« 社外取締役制度の強化について(大証金商法研究会) | トップページ | 改正不正競争防止法と内部告発の「正当な目的」 »

2010年9月27日 (月)

ISO26000(社会的責任規格)と日弁連CSRガイドライン2009

9月25日の日経新聞で第一生命さんのSRIファンド設立に関する記事が掲載されておりましたが、国内企業を選別対象とするSRIの発展余地はまだまだ大きいのでしょうか。

Isonichiben 日弁連のガイドラインといいますと、最近は7月15日に公表されました「企業不祥事発生時における第三者委員会ガイドライン」が話題となっておりますが、実は今年3月に「企業の社会的責任ガイドライン2009年度版」も公表されております。(こちらも関連委員会関係者ということで、私も少しだけ意見を述べさせていただきました)企業と社会の共存を目指して2007年版が策定されたのでありますが、この改訂版が2009年版ということであります。最近企業から公表されるCSR報告書のガイドラインとして活用されるよう配慮されているものでありますが、上表のようにISO26000(組織の社会的責任国際規格)で示された7つの中核課題と比較しますと、かなり近似したものでありますので、この11月に発効するISO26000も意識した内容になっているものと思われます。(なお、ISO26000ではこの7つの課題はすべて網羅しなければならない、とされているのですね)

欧州諸国のCSRの考え方に関する本を何冊が読みましたが、日本語で比較しても少し誤解を与えそうなところがあるように思いました。コンプライアンスという言葉を、そのまま法令遵守と訳してしまうと、ずいぶんとISOと異なるニュアンスになるのではないか、法令遵守はあまりにも「企業にとっては当然のこと」であり、そもそもCSRの概念には含まれないわけでして、もう少し幅のある概念として考えておいたほうがよいのではないか、と思います。また、人権や社会開発・地域貢献というあたりも、単に人権尊重、というだけでなく、ISOはもっと積極的な社会への働きかけや双方向のコミュニケーション活動まで含んだ概念ではないか、と感じました。とくに「社会貢献」というあたりの概念も、日本人が考えているものと欧州諸国の概念とはだいぶ異なっているように思います。あと、ISO26000が盛り上がるための条件としては、有力なNGO、NPO団体の存在が大きいのではないか・・・といった印象を持ちますが、果たして日本にはそのような団体が存在するのか?・・・このあたりに詳しい方のご意見なども拝聴してみたいものであります。

まだまだISO26000については勉強を始めたばかりで、その制定までの歴史を含めて理解不足ではあり、今後も研鑽をつみたいと思っております。この典型的なソフトローが日本の企業社会にどのような影響を及ぼすのか、たいへん興味深いところです。国家レベルでISO誓約企業とそうでない企業を差別しない、民間の貿易レベルでビジネスの妨げになるものではない、とされていますが、やはり(現実の社会では)取引条件のひとつにはなってくるでしょうし、冒頭のようなSRIの対象企業の選別においても考慮される要素のひとつになってくるのではないでしょうか。また「認証のないISO規格」とは言いつつも、すでに認証団体の活動は始まっているそうですし、今後CSR報告書の「第三者意見書」の性格も変わってくるそうであります。なお、日弁連CSRガイドラインでありますが、「雇用・労働」「人権」あたりは、かなり詳細な指針が盛り込まれており、イメージを持つだけでも一般の企業の方々には有益ではないかと思います。とりわけCSR調達に代表されるように、社会的責任規格は中小企業にとりましても、今後多くの面で影響が及ぶのでしょうね。

|

« 社外取締役制度の強化について(大証金商法研究会) | トップページ | 改正不正競争防止法と内部告発の「正当な目的」 »

コメント

いつも楽しく拝見しております。
法律関係の話はまったく門外漢なので、ゼミの生徒であるという意識で勉強させていただいています。

さて、一応NPOや社会起業家に少し関わっているので、企業の社会的責任と言う意味でコメントをさせていただきます。
文中に「有力なNGO、NPO団体の存在」という言葉が出てきていますが、このNPO・NGOについては日本で有力なところはあまりありません。海外団体の日本支部ならばあり得ますが、日本独自の団体はかなり少ないと思っていただいたほうがいいと思います。ある寄付を仲介する団体いわく、日本で信用が置けるNPOは全体の5%満たないと言っていますし、海外でNPO活動などを経験してきた人ほど、日本にはNPO・NGOが活動するための下地・環境がないと言います。

また、市民セクターの中には企業=悪、資本家・経営者=悪という古い考え方を持っている人も少なくありません。ある面、企業のほうがNPO・NGOよりも社会的責任を果たしていると日本では言えるかも知れません。

投稿: 松本孝行 | 2010年9月27日 (月) 05時27分

ISO26000については、自身勉強中なのですが、平時の「企業の社会的責任(CSR)ガイドライン」、有事の「企業不祥事発生時における第三者委員会ガイドライン」と、企業等がCSR経営を自己規律(内部統制)で行う際の弁護士向け指針は一応揃ったのかな、という策定担当者の1人としての雑感です。もちろん、内容等は常に見直し、改善していかなければなりませんが。
今後とも、ご意見に限らずどうぞよろしくお願いいたします。

投稿: 甘辛せんいち | 2010年9月28日 (火) 12時58分

松本さん、甘辛せんいち先生、コメントありがとうございます。

いつもご覧いただき、ありがとうございました。こちらこそ貴重な情報をどうもありがとうございました。CSRは、これまでの歴史に関する知識はどうしても必要ですね。今後の参考にさせていただきます>松本さん

甘辛先生
なるほど、平時と有事の・・・ですか。そういった構成になっているのですね。
私もISO26000は「認証がない」というところでソフトローとしての実態に関心を寄せています。
先生はCSRに関する委員会に所属されておられますので、このあたりはまたぜひ弁護士会の研修などで講師をお願いできれば、と。
弁護士向け指針を一般社会にどのように活かすのか・・・というあたりこそ、弁護士会のSRでは?

投稿: toshi | 2010年9月29日 (水) 15時32分

おっしゃるとおり、一般社会で活かされない内向きのモノではしかたないと思います。この点お気づきのように、CSRガイドラインの方は内容を含め”まだまだ‥”でありましょう。
特にこの分野を業務領域とする弁護士には、本業を通じたBSRであると日々自戒しております。

投稿: 甘辛せんいち | 2010年9月30日 (木) 22時54分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ISO26000(社会的責任規格)と日弁連CSRガイドライン2009:

« 社外取締役制度の強化について(大証金商法研究会) | トップページ | 改正不正競争防止法と内部告発の「正当な目的」 »