ベンチャーにとって大切な本とブログ
もはや街場の話題になっている本ですから、当ブログでご紹介するまでもないとは思いますが、磯崎さんの処女作「起業のファイナンス-ベンチャーにとって一番大切なこと-」(磯崎哲也著 日本実業出版社 2200円)を読ませていただきました。決してレンジに入れて、本をバラして、スキャンして電子書籍にしたわけではございません。きちんと一冊の本としての体裁を整えたまま通読いたしました。
最近は時々、東京でお会いすることがありますが、お食事をご一緒したときの磯崎さんのエピソードが印象的。たしか私も磯崎さんも、同時期に東京杉並の小学校に通っていた・・・といった話で盛り上がっていたとき、
「小学校のとき、『徒競争』ってありましたよね?ボク、一回ビリになったことがあるんですよ。『ヨ~イ!』の合図で下を向いたときに、地面にめずらしい虫がいたんです。その虫に夢中になっちゃって、ピストルが鳴るの気付かなかったんです」(笑)
このエピソードは磯崎さんのブログを愛読する者として、なにかすべてを象徴しているように思います。誰かの読み方を真似して、みんながライブドアの決算書をワイワイ議論しているときに、「ちょっとまてよ、こういった読み方もあるんじゃないの?」と、今まで誰も気づかなかったような核心を突いた推論を展開される。そういった人だからこそ、「ベンチャーにとって一番大切なこと」をわかりやすく解説できたりするのではないでしょうか。
たとえば「ストックオプション活用」に関するお話。IPOに携わる法律家であれば、プルータスさんあたりが書かれた「新株予約権、種類株式活用の実務」を定番として読むことになるのですが、「イケてる社長さん」でも、これを理解するのはかなりしんどいのではないかと思います。しかし、この「起業の・・・」では、ストックオプションが「社員や会社関係者に幸せになってもらうため、夢を共有してもらうため、ビンボー会社が一流企業に対抗するため」の武器であることを、法律の素人である経営者(予備軍)の方にわかりやすく解説してくれています。ホント、ストックオプションにとって一番大切なことは、人の気持ちを考えることや、将来予想される人間ドラマを連想しながら設計することであることが理解できますし、そういったことがが法律や会計スキルを理解するうえでも重要なんだなぁと感じました。会社法のファイナンスがなんとなく苦手・・・というロースクールの皆様にも、私が申し上げるのも何なんですが、法規制の趣旨や契約条項の意味まで理解できるようになる(かもしれない)、かなり「イケてる本」ですので、どうかご一読いただけたら・・・と。
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そして次はベンチャーをお考えの皆様、そして関係者の皆様にとって、非常に有益なブログをご紹介いたします。こちらも既に話題になっておりますので、ご存知の方も多いかもしれませんが
先の磯崎さんの著書にも登場する(ベンチャー支援で有名な)AZX総合法律事務所ご出身の弁護士で、今年1月、ご尊父が経営されておられる大阪の名門事務所に戻ってこられた方の「期待の」法務ブログであります。東京の法律事務所で7年間実務に従事されてこられたので、ビジネスローとしての感覚は抜群でして、我々IPO企業統治システム研究会の期待の星であります。9月1日にブログを開設されたのですが、「ひょっとして三日坊主かも」と思い、しばし静観させていただいておりましたが、日を追うごとにブロガーとしての素材が垣間見えてくるようになり、このところは本家(?)を凌駕する勢いとなりましたので(笑)、ここにご紹介する次第であります。
内容は私がどうのこうのと申し上げるよりも、ご一読いただければ、そのレベル感もおわかりになるかと。。。このままブログの更新が続くのであれば、おそらく「ベンチャーにとってとても大切なブログ」になるのではないか、とひそかに期待をしております。(昨日の私のセミナーにお金を払ってお越しいただいたから義理でご紹介した・・・というわけでは決してございませんよ(^^;;>森先生 笑)
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コメント
山口先生
ご紹介ありがとうございます。また、いつもブログや研究会を通じて、勉強させていただき、ありがとうございます。
本日になって、急にアクセスが大幅に増えましたので、何事かと思いました。山口先生の影響力の大きさを改めて実感した次第です。まだまだ小さな存在ではありますが、磯崎先生のおっしゃるとおり、ベンチャー企業を育てる生態系の一部として、多くの素晴らしいビジネスが世に羽ばたくことをお手伝いさせていただければと思っております。
これからも宜しくお願いいたします。
投稿: 森 理俊 | 2010年10月 8日 (金) 11時51分
これは過分なご評価をありがとうございます。<(_ _)>
ちなみに文中に登場する私が幼稚園の徒競走の時に地面で見つけたというのは「珍しい虫」ではなく「クイズの書いてあるガムの包み紙」です(笑)
(しょーもないのはどちらも同じですが(笑))
どうもありがとうございました。
ではまた。
投稿: Tetsuya Isozaki | 2010年10月 8日 (金) 17時49分
森先生
弁護士の広告規制問題のなかで「得意分野」とか「専門分野」を表示することの是非が議論されますが、一番の広告はご自身の興味をわかりやすく解説したり、世の中の出来事に自分の視点から意見を述べることが一番の広告だと思います。(もちろん、だからこそ批判も中傷もされるわけですが)ぜひ生態系の一部として、社会的責任を尽くしていただきたいと思っております。期待しています。
磯崎先生
このたびはご出版、おめでとうございます <(_ _)>
うろおぼえのエピソードでスイマセン(笑)
「ホームランを狙って打てる」人はなかなかいませんよ(笑)
これからは、付箋を貼って、参考書として使わせていただきます。
私は決して電子書籍にはいたしません(笑)
投稿: toshi | 2010年10月 9日 (土) 11時20分