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2010年7月 2日 (金)

「IFRSと包括利益の考え方」(この本をご存じですか?)

Ifrskangae_3 6月30日、企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」が企業会計基準委員会から公表されておりますが、公開草案の段階では連単同時適用が提案されていたところ、結局連結先行適用ということになったようであります。

会計専門家でもない者がIFRSに関連する本の「書評」などと言えるものは書けないので、会計素人による読後感想文ではありますが、この本を皆様ご存じでしょうか?

「導入前に知っておくべきIFRSと包括利益の考え方」(高田橋範充 著 2010年6月 日本実業出版社)

巷にあふれているIFRS解説書について、どれが良い、悪いなどと評価できる力量もない私でありますが、書店で立ち読みしてすぐにおもしろさに感動し、すでに2回ほど通読しております。知人の会計士の先生方にも「これ、絶対にいいよ」などと(身分もわきまえず)推奨しております。

著者は中央大学のアカウンティングスクールの先生(国際会計研究科長 教授)でいらっしゃるそうですが、私はまったく存じ上げません。しかし、この本に感化されまして(笑)、私はすでに1990年代の国際会計基準に関する研究書と、ASOBATを解説している会計基準の生成過程に関する本を購入してしまいました。(^^;;イヤ、本当にこの本を読むとそういった会計基準生成の歴史とか、EU諸国における会社法指令等による国内法化の顛末などが知りたくなるのであります。いままで雑誌を含めて、何冊かのIFRS解説書を読みましたが、基礎がわかっていないためか、どれも挫折してしまったのでありますが、この本は専門家以外の者が読んでも非常におもしろい!IFRSの理屈の世界と妥協(政治的な産物)の世界とが、きちんと区別して書かれてありまして、今後2015年ころまで(おそらく)揺れ動くIFRSを理解するには、非常に有益ではないかと思います。あまり深く考えますと、最終的には「会計学とはなんぞや?」というところまで行き着いてしまうのでしょうかね?

ちょっと前までは「イファース」なる通称(IFRSの読み方です)が流行だったのが、最近なぜか「アイファース」と読む方が増えてきたのでは?といった疑問にも、この本は説得的な理由をもって回答され、私もナットクいたしました。またこの本を読むと「国際会計基準」ではなく「国際財務報告基準」という和訳しかありえない・・・という気になってまいります。また、今後IFRSがどのような変遷を遂げようとも、「公正なる会計慣行」「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」という(これまでの)法律概念における「公正性」や「会計慣行」の解釈には収まりきれない性質を有していることも理解できます。利益のリサイクリング・・・といった論点も、会計雑誌でなんとなく拾い読みしていて理解していなかったあたりもIFRSの原初的理解との関係で問題点が把握できました。「理屈ではこうなるんだけど」といったあたりにこだわりたい方にはおススメです。

また、このたびの包括利益の表示に関する会計基準との関係では、表示する計算書として1計算書方式と2計算書方式の選択が可能、とされておりますが、IFRSの原初的な理解からすれば、2計算書方式によって「当期純利益」の計算を優先すること自体が原則主義からは矛盾を生じており(だからこそコンバージェンス?日本のこれまでの主張が政治的に認められた?)、これからのIASB、FASBの政治的な綱引き次第では、また別の方向に向かう可能性も考えられるのではないか、と思われます。

「IFRSが全面適用されると、あなたの会社の決算書はこうなる」といった話題ばかりが先行しているのでありますが、そこで解説されているのは、これまでどおりの当期純利益優先主義を基本とした決算書の読み方を基本としているのではないでしょうか。しかし、その読み方自体の発想を転換する、というのも選択肢のひとつではないかと。IFRS、そしてフレームワークを理屈で考える、というのも、なかなか楽しいわけでして、いままで出されているIFRS解説書を理解するうえでも、この本はとても参考になろうかと思われます。(くどいようですが、あくまでも会計専門家ではない者による、読後感想文としてお読みいただければ幸いです。)         

7月 2, 2010 本のご紹介 |

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» 高田橋範充著 『IFRSと包括利益の考え方』 トラックバック ■CFOのための最新情報■
以前このブログでも紹介させて頂きました高田橋範充教授の『IFRSと包括利益の考え方』(日本実業出版社)が、山口利昭弁護士のブログでも紹介されていますね。私がブログで本書を紹介して以降、私の知人のカバンの中には本書が入っているという“奇妙な”現象が起きています....... [続きを読む]

受信: 2010年7月 5日 (月) 01時48分

コメント

IFRSをどう読むかで一言アドバイスを。
世間ではイファースとかアイファースなどと読んでいますね。本書を読んでいないので分かりませんが、多分IASBがそう発音するようにとの...理由でアイファースになった?と推測します。

永年外資でコントローラーをしていた経験から申しますと、外国に行ってIFRSを話題にする場合、アイエフアールエスと文字通りに発音することをお勧めします。外国では皆さん勝手に発音することが多いですから、誤解や繰り返しを避ける意味で。

投稿: ohigo | 2010年7月 3日 (土) 07時07分

ohigoさん、いつも有益なコメントありがとうございます。m(__)m

後半のお話は、この本にも書いてあります。普通に文字通り読む、というのも実は多いようですね。
前半の部分は・・・
せっかくですので、ここでは伏せておきます(笑)
新聞や雑誌の特集あたりを積極的に読もう、という気にさせてもらっただけでも、この本を読んで良かったと思っております。
また、いろいろと教えてください。

投稿: toshi | 2010年7月 4日 (日) 01時20分

土曜日、近所の大型書店に走り、一気に読んでしまいました。

目から鱗が落ちるような思いでございます。ありがとうございました。

「アイファース」という呼び方は、USAでのさる放送禁止表現を
連想させかねないので、「イファース」が主流になった…
…説を、或るところで教えられたのですが、デマだったのかな(笑)。

投稿: 機野 | 2010年7月 5日 (月) 01時24分

>「アイファース」という呼び方は、USAでのさる放送禁止表現を
連想させかねないので、「イファース」が主流になった…

そういえば、そのような話がありましたね(^^;私も聞いたことがあります。

機野さんのコメントなので、ずいぶんと辛口な論評かと思いましたが(失礼しました)、おそらく日本実業出版のご担当者の方が、これを読まれたら涙モノかも(笑)。

投稿: toshi | 2010年7月 5日 (月) 02時14分

アイティメディアの垣内と申します。高田橋先生にはIFRSフォーラムでも6回連載をいただいております。ご参考下さい。

http://www.atmarkit.co.jp/im/fa/serial/reporting/06/01.html

投稿: 垣内郁栄 | 2010年7月 5日 (月) 18時52分

垣内さん

はじめまして。
情報どうもありがとうございました。

また、恥ずかしながら、そちらのフォーラムのことも初めて知りましたです。(ずいぶんと立派なWEBサイトがあったのですね。これからはそちらで勉強させていただきますm(__)m)

投稿: toshi | 2010年7月 7日 (水) 02時06分

著者の高田橋範充氏は、今から20年くらい前にTACの公認会計士講座の講師をしていたそうです。公認会計士旧2次試験に合格し、大学院生をしていたの頃かもしれません。人気講師だったようですが、講義はよく脱線して雑談が多かったとも言われています・・・。

投稿: 野武士屋 | 2010年7月26日 (月) 01時39分

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