながら、当該社外監査役が弁護士として子会社業務に関与しているのであれば、弁護士倫理上守秘義務がありますので、監査役の調査に対しては回答を拒否しなければならない場面が想定されます。しかしこの回答拒否は会社法381条4項の「調査を拒絶する正当な理由」には該当しないものと思われます。つまり、弁護士としての職務上の守秘義務と、社外監査役としての調査権行使、説明義務とが相対立する場面が想定され、潜在的な利益相反関係が生じる可能性が高いと思われます。このような状況が想定されるにもかかわらず、当社の経営企画室の方がおっしゃっているように「一般株主との利益相反関係にはなく、独立性は確保されている」とのことであれば、なぜそのように言えるのか、合理的な説明が必要となるのではないでしょうか。

もちろん合理的な説明がなされれば「セーフ」なのかもしれませんが、私としてはやはり「説明の必要性がないほどの外観的な独立性」を一般株主の方々は社外監査役候補者に期待しているものと考えます。実際の監査役の業務は、これまでバンダイナムコ(もしくはその子会社)のお仕事に関与されていた方のほうが、内情もよく知っておられるでしょうから、妥当性監査も含めて適任なのかもしれません。ただ、一般株主の利益が毀損されるおそれのある事態は、平時というよりも有事に関連する重要な業務執行に関するものであります。「取締役会」の監督機能よりも監査役の監督機能が重視されるのも、やはりそういった有事の際ではないでしょうか。一般株主と経営者との情報の非対称性を補完して、一般株主の利益保護の視点から物が言えるのは、独立かつ中立の立場で監査業務に没頭できる立場にある方ではないかと思われますし、そのためには(少なくとも)誰がみても外観的に独立性が維持されておられる方が適任である、と自然な感覚として判断できそうであります。

「そのへんのオッチャンを連れてきて社外監査役に選任したらええがな~♪」というわけにはいかないことは重々承知しておりますし、会社法務に精通しておられる法曹の方だからこそ、「この人なら問題はない」と会社が太鼓判を押されるのもよく理解できるところでありますが、 「社外性」と「独立性」は今後区別して考える必要があり、どこの上場会社さんにとっても、社外役員の「独立性」への配慮につきましては、この議決権結果開示の制度が、今後ボディブローのように効いてくるように思えるのでありますが、いかがなものでしょうか。これは就任時の人的属性だけの問題ではなく、たとえば2期8年を超えて「社外監査役」として居座る方にとっても要注意ではないかと。。。

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