« いよいよ法制審会社法改正論議にIFRS登場か? | トップページ | パロマ工業事件・刑事判決の分析を「法と経済のジャーナル」(AJ)に寄稿しました。 »

2010年8月 6日 (金)

企業法務-夏のオススメ新刊書3冊ご紹介

Kabukahyouka 暑中お見舞い申し上げます。最近は東京と大阪を行ったり来たりの日々ですが、今年は東京も異様に暑いように感じます。どうかお体をご自愛くださいませ。m(__)m

さて、サイドバーにも掲示しております私の新刊書でありますが本日(8月5日)の日経朝刊1面下で広告が掲載されました。(これをみて多くの書店から発注があれば良いのですが。。。)先週少しだけ本屋巡りをしておりましたところ、ほぼ同時期に平積みになっておりました新刊書2冊を発見いたしましたので、ご紹介いたします。どちらも「おお!」と思わず唸って衝動買いしてしまったものであります。ちょっと悔しいですが、おもしろいです(笑)

ジュンク堂天満橋店では「会社法」関連の棚で、私の本の隣に平積みされていたのが「企業法務からみた株式評価とM&A手続~株式買取請求を中心に~」(田辺総合法律事務所 大和証券企業提携部 編著 清文社 2,600円税別) 先日のエントリーで、ターナーさんとKazuさんの議論についていけなかったので、思わず衝動買い(笑)

皆様ご承知のとおり、いま会社法・金商法関連の話題でもっともホットなのが株式買取請求事件、価格決定申立事件ネタであります。最新の旬刊商事法務(7月25日号)の「平成21年度会社法関係重要判例の分析(上)」をご覧いただいても、そのほとんどが買取価格の「公正な価格」とはなんぞや?が争われたものばかりであります。商事法務さんのほうにも、企業法務の専門家の方々が、多くの判例解説等を出稿されておられますが、専門家向けであって、少々内容がハイレベルです。

ところで、本書は企業法務に携わるビジネスマンや少数株主となりうる個人投資家にも配慮されておりまして、ご専門家の方以外でも読みやすい内容に仕上がっております。おそらくこの本を執筆された弁護士の方々が、実際の価格決定申立事件の代理人として携わっておられるからではないかと思います。そういった立場の方々なので、豊富な判例紹介・判例解説もなされております。どうも公正な価格の決定にあたって、「適正手続とは何ぞや」のほうばかりに目が向きがちになりますが、株価算定とデューデリに関する解説もかなり詳細でありまして、企業価値判断にも目が向けられております。いままで株式買取請求権を中心として事業再編手続が解説されたものは見当たりませんので、平成17年改正会社法制定後の株式関係の重要論点を概観するには貴重な一冊ではないかと思います。私がぜひこの本を読んでいただきたいのは、これから事業再編をお考えの上場会社の取締役ならびに監査役の方々であります。事業再編の巧拙はやはりきっちりと時間をかけて取り組む姿勢によって決まるのでは・・・・ということが理解できます。いわば「M&Aのコンプライアンス」の重要性が認識できるのでは・・・と。

ただ、心配な点をひとつ申し上げるなら、ホットな判例理論やTOB手続を扱っておられる本ですので、実務の流れが早く、現在は最先端の情報が詰まっているのですが、時の経過とともに扱っている情報が古くなってしまうのではないか、ということであります。(ただし売れ筋の定番本となりますと、第2版、第3版と、ぎゃくに儲けの出る本になるかもしれませんが・・・(^^; )

Soredemokigyou そしてもう一冊は、ジュンク堂千日前店で私の本の横に平積みされておりました「それでも企業不祥事が起こる理由」(國廣正著 日本経済新聞出版社 1,600円税別)

こちらは「コンプライアンス関連」の棚でして、会社法とはずいぶんと離れたところで陳列されていました。国広先生の本は、私の本の執筆にも参考にさせていただいておりますし、すべて読んでおりますので、もちろん購入。

法令違反とコンプライアンスとの違いを感じさせる例はいろいろとございますが、事件の渦中でこれを知る機会というものはなかなかございません。「それでも不祥事が起こる」のは、「法令違反とコンプライアンス」の違いを理屈では理解していても、不祥事の原因究明や事実解明、再発防止策検討にあたって、本当につきつめて(自らの頭で考えて)いないからであろうと思われます。つきつめて考えますと、本当に再発を防止するためには、いままで誰も触れたがらないような「組織のタブー」に触れなければならないこともあるかもしれません。そういったことをしみじみと考えらせられる一冊であります。

この本のなかで国広先生は、消費者目線によるコンプライアンスの重要性を改めて力説しておられ、さすが日本を代表するコンプライアンスのご専門家、ご自身の経験された事件などをもとに、具体例を通じてわかりやすく解説しておられます。(コンプライアンス関連判例として話題の「パロマ工業元社長刑事判決」についても鋭い視点で解説されておられます。)そして最も私の興味がそそられましたのが、国広先生の第三者委員会に関する考え方が最終章においてかなり詳細に表現されているところであります。先日日弁連から公表されました「第三者委員会ガイドライン」は、国広先生が中心になってとりまとめられたものでありまして、本日(8月5日)の朝日AJにおける証券取引等監視委員会の佐渡委員長インタビューでも、この日弁連ガイドラインが高く評価されているところであります。全体として、今回の本は国広先生の個人的な見解がかなり前面に出た一冊に仕上がっており、弁護士だけでなく、コンプライアンス関連のお仕事をされている専門家の方にもおススメの一冊であります。

おススメの3冊目はといいますと・・・・・ はい、サイドバーでご紹介している拙著(笑)。こちらもどうかよろしくお願いいたします。。。

|

« いよいよ法制審会社法改正論議にIFRS登場か? | トップページ | パロマ工業事件・刑事判決の分析を「法と経済のジャーナル」(AJ)に寄稿しました。 »

コメント

公認会計士協会から経営研究調査会研究報告41号「事例に見る企業価値評価上の論点」が出てますね。こちらも参考にして下さい。

投稿: 迷える会計士 | 2010年8月 9日 (月) 20時13分

おお!これはスゴイ研究報告が出ましたね。(情報どうもありがとうございます)
まだ全然読んでおりませんが、是非一読したいです。平成19年に出た企業価値算定テキスト(市販されているものですね)と一体でまた市販されるようなことが書いてありますので、これも合刷されたものをまた入手しようかと思います。

投稿: toshi | 2010年8月10日 (火) 02時14分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 企業法務-夏のオススメ新刊書3冊ご紹介:

« いよいよ法制審会社法改正論議にIFRS登場か? | トップページ | パロマ工業事件・刑事判決の分析を「法と経済のジャーナル」(AJ)に寄稿しました。 »