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2010年7月 3日 (土)

小糸工業社の内部統制報告書において「重要な欠陥」表明

金融商品取引法上の内部統制報告制度も、2年目の評価結果が出る時期となりました。企業会計審議会の議論などによりますと、今後は「重要な欠陥」なる用語を使用せず、ダイレクトに「内部統制は有効とはいえない」という報告内容だけでいいのでは?といった意見も出ているようでありますが、本日もTDNET上では多くの上場会社から「重要な欠陥表明のお知らせ」が出ております。そんななかで、6月25日に小糸工業さんが財務報告に係る内部統制報告書において重要な欠陥を表明する予定である旨のお知らせを出しておられます。

財務報告に係る内部統制の重要な欠陥に関するお知らせ

小糸工業さんといえば、以前ご紹介したとおり、航空機シートの設計・製造業務において、性能偽装(試験用データの改ざん等)により国交省から業務改善命令を受け、大きく報道されたところでありますが、これが全社的な統制環境の不備に該当するものとして、内部統制上の重要な欠陥に該当するものと評価されております。

不祥事関連で「重要な欠陥あり」と表明するのは、通常「不適切な会計処理」が発覚し、過年度決算訂正を余儀なくされる場面が想定されるのでありますが、金融庁関連ではない(ここでは国交省マター)不祥事発覚が、財務報告に係る内部統制の評価に影響を与える、という事例はちょっとめずらしいのではないでしょうか。たしか昨年は西松建設さんが「重要な欠陥あり」と評価されておりましたが、あの事例は政治献金に絡む裏金作りが問題とされ、経営者の一部によって例外的な金銭処理が社内で可能だったところに「財務報告の信頼性への重大な不備」があったと記憶しております。

今後他社でも同様の評価手法がとられる場面が出てくるのでしょうか?

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コメント

ごぶさたしています。
ちょっと教えていただきたいのですが、こうやって財務報告に係る内部統制の不備があったと報告されていることと、会社法上の内部統制基本システムの関係はどうなるのでしょうか。気になって当社の招集通知(http://www.tse.or.jp/disc/67470/140120100610032780.pdf)に添付されている監査役会の監査報告をチェックしてみたのですが、業務改善勧告に言及してはいますが、「内部統制システムに関する取締役会決議の内容は相当であると考えます。また、当該内部統制システムに関する取締役の職務の執行についても、指摘すべき事項は認められません」と記載されています。素人的な発想では、???と言わざるをえません。これは会社法がザル法なのでしょうか?何か一般人には知り得ない奥深い、理由(しかも妥当な理由)があるのでしょうか。法律解釈特有の形式的な話でなく、きちんと説明のつく合理的な理由はあるのでしょうか。こういう事例をみると、「あーあ、やっぱり日本の会社の…は...(ご想像にお任せします)」という意見が出てきそうです。ちなみに、当社の3月31日提出にかかるコーポレートガバナンス報告書(http://www.tse.or.jp/disc/67470/140120100325053972.pdf)の「内部統制システムに関する基本的な考え方及びその整備状況」の箇所の記述は、事業報告のそれと一致していません。こういう例も、おそらく稀有なのではないか、と思います。

投稿: 龍のお年ご | 2010年7月 3日 (土) 03時36分

山口様

4年以上貴殿のブログを毎日確認し、拝見しております。
小糸工業の一件は小生も関心を抱いていました。小糸製作所と併せて、調査報告と内部統制報告書の公表に日々注目しております。確かに改善命令は国土交通省から出されておりますが財務報告に係る内部統制としては、棚卸資産管理の観点から「製品完成仕様を満たしていないものを完成品として在庫計上し、出荷した」ことに問題があります。即ち、仕掛品として計上すべき物品を完成在庫品として水増し計上した虚偽報告に該当します。
しかも組織ぐるみの逸脱でありますから全社的な内部統制にも問題があり、ましてや、3月14日に調査報告を言明してから3ヶ月以上も放置されていることを考え合わせると小糸製作所の企業グループの内部統制は「重要な欠陥」と言っても良いと思われます。この点からしますと小糸製作所の報告には違和感を覚えます。

投稿: 剣持加津衛 | 2010年7月 3日 (土) 06時40分

辰のお年ごさん、こちらこそご無沙汰しております。
ご指摘のとおり、監査役は会社法上の内部統制の運用状況の相当性について監査報告を行う(最近は条文にはありませんが、このように解するのが一般的のようです)ものであり、内部統制監査人とは視点が異なるわけですが、おそらく経営者が「重要な欠陥」を表明しなければならない(もしくは内部統制監査人から適正意見をもらえない)・・ということは監査報告書を作成する時点ではほぼ判明しているわけですね。したがいまして、個人的意見でありますが、原則として取締役らの取組み状況等については何らかの意見を表明しなければならないと考えています。ただし異論もあるところです。
なお、このあたりは日本取締役協会のWGの研究対象になっておりまして、もうすぐ報告書が出ます。そのなかでも、本件について触れておりますので、とりまとめ案をお読みいただければ、と思います。

>剣持さん
はじめまして。コメントありがとうございます。
なるほど、そこまで読み込んでおりませんでした。以前の調査報告書を私も読み直してみたいと思います。正式な内部統制報告書が出た段階で、そのあたりの理由は記載されるのでしょうかね?
最近の近鉄さんやローソンさんの訂正内部統制報告書などと比較しても、ご指摘のようにグループ企業の内部統制上の問題についても検討されるべきかもしれません。ご指摘ありがとうございました。m(__)m

投稿: toshi | 2010年7月 4日 (日) 01時33分

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