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2010年7月20日 (火)

個人株主の行動が企業法務の流れを変えるのかも・・・・・

旬刊商事法務の最新号(7月15日号)のニュース欄では、フタバ産業社の株主名簿謄写仮処分命令事件におきまして、株主の抗告が高裁で棄却されたことが掲載されております。有価証券報告書等の虚偽記載で金融庁から課徴金処分を受けたことをめぐり、一般株主が金融商品取引法上の損害賠償請求訴訟を提起するための原告募集を目的として名簿謄写仮処分命令を申し立てた事件でありますが、名古屋高裁は「株主名簿閲覧等請求の趣旨と金商法上の損害賠償請求の趣旨は異なる」としてこれを棄却したものであります。(現在特別抗告、許可抗告中とのこと)

そういえば、7月10日(土曜日)の朝日新聞(全国版)「BE-REPORT」欄で、企業買収等の世界における個人株主の活躍が特集されておりまして(「企業買収で個人株主ノー」)、かなり読み応えがありました。もちろん当ブログにも登場される三尊さんのことも採り上げられておりました。その特集でも、上記フタバ産業株主名簿謄写事件のことが紹介されておりまして、本事件の支援は、大阪の20人近い弁護士による「投資者訴訟研究会」の活動の一環であることを知りました。同じく大阪では、この6月に市民オンブズマンを構成する弁護士を中心とした「株主の権利弁護団」も結成されたそうであります。WEBを拝見いたしますと、最近世間を賑わせた企業に対する訴訟を中心に活動されているようであります。

いままでの常識的な考え方からしますと、個人株主が何らかの被害を受けるような企業法務関連事件については、散発的に「○○被害弁護団」というものが結成され、そこに多くの株主の方が参加を希望され、集団訴訟的に裁判を提起していく、というのが主流だったかと思いますが、最近は個人株主の方が個別に企業を相手に裁判を提起したり、朝日新聞で紹介されているような恒常的な弁護団組織が相談を受けて活動する、ということも増えてきたようであります。たしかに、ひとつひとつの事件の流れをみますと、決して個人株主側に良い結果が裁判で獲得できる、というわけでもないようです。しかし先日の年金受給権所得税課税に関する最高裁判決のように、「どうもおかしい」という一般人の感覚が最高裁を動かすこともあるわけですし、サンスターMBO事件における田原裁判官意見のように、受理されれば大いに意見を述べたい、という最高裁判事もいらっしゃるわけですから、個人株主の方々の訴訟(非訟)活動はけっこう貴重であります。(上記フタバ産業名簿閲覧事件につきましても、商事法務の記事で紹介されているとおり、たしかに株主側は2回続けて棄却決定を受けておりますが、地裁の理由と高裁の判断理由は異なっているわけでして、それなりに有意義かと)朝日の記事にもありますとおり、今後は企業法務の流れを変える可能性もあるかもしれませんね。まぁ、ホントは米国のように株主集団訴訟で和解630億円・・・みたいなことがあれば(毎日新聞ニュース)流れが一気に変わるのかもしれませんが(^^;

以前当ブログでもとりあげました旧日本興亜損保の株主有志の会でも、7月14日に損害賠償請求訴訟を提起されたことが公表されております。先のフタバ産業名簿謄写請求事件と同様、会社法的にはなかなかむずかしい解釈の壁が立ちはだかっているのかもしれませんが、審理の俎上にまで登ることができれば、(たとえ結果が満足できるものではないとしましても)「闘い方」や「裁判官の判断過程」という先例を残すことになり、大きな意義があるものと思います。(もちろん当事者の方々は、それでは満足できないことは十分に承知しておりますが。。。)そして問題はいかに情報を共有できるか・・・ということではないかと思いますし、そういった意味でも個人株主を支援する弁護団の恒常化といったことには、とても期待をしてしまうところであります。また、ネットの発達(ネット人口の増加)ということも、個人株主や支援する専門家の情報共有化にとっては有益なツールになるかもしれませんね。

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コメント

金商法の規定で会社に対して損害賠償を求めるとき、訴訟に参加しない株主の犠牲のもとで被害を受けた株主の被害を救済するわけですから、株主間でも利害が対立してしまうわけで、そのような株主の動きを快く思わない株主も多いでしょう。

金商法で会社に対して賠償を求めるような場合は、多くの被害者を募るために株主名簿閲覧を求めることが果たして正当な株主権の行使に当たるのか、確かに疑問であります。

姑息な戦術としては、代表訴訟のために株主名簿を請求して、実際には金商法で会社に賠償請求するための被害者を募るなんてやり方もあるんじゃないかと思いますが・・・

投稿: ターナー | 2010年7月20日 (火) 11時57分

ターナーさん、いつもコメントありがとうございます。

そのあたりは会社側も心得ておられたようで、謄写した株主名簿を交付するのと引き換えに、他の目的で使わない、との誓約書を交付せよ、といった和解案を呈示されていたようです。まぁ、最初からダマシというのもあるのかもしれませんが、代理人としてはムズカシイでしょうね(^^;

投稿: toshi | 2010年7月20日 (火) 13時00分

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