会計サミット「IFRSへの対応と日本の会計戦略」
青山学院の大学院会計プロフェッション科よりお招きいただきまして、7月20日、会計大学院の講師を務めさせていただきました。「法律家そして監査役からみた内部統制報告制度」というテーマで90分ほどお話いたしましたが、ほとんど「これから会計士の道に進む方への檄!」みたいなノリになってしまいました(笑)時間を超過してしまって、次の授業に出る方にはご迷惑だったかも。。。
ということで、翌日(7月21日)も青学で開催されました「会計サミット~IFRSへの対応と日本の会計戦略」を聴講してまいりました。金融庁の三井さん、経産省の平塚さん、住商の鶯地さん、日経BPの磯山さん(司会は八田先生)によるパネル討論会は、最新事情なども知ることができ、またブログネタも入手できて非常に勉強になりました。とても私などが論評できるものではございませんので、詳細はまた会計雑誌等をご覧ください(笑)
ところで、このサミットの第Ⅰ部は公認会計士の田中靖浩氏による講演でした。いままで田中氏の本は何冊が読ませていただきましたが、講演「会計国際化のいま、落語に学ぶコミュニケーション」。これまでいろんな方の講演を聴講しましたが、いや、お世辞ではなく、本当におもしろかった!!
「会計ビックバン」「コンバージェンス」「アドプション」を、一般の方にわかりやすく解説するときには「女装趣味」「オ○マ」「性転換」に例える・・・といったお話も笑いましたが、田中氏が某外資系コンサルタント会社に勤務されていたころのユダヤ人上司、イギリス人上司、アメリカ人上司等のクセを紹介され「IFRSの原則主義と日本人」との関係を論じておられるのは、ウマイ!と思いました。イギリスの会計士は「自分がルール」という高いプライドを持っていて、自分がこう考えるのだから正当である、もし間違っているというのであれば、その証拠をきちんと示しなさい、という態度。たとえば公務員が別の解釈をしているのであれば、「公務員のぶんざいで私の会計処理がおかしいなど失礼な!」といった具合。だから原則主義が成り立つ土壌があるとのことだそうであります。こういったお話を聞くと、簡単に日本で原則主義が浸透するのかどうかは、疑わしいかもしれませんね。
一番驚いたのがペリーが浦賀に来たときの歴史を引用して、これから日本はIFRSにどう立ち向かうか、というお話。幕末の佐久間象山(?)の言葉を紹介され「開国、攘夷と極端な道に走れば日本は滅びる。ともかくペリーの話をよく聞いて、外国を知り、外国人のルールを十分に理解したうえでできないものはできない、とはっきりと日本の態度を決めよ」という対応がもっとも適しているのではないか、といった内容でありました。私がなぜ驚いたかと言えば、第Ⅱ部のシンポ討論会の最後のまとめで、金融庁の三井課長が締めくくった言葉とまったく同じだったからであります。「日本の会計戦略としては、まずはIFRSの常識を知ることです。日本の常識で良しあしを判断するのではなく、まずはIFRSの中身を理解して、その常識を理解したうえで、日本の態度を決める。IFRSで修正すべきと思われる提案ははっきりと示す。これが大事です」
いやいや、たいしたものであります。会計素人である私にもよく理解できました。「この会場まで来る時、きょうは何をしゃべろうかと考えていたのですが・・・」いや、たしかにふつうにお聴きしていると「与太話」のように聞こえてくるのでありますが、おそらく田中氏の講演内容は用意周到に練られたものだったと私は推測しております。田中氏の講演は、またどこかで続編をお聴きしてみたいものだと思いました。
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コメント
金融庁の三井課長が締めくくった言葉とまったく同じだったからであります。「日本の会計戦略としては、まずはIFRSの常識を知ることです。日本の常識で良しあしを判断するのではなく、まずはIFRSの中身を理解して、その常識を理解したうえで、日本の態度を決める。IFRSで修正すべきと思われる提案ははっきりと示す。これが大事です」
三井課長の発言は至極当然です。しかし、タイミングが遅いのではないでしょうか?1995年(IOSCOがコア・スタンダードを設定したとき)、1998年12月(コア・スタンダードが完成したとき)、2000年(EUが2005年に国際会計基準の適用方針を明らかにしたとき)、2005年(EUの上場会社が国際会計基準を適用したとき)、2007年(IFRSへのコンバージェンスを約束したとき)、2009年1月(2010年3月期からIFRSの任意適用を認めたとき)とIFRSを考えるタイミングはあったはずです。タイミングが遅すぎるという思いです。
投稿: AY | 2010年7月25日 (日) 22時10分
金融庁さんには、まず、元顧問・木村剛容疑者について、総括してもらいたいものです。官僚に対しての「無茶振り」であることは重々承知の上申し上げているのですがね。
彼は内部統制の件でも片棒を担いだ人間でした。
八田さんとの共著は今となってはブラックユーモアとしか云いようがありません。いや、笑い事ではないですよ。冗談でもない。というか、「冗談じゃない!」 民間を馬鹿にするのもいい加減にして貰いたいものです。
特定の個人に責めを負わせるつもりはありませんが、しかし我関せずと、IFRSを進めるのですな。
こういうのを、「いけしゃーしゃー」と云うのです。
どんなに立派な言葉であっても、虚しく聞こえてくるだけです…
投稿: 機野 | 2010年7月25日 (日) 23時53分
公認会計士の田中靖浩氏も、高田橋範充氏と同じく今から20年くらい前にTACの公認会計士講座の講師をしていたそうです。こちらも、人気講師だったようです(笑)。
投稿: 野武士屋 | 2010年7月26日 (月) 01時41分
AYさん、機野さん、コメントありがとうございます。
私はAYさんのように業界に詳しくないものですから、どうもそのあたりの経緯については存じ上げておりません。世の中の関心を捉えての発言だったのでしょうか?ただ会社法の世界では、連単分離なのか連結先行なのかがはっきりしないと身動きがとれない・・・という話は最近出ておりまして、法の世界でも国際財務報告基準の動きについては注視しているところでございます。
機野さんのコメントは、ちょっと・・・返答を控えさせていただきます(笑)立場上どうにもコメントしづらいなぁ
野武士屋さん、はじめまして。
高田橋さん、田中先生とも予備校の講師でいらっしゃったのですか。そういえばあの葉玉先生もカリスマ講師でしたね。著名な先生方には結構講師の経験者が多いのでしょうかね??
投稿: toshi | 2010年7月27日 (火) 01時59分