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2010年8月25日 (水)

シニアコミュニケーションの上場廃止事例こそきちんと検証すべきである

東京証券取引所のHPにて、シニアコミュニケーション(マザーズ)の上場廃止決定に関するお知らせが出ており、廃止理由についてもかなり詳細に記載されております。以前ご紹介した当社の不適切な会計処理に関する社外調査委員会報告書でありますが、予想どおり多方面で話題となりました。私は条件反射的に「秀逸」と書きましたが、ある方面では(この報告書により)かなり「困惑」されたように聞き及んでおります。

本件では監査法人から架空売上の計上ならびに不良債権の隠ぺい工作の事実を追及されないための手法が一番の話題となりましたが、なぜここまでして上場しなければならなかったのか、なぜ経営陣は粉飾を重ねていったのか、なぜ有能な社員達が経営陣の粉飾に加担するに至ったのか、なぜ主幹事証券会社に変更があったのか、監査役、監査法人はいったい何をしていたのか、そのあたりの諸事情を検証することが、新規上場を目指す企業への監査ならびに審査のあり方を考える上では有益ではないかと思われます。正直申し上げて、私の場合は「後だしジャンケン」にすぎませんが、エフ・オー・アイ社同様、当社についても平成18年の新規上場時から「ここはおかしいぞ」とはっきり「粉飾あり」と指摘しておられたブロガーもいらっしゃるくらいですから、なにゆえ売掛金残高を「異常な兆候」とみることができなかったのか、(関係者の方々を非難するのではなく)監査役監査を含めた「監査の実態」「審査の実態」から合理的に説明できるかどうか検証することが極めて重要ではないでしょうか。このあたりは残念ながら、詳細な上記調査報告書によっても十分に解明はされていないようであります。

あまりに厳しい規制を一律にかけることはせず、しかしながら投資家を欺く手法を用いて上場を図ろうとする企業をふるい分ける監査(監視)、というものは理想ではありますが相当抽象的な議論でありまして、一朝一夕には実現困難であります。ところで私が訴訟代理人を務めましたアイ・エックス・アイの事件と本件のシニアの事件とは、多くの点で酷似しておりまして、これらの事件を比較してみますと、新興企業への監査体制(従業員不正ではなく、会社ぐるみの不正への監査という意味ですが)のモデル例がみえてくるようにも思われます。このあたりを手掛かりとして、もう少し具体的な議論ができないものかと思案中であります。

この点はまた別の機会に詳細に検討してみたいです。シニアの事例は「あ~ぁ、またひとつ逝っちゃった」で済ますにはたいへん惜しい。。。

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コメント

「やっぱり」というのが,上場廃止の速報を見たときの正直な感想でしたが,株主総会の招集通知や有価証券報告書,内部統制報告書を読ませていただいても,3人いらっしゃったはずの社外監査役さんの影が薄いというか,本件への関わりがよくわからないという気がします。
 それととても気になっているのが,監督官庁の立入調査があったとされる3月16日以降,外部調査委員会の設置がリリースされた4月13日までの間に,株価が出来高を伴って上昇している点です。とくに立入調査直後は,それまで2桁だった出来高が2千株に達する日もあったみたいですので,このあたりの値動きなんかも,上場廃止決定の裏にあるのではないかと勘繰ってしまうところです。

投稿: Tenpoint | 2010年8月25日 (水) 11時11分

日本でも、上場時の登録届出書(IPO)や上場企業の証券発行時の登録届出書の正確性に関する弁護士等のデューディリジェンスが必要になっているのではないでしょうか。
http://www.google.com/search?num=20&hl=en&tbo=1&q=due+diligence+meeting+security+issue+&btnG=Search&aq=f&aqi=&aql=&oq=&gs_rfai=

投稿: AY | 2010年8月26日 (木) 09時13分

tenpointさん、AYさん、コメントありがとうございます。
なるほど、スルドイご意見ですね。研究テーマの参考にさせていただきます。シニアの件は、ほかにもまだいろいろと問題点がありそうです。

引受審査の段階で弁護士によるDDは実際に行われていますね。こういった業務にたずさわっておられる先生から聞きましたが、けっこう弁護士の意見によって上場が延びるケースもあるとか。

投稿: toshi | 2010年8月28日 (土) 01時32分

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