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2010年7月14日 (水)

トヨタ自動車品質問題・外部評価報告書-私の読み方

(7月14日午前;追記あり)

昨年末から今年2月にかけて発生しましたトヨタ自動車さんの一連の品質問題(フロアマット、アクセルペダル、プリウスのブレーキ)は、日米で大きな社会問題となり、アメリカでは制裁金支払にまで発展したことは記憶に新しいところであります。このほど今回の一連の品質問題へのトヨタ社の対応を検証し、今後の改善策について提言するという外部第三者の評価報告書が7月12日にリリースされました。 (トヨタ自動車株式会社 品質保証体制の外部評価報告書)

海外に多くの現地従業員や製品ユーザーを持つ日本企業にとりましては、リスクマネジメントを考えるにあたり、非常に参考となる報告書だと思いますし、私自身もこういった分野におけるマニュアルをほとんど読んだことがなく、内容はとても新鮮であります。また、海外展開をされていない企業にとりましても、消費者庁による情報集約が企業による情報集約に先行する(可能性のある)時代となった今、自社製品の品質問題が発生した場合のクライシス・マネジメントの在り方を学ぶ上でも参考になろうかと思われます。

私の場合、やはりコンプライアンスの視点から、「品質問題を発生させないための対策」「なにが『品質問題』なのか、早期に感知する対策」「やむをえず品質問題を発生させてしまった後に、ステークホルダーへの被害を最小限に食い止める対策」に整理して、この報告書の内容を理解したいところであります。さて、ざっと一読しての感想は、

財団法人日本科学技術連盟さんの推薦された外部委員の方々が作成されたものですから、どうしても技術的な用語を頻繁に現れて、典型的な文科系人間である私にはさっぱり理解できない・・・・・・

と予期していたのでありますが、まったくそのようなことはなく、意外にも全編非常に読みやすいものとなっております(これは経営幹部向け、というものだからでしょうか?)こうやって読んでおりますと、未然予防、早期発見、危機管理のどの場面におきましても、品質管理のためにはコミュニケーション(意思伝達)の重要性が謳われているところが特徴的です。しかし国内企業ならまだしも、トヨタさんのように世界企業の場合「どうやってコミュニケーション能力の向上を図るのだろうか」と真剣に考えますと、思わず気が遠くなりそうであります。

個人的には12頁以降の「重要問題発生時の社内外コミュニケーション改善」あたりの記述が興味をそそられます。品質問題が大きく報じられた時点において、トヨタ社では誰が司令塔として対応するのかまったく決まっていなかった、とのこと。応急対応の指針も決まらなかったということのようであります。この改善策として何が「重要問題」なのか、①どのような基準で、②誰が、③どのタイミングで「重要問題」と認定するのか、そのあたりを明確にする必要がある、と提言されております。これはまったくそのとおりだと思いますし、いつも講演等でお話させていただいているとおり、「問題が発生しているのかどうか」ということは、どんなに高いお金をコンサルタントに払っても他社依存では判断が困難な点であります。むしろ一銭もお金をかけずに、社内のひたむきな訓練(運がよければ嗅覚のスルドイ社員が方の存在)で企業の社会的評価が低下するかしないかの生命線を死守するわけであります。

ただ、残念ながら「何が重要問題なのか」の判断基準が成り立つのは、そこに100%ピュアな社員の方々がいらっしゃって、その社員の認知した情報が、100%上層部(判断権者)に上がってくることが大前提であります。しかし、この大前提は絶対成り立ちません。(そりゃそうですよね。自分の評価が下がる情報を、会社のためと思って全て正直に話す社員の方はおられないですし、また報告を受けた上司にしたって、自分の部下のことで悪い評価は受けなくないですし。)いくら判断権者が積極的に自ら情報をとりにいっても、20%から30%程度の有益な情報が集約できる程度ではないでしょうか。ましてや、文化の違う海外のカスタマーや社員からの情報ということでは、「重要問題」と判断するための情報の集約は困難を極めるものと推測いたします。結局、この報告書のなかでも少し触れられておりますが、普段からの運用がモノを言うのではないかと思います。重要問題の発見作業には大きく分けてふたつあり、ひとつは「疑惑」の認定、そしてもうひとつは疑惑を「問題発生」と確証するための認定であります。効果的な運用はこれといってありませんが、やはり「ヒヤリ・ハット」作業の訓練と、経営トップと従業員の双方向における「コミュニケーション」作業を地道に繰り返し、出来栄えを検証すること、同業他社の不正事例のうち、自社内による早期発見事例を研究すること、それ以外に最良の方策はないように思われます。

ちなみに来週金曜日(7月23日)に「架空循環取引」に関するセミナーをさせていただきますが、そこでも「疑惑の発見」と「発見した疑惑の確証手続き」に分けて検討いたします。もちろん、どんなに不正検査のプロが支援しても、支援できるのは後者のほうでありまして、「疑惑の発見」は社内の人間にしかできないのであります。財務分析などの手法によって架空取引が発見できるかといいますと、それは多分に「後だしジャンケン」的なものでありまして、社内の取引事情に長年精通され、人事を含めた組織の論理を十分知悉された社員であるがゆえに、「なんかいつもと違うのでは?・・・・・疑惑」を発見できるのであります。

(追記)今朝の産経ビジネスアイの記事に米国運輸省が「トヨタ品質問題の大半は運転者の過誤による」と報告した、とのこと。(まだ今後の動向はわかりませんが)こういう記事を読みますと、企業にとって最もコワイのは「二次不祥事」だなぁとあらためて感じます。

7月 14, 2010 リスクマネジメント委員会 |

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