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2010年6月14日 (月)

どうして出ない?ビックカメラ役員に対する課徴金審判決定

「もうそろそろ出るのでは?」と、4月5日付けエントリー「待ち遠しいビックカメラ役員に対する課徴金審判決定」において軽々しく予想していたのでありますが、ビックカメラの役員さんに対する有価証券目論見書の虚偽記載に関する課徴金審判の決定(金融庁)が未だ出ておりません。審判開始決定は平成21年6月26日ですから、当該審判手続きは、まもなく1年を迎えようとしております。銀行検査や、検査忌避に伴う刑事告発など、いろいろと金融庁もお忙しいこととは存じますが、審判を担当される方々は、まったく別の部門に属しておられるわけで、なにゆえこんなに時間を要するのか不思議であります。処分対象者側の事情で長引いている、ということもないと思われます。

そもそも、証券取引法改正によって課徴金制度が導入され、その処分の慎重を期するために審判手続が設置されたわけでありますが、これまで課徴金処分を課された法人、個人がその処分を不服として争ったことはなく、最近やっと味の素事件で(インサイダー規制違反ですが)否認事件に関する審判決定が下されたところであります。行政法的にみれば、この審判制度は司法制度に代替する役割を担うものではなく、あくまでも証券市場における不利益処分を迅速に解決するために設置されたものであり、審判決定に不服のある者は、その後行政訴訟のなかで、その取消を求めることが可能になっております。したがいまして、課徴金処分を争う対象者としては、この審判決定の理由を行政訴訟のなかで争うことになりますので、いかなる審判決定が出るのかは、自身の利益保護(防御権保障)のためにはきわめて重要であります。

審判手続きのルールを示す「金融商品取引法第6章の二の規定による課徴金に関する内閣府令(平成17年3月4日内閣府令第17号、以下「課徴金府令」といいます)」のなかでも、たとえば「審判官は、その職務を公正迅速に、かつ、独立して行わなければならない」(同6条)と定められており、また迅速な審理のために争点や証拠の整理を行う「準備手続き」の活用が規定されており(同30条)、さらに「審判官は、課徴金納付命令の決定をするに足りる主張および証拠の提出がなされたと認めるときには審判手続きを終結する」(同60条)とされ、もし課徴金処分の根拠となる事実が認められないときには、その旨の審判決定をしなければならない、と定められております(同61条4項)。とくに審判官は、上記課徴金府令の文言からすれば、もう当事者からの主張と証拠は出尽くした、と判断したからこそ審判を終結したわけでありまして、終結後、これまで相当の時間が経過している点をどのように理解すればよろしいのでしょうか。

上記のとおり、課徴金処分に不服のある者としては、この審判決定が出ないかぎり、どのような点に異議を申し立てて裁判を起こすべきなのか、その見通しが立たないことになります。もちろん、ビックカメラという法人自身は課徴金処分を争っておりませんが、役員個人としては有価証券報告書、届出書の虚偽記載の点を争う可能性もありますし、またそれらの書類作成に関与した、とされる点を争うことも考えられます。しかし、これだけ審判決定が出ないとなりますと、自身の主張を裏付ける証拠が散逸する可能性が高まることも考えられます(審判官から「早く出せ」と促されるわけですから、裁判と同じレベルの証拠を処分対象者側が出さなければならない、ということもいえないわけでして)。先日の味の素事件の審判決定をみると、課徴金納付命令の根拠事実を裏付けるものとして、企業内に残る電子記録が多用されておりました(電子メールや、社員の入退館記録等)。デジタルフォレンジックの必要性は、なにも摘発する側だけでなく、防御する側にもあるはずです。(ちなみに、ここでは「デジタルフォレンジック」の文言を、ハードディスクに残った痕跡から、システム利用の実態を解明する、という意味で用いております。)

審判決定に時間を要したために、こういった電子記録が散逸してしまって、原告側が裁判では提出できない、といった事態になることは考えられないのでしょうか。対審制の民事訴訟ルールが妥当する審判手続きであることから、処分対象者にとって「まったく予想できなかったような処分理由」が出ることはあまりないものとは思われますが、そもそも審判する側がこのように迅速に判断できない、ということになれば、適正手続き違反ということにはならないのでしょうか?一般に行政不服審査が遅々として進まないケースも散見されることはありますが、当該制度は上記課徴金府令に定めているとおり、関係当事者に対して迅速な審理への協力を求めているわけでありますから、当然、審理する側も、迅速性が要求されても当然のことであろうと思われるわけでして、このあたりは審判決定の中身と同様、多くの議論がなされるであろうと予想されます。

課徴金処分は、たしかに行政処分ではありますが、罰金(刑事処分)の確定裁判があった場合の按分に関する規定があり、また平成20年の改正金商法では(行政当局の裁量の余地はないものの)課徴金加算制度も設けられ、制裁的な意味合いも含むものに変容しつつあるようです。そうだとすれば、課徴金処分の迅速性の問題は、単にデュープロセス保障ということにかぎられず、憲法上の迅速な裁判を受ける権利の保障にもつながるように思われます。課徴金処分を真剣に争う処分対象者が出てきたときにこそ、この制度の本当の長所・短所が露呈することになるのかもしれません。(とりあえず、6月26日までに決定が出されることを期待しております)

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